尿路結石症の治療法は、結石の大きさや症状によって、経過観察(自然排石が期待できるとき)、薬物治療、専用の機械を用いて体外から体内の結石を砕く治療法、手術治療に大別されます。医療の介入なく結石が体外へと出ていく可能性が高いときとは一体どのようなときなのでしょうか。また、結石の粉砕にはどのような機械を用いるのでしょうか。国際医療福祉大学病院腎泌尿器科部長の内田克紀先生にお伺いしました。
海外の研究報告によると、尿管結石の自然排石率は以下のようになっています。
このことからもわかるように、結石の直径と自然排石率は逆相関しています。日本人においてもほぼ同様の自然排石率が報告されており、これとは逆に、10㎜よりも大きい結石の自然排石を観察した研究はほとんどありません。
自然排石を期待できる場合には、約1か月間ほど飲水や運動などの日常生活指導を行いながら経過観察を行います。
経過観察中に痛みや熱などの症状が現れた場合は、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)という機械を用いた積極的介入を考慮します。
5mmや10mm未満の結石であっても1か月以上排石がみられないときには積極的介入を考慮します。ただし、これは絶対というものではなく、実際の臨床の現場では無症状であれば数か月経過観察を行うこともあります。
2013年度版「尿路結石症診療ガイドライン」では、「直径10㎜未満の自然排石を期待できる尿管結石患者に対しては、排石促進薬が推奨される。」とされています。排石促進薬には、尿管の筋肉の緊張を解く「α1遮断薬」などがありますが、これは現時点では保険の適応外使用となる薬剤ですので、患者さんへの十分なインフォームドコンセントが必要です。このほか、生薬や漢方薬などを処方することがあります。
自然排石されないほとんどの尿路結石症の患者さんには、ESWLという機械を用いた治療を行います。ESWLとは、衝撃波の焦点を結石に集中させて体内の結石を破砕する装置を用い、細かく砕かれた結石が尿と共に流れ出るのを待つ治療法です。
装置のメーカーなどにより差はありますが、国際医療福祉大学病院で使用している衝撃波発生装置では、1時間弱で約3000発の衝撃波を照射することができます。結石を破砕する過程である程度の痛みは伴うことから、治療は鎮痛薬を使用して行います。感じ方には個人差はありますが、治療により患者さんが感じる痛みは、尿路結石症の症状である疼痛に比べると小さいものです。
ESWLの衝撃波自体は人体にとって悪影響を及ぼすものではありませんが、エネルギーの強度や照射位置を誤ると肝臓、脾臓や消化管などから出血を生じる可能性があるため、慎重な治療が必要です。(※正確に結石を破砕した場合でも、尿路には衝撃波が当たるので血尿は出ます。)
ESWLによる治療は日帰りあるいは1泊程度の入院ででき、合併症が少ないことから尿路結石症の標準治療法として現在最も高頻度で行われています。ただし、全ての尿路結石症がESWLで治癒するわけではなく、破砕効果が不十分な場合には内視鏡を用いた手術治療を行うこととなります。
ESWLでも結石が破砕されない場合は、(1)尿道から内視鏡を挿入してレーザーを用いて結石を破砕する「TUL(経尿道的結石破砕術)」、もしくは(2)背部から腎臓にバイパスを造設し、内視鏡を用いて治療する「PNL(経皮的腎・尿管破砕術)」を行います。これらの内視鏡治療には、手術中に破砕した結石の破片を取り出すことができるといったメリットがあります。
PNLはTULと比較して、腎盂や腎杯を鋳型のように埋めている比較的大きな結石に対して用いられます。長径が20mmを超えるような大きな結石の場合、ESWLだけでは治療に難渋する可能性が高いため、治療効率の高い本術式(PNL)を考慮する必要があります。
TULは手術室で麻酔をかけて行うため、数日の入院が必要となりますし、PNLはバイパスを作る際の出血のリスクなどもあり、入院期間もさらに長くなる可能性もあり、いずれの治療法もESWLと比べると患者さんの負担は大きくなってしまいます。
治療を困難なものにしないためにも、記事1「尿路結石症の原因とは? ①食生活の欧米化」から繰り返し述べてきたように、バランスの取れた食生活や適度な運動を日ごろから心掛け、結石の形成や肥大化を防ぐことが大切です。
国際医療福祉大学病院腎泌尿器外科 部長 教授
内田 克紀 先生の所属医療機関
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