インタビュー

高齢者総合的機能評価(CGA)とDr. SUPERMAN

高齢者総合的機能評価(CGA)とDr. SUPERMAN
岩本 俊彦 先生

国際医療福祉大学 医学部 総合診療医学 教授 、国際医療福祉大学塩谷病院 高齢者総合診療科 部長

岩本 俊彦 先生

この記事の最終更新は2016年03月06日です。

高齢者になると身の回りのことがうまくできなくなり、不自由を余儀なくされることが多々あります。障害の状態とその度合いを評価するために高齢者総合的機能評価(CGA: comprehensive geriatric assessment)と呼ばれる指標があります。高齢者医療ではこのCGAを使って、病気、障害の有無、その方の生活様式などをすべてチェックしています。国際医療福祉大学塩谷病院 高齢者総合診療科部長の岩本俊彦先生は、このCGAの内容を覚えやすくした簡易版として「Dr. SUPERMAN」という評価法を考案されました。それぞれの評価項目とその内容について岩本先生にお話をうかがいました。

  1. 日常生活自立度(ADL)・手段的日常生活活動度(IADL)
  2. 認知機能・気分・情緒・幸福度
  3. 運動機能
  4. 排尿機能
  5. コミュニケーション能力
  6. 社会的環境(家庭環境やケアの体制)
Dr.SUPERMANの評価項目

歳を取るとどうしても視力が落ちたり耳が遠くなるため、不自由を感じる方がいます。また、ご家族もそれを理解できないため、耳が遠くなった方に対して、物分りが悪い、認知症ではないかと決めつけてしまうことがあります。視覚については新聞の字が読めるかどうか、聴覚に関しては普通の会話で理解できるような聴力があるかどうか、大きな声で話す必要があるかなどを評価します。

患者さんと話をするときには、どこまで話を理解できているかを確認しながら進めていきます。こちらの言うことを何度も聞き直したり、質問に対する返事がかみ合わないということがあると、その後で何か指導をするときに内容が十分伝わらない可能性があります。

診察の際に「お薬手帳」を見せていただいたり、持っている薬を全部持って来ていただいて、患者さんがどんな薬剤を処方されているかを確認します。そうすることで薬の内容もわかりますし、きちんと服用しておられるかどうかも確認できます。また、同居のご家族など生活をサポートする方がいるのかどうか、誰が介護を担っているのか、あるいは介護者と本人の関係性(親身になってくれる、あるいは疎まれているなど)などを確認し、ケアの状況を把握することも大切です。

75 歳以上の高齢者に多くみられる老年症候群の中核症状として、精神(認知症・うつなど)、運動(移動能力・嚥下障害など)、排尿(夜間頻尿など)の障害があります。最初のMについては、あらかじめ用意した簡単な設問に対する正答・誤答の数によって認知機能の程度を評価し、元気があるかどうか、日中の行動、外出の頻度などから活動性やうつの兆候をみていきます。

2つ目のMは運動機能です。足腰がどの程度弱っているか(下肢機能)を立ち上がる・歩くなどの動作で評価し、両手を挙げる・握手をするなどの動作で上肢機能を評価します。最近ではロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)という言葉でも注目されています。また、運動機能でもうひとつ重要なのは嚥下(えんげ・ものを飲み込むこと)運動です。食事中にむせることがあるかどうか、心配な方は唾液を飲み込むことで簡単に評価することもできます。

3つ目のMは今までの内科ではあまり取り上げられてこなかった「失禁」です。Micturitionは排尿を意味しています。排尿の障害を抱える高齢者は多く、QOL(生活の質)に大きく影響する問題ですが、言いにくいことなのでなかなか表に出てきません。そのため、質問の際には「トイレに間に合わないことはありますか」など、答える方の心理的な抵抗感にできるだけ配慮し、過活動膀胱による頻尿のチェックも合わせて行います。

ADLは日常生活動作の略です。その中にはいくつか項目がありますが、たとえば「朝起きてトイレに行くことができますか」など、前述の排尿にかかわる項目もありますし、何かの動作をするときに介助が必要かどうかといった評価も入ってきます。

NはNutrition(栄養)を意味します。高齢者は低栄養(Protein energy malnutrition: PEM)といって、栄養状態が悪くなることが多いため、食欲や体重の増減、ふくらはぎの周径を測って栄養状態を把握します。低栄養状態が長く続くと、筋肉を分解してエネルギー源として使うため、筋肉減少症(サルコペニア)を生じるおそれがあります。

 

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