尿路結石症は、結石の大きさや部位、感染症の有無によって、症状だけでなく治療法も変わります。そのため、尿路結石の可能性が疑われるときには、尿検査だけでなく様々な画像検査も行い、結石の状態や腎機能を調べる必要があります。腎泌尿器科で実際に行われている検査内容について、国際医療福祉大学病院腎泌尿器科部長の内田克紀先生にお伺いしました。
尿路結石症の検査の中でも優先度が高いものはCT検査です。医療検査には「感度が高い検査(他疾患の除外、陰性を診断するために有効な検査)」と「特異度が高い検査(確定診断に有効な検査)」があり、CT検査は前者の感度が高い検査に該当します。
超音波検査や単純X線検査では、部位により結石が写らないこともありますが、CT検査ではこのような見落としはほとんどありません。また、結石が尿路を塞ぎ、尿の流れをさまたげている「水腎症」などの情報も読み取ることができます。
ただし、CT検査には被爆という欠点もあるため、検査の度に繰り返し行うことはできません。妊娠されている女性やその可能性がある女性を除いたほとんどの方は、初診時にCT検査を行うことが推奨されます。
国際医療福祉大学病院では、単純CT検査とKUBを1セットとして行っています。結石が腎臓の中にある場合などは、KUBだけでも尿路結石症と診断することが可能です。ただし、KUBでは骨盤骨に重なっている中部尿管の結石や、微小な結石の確認ができないこともあります。また、尿酸結石やシスチン結石など、X線透過性の高い結石(透過結石)はKUBでは描出されにくく、診断をつけられないこともありますがCTでは確認できます。このように、KUBだけでは感度が低いため2つの検査を1セットとして行っています。
腎臓が正しく機能しているかどうかを調べるため行う検査は、静脈性尿路造影検査(以下、IVU)です。これは、上記の単純CT検査やKUBなど、初診時に行う診断のための検査とは異なり、治療方針が決まったタイミングで行う検査です。
IVUは、結石除去治療を行うにあたり、尿路の形態や分腎機能(患側腎と対側腎の機能)の評価に有用な検査となります。しかし、この検査にはヨード系造影剤を使用する必要があるため、副作用が起こるリスクも考えられます。このような理由から、造影剤アレルギーの方や、気管支喘息、腎機能障害のある患者さんには原則として使用せず、症例に応じて必要なときのみ行っています。
血液検査は腎機能や尿酸値、カルシウム値、炎症反応などの情報がわかるため、感染症の有無や急性腹症の鑑別診断において有用で、早期の適切な治療のための一助となります。
また、尿路結石をきたす原因疾患(副甲状腺機能亢進症、痛風)のスクリーニングとしても有用です。
尿路結石に高熱を伴っている場合は、腎盂腎炎を伴う「結石性腎盂腎炎」という状況かもしれません。この場合は、結石に対する治療よりも、尿管ステントを留置したり腎瘻を造設したりして、感染を生じている腎盂にバイパスをおいて感染尿のドレナージ(体外への排出)処置を最優先すべきです。適切な処置が遅れると菌血症から敗血症を生じて生命の危険が生じます。
また、女性の患者さんの急性腹症の中には、卵巣嚢腫茎捻転や子宮外妊娠といった女性特有の疾患の可能性がありますし、性別に関係なく虫垂炎、結腸の憩室炎、腸の穿孔などによる腹膜炎で激しい痛みを呈する場合もあります。こういった場合には一刻を争って適切な治療をしなければ患者さまの生死にも関わりますので、これらを診断するためにも血液検査を行うことは重要になります。
尿路結石症の患者さんのほとんどは、尿中に潜血がみられます。(※希に血尿がみられない方もいます。)
また、尿路結石症の治療方針を決める際には、尿検査でわかる尿pHもひとつの重要な情報になります。結石の成分によって数値は変わりますが、たとえば尿酸結石がある患者さんの尿pHは5~5.5と酸性に傾いていることが多く、尿をアルカリ化する治療を行うための参考になります。逆に、感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石など)があると尿はアルカリになります。
これらをまとめると、尿検査では、①血尿の有無②感染の有無③尿pH値、この3つを主にチェックするということになります。
国際医療福祉大学病院腎泌尿器外科 部長 教授
内田 克紀 先生の所属医療機関
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