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インタビュー

公開日 : 2016 年 03 月 10 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

高齢者に薬を処方する際に気をつけることとは

国際医療福祉大学塩谷病院 高齢者総合診療科 部長/国際医療福祉大学 教授
岩本 俊彦先生

高齢者に対する薬物療法では、「多病多薬」と呼ばれる状態から生じるいくつかの問題が指摘されています。薬物の相互作用、処方のカスケード、長期連用の問題、そしていかに薬を減らしていくかといったことについて、国際医療福祉大学塩谷病院 高齢者総合診療科部長の岩本俊彦先生にお話をうかがいました。

高齢者への「多病多薬」から生じる薬物の相互作用

薬の相乗効果で薬が効きすぎることも

ご高齢の方は多くの病気を抱えているために、服用する薬の種類も多くなります。その結果、薬物の本来の効果や副作用が相互に影響を及ぼし合って、患者さんの体に良くない状態をもたらすことがあります。臨床の現場でもっともよく経験するのは、抗血栓薬の重複です。抗血栓薬とは、血栓(血のかたまり)ができて血管を詰まらせることを予防するために継続的に服用する薬であり、アスピリンは循環器科で処方される代表的な抗血栓薬のひとつです。また、同じ患者さんが腰痛や関節痛で整形外科にかかっていると、NSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)と呼ばれる消炎鎮痛剤を処方されます。

循環器科で処方されるアスピリンも元々は消炎鎮痛剤なのですが、整形外科ではアスピリンとは別の消炎鎮痛剤が処方されます。また、たまたまその患者さんが風邪をひいて別の病院で診察を受けた場合には風邪薬を処方されますが、実はその風邪薬のなかにも消炎鎮痛剤が入っています。これらの薬剤が重なることによって相乗効果で薬が効き過ぎ、消化管出血が起こるという例が年に数回あります。血を吐いたり下血が見られるという患者さんが服用している薬を調べてみると、消炎鎮痛剤が何剤も処方されていて、中にはそのために入院が必要になることもあります。

高齢者への薬の処方で起こりがちな「処方のカスケード」

薬の副作用を抑えるために別の薬を処方すること

もうひとつ注意すべきケースとしては、食欲増進剤が挙げられます。ご高齢の方は食欲不振のため、消化器内科などで食欲増進剤を処方されることがありますが、その中にはパーキンソン病と同じような症状を引き起こすものがあります。メトクロプラミド(プリンペラン®)やスルピリド(ドグマチール®)などがそれにあたります。これらの薬は短期間に使用していれば問題はないのですが、長期間継続的に服用しているとパーキンソン病と同じような症状が出て、歩幅が小刻みになったり、転倒しやすくなったりすることがあります。

われわれが患者さんの服用している薬を調べてそのことに気づき、薬をやめていただくと症状は改善するのですが、気が付かないでいるとまたその上にパーキンソン病の治療薬が処方されるということが起こりかねません。このように、ある薬の副作用に対して別の薬が処方されるという連鎖を「処方のカスケード」といいます。