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インタビュー

生活機能年齢からみた高齢者医療の難しさとその意義

生活機能年齢からみた高齢者医療の難しさとその意義
岩本 俊彦 先生

国際医療福祉大学 医学部 総合診療医学 教授 、国際医療福祉大学塩谷病院 高齢者総合診療科 部長

岩本 俊彦 先生

高齢者医療において、かつては前期高齢者・後期高齢者といった実年齢による区別が行われていました。しかし今は高齢者を実年齢でみるのではなく、生活機能年齢というものでみていくということが重要になっています。年齢を重ねるほど一人ひとりの状態には大きな開きが生じるため、それを適切に評価する指標や、個人に見合った治療や生活指導が求められています。国際医療福祉大学塩谷病院 高齢者総合診療科部長の岩本俊彦先生にお話をうかがいました。

 

生活機能年齢という評価軸でみると、「健康(頑強)」と呼ばれるような元気そのものの方と、その対極には「要介護」、つまり寝たきりで介護の手を借りないと生活できないような身体機能障害の方がおられます。そしてその中間にある方をこれまでは「虚弱」と呼んでいました。今はこれをFrail(フレイル)と表現しています。

フレイルの位置付け

(図:国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 病院レター49号「虚弱(フレイル)の評価を診療の中に」より引用)

この「フレイル(虚弱)」の状態にある方たちを早く見つけて、要介護状態にならないよう予防することがすなわち「介護予防」であり、できれば健康(頑強)と呼べる高齢者に戻すということが、これからの高齢者医療の目標であると考えています。

 

米国のLinda P. Friedはフレイル(虚弱)の度合いをみる指標として、次の5つの項目を挙げ、このうち1つも当てはまらなければ「健康(頑強)」とし、2つまで当てはまる場合は「前虚弱(プレ・フレイル)」、3つ当てはまる方を「虚弱(フレイル)」としました。

  1. 力が弱くなること
  2. 倦怠感があり、日常動作がおっくうになること
  3. 活動性が低下すること
  4. 歩くのが遅くなること
  5. 体重が減少すること

現在、学会などでもこの5項目がいわばgold standard(信頼できる項目)とされていますが、この5つにこだわらず、臨床面でどのような生活を送っておられるのかなどをさまざまな角度から見ていくことが重要です。

 

たとえば、同居のご家族や介護者の方から普段の生活の様子を詳しくうかがっていくと、「不活発病」と呼ばれる方がいらっしゃることがわかります。1日何もすることがなく、こたつでTVを見ているだけといった生活を送っている方をいいます。「不活発病」の方は近い将来寝たきりになってしまう危険性があるため、「不活発病」の方を見つけ出し、寝たきりになってしまうのを予防することはきわめて重要です。

しかし、このようなスタンスで細かいところまでお話をうかがいながら診療をしていると、どうしても時間がかかってしまいます。その患者さんに見合った指導をしていかなければならないという煩雑さはありますが、それをていねいに行なっていかなければ患者さんを救うことはできないという確信もあります。その点が高齢者医療のある種の難しさであるといえるでしょう。

また一方で、どうしても治療や指導を理解することが難しい患者さんもおられますので、やはりご家族の協力を必要とする部分もあります。しかし、中にはあまり協力的ではないご家族や介護者の方もいて、「薬で治せないのですか」などとおっしゃる方もいますし、実際に薬に頼らざるを得ないような患者もいらっしゃいますので、これも非常に難しい問題です。しかし、われわれは常に「あきらめさせない、あきらめない」を高齢者医療のモットーとしています。

 

本来、人が生まれて成長していく過程は遺伝子でコントロールされていて、誰でも同じような経過をたどって大人になっていきます。ところが、30歳を超えたあたりから、その人の生活様式・生活習慣によって個人差が生じてきます。楽をして過ごしてきた方は体力がなくなっていますし、毎日何か運動をしている方は体力が維持されています。しかもその差は高齢になるほど大きく開いていきます。そのため、冒頭で述べたように実年齢では区分できない、むしろ生活機能がどの程度維持されているかによって分けざるを得ない部分が出てくるのです。

一人ひとりの生活習慣の偏りによって「生活習慣病」が徐々に進行し、最終的には発病するという経過をたどります。その方が抱えている病気によって、障害される臓器もあればそうでないところもあります。したがって、一人ひとり個体差があるのは当然のことであり、その個体差がある中で、一人ひとりに見合った治療や生活指導をしていくという考え方が老年医学の根底にあります。

 

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