インタビュー

振戦(震え)とは?——いくつかのタイプに分かれる

振戦(震え)とは?——いくつかのタイプに分かれる
大原 信司 先生

おおはら脳神経クリニック 院長

大原 信司 先生

この記事の最終更新は2016年04月06日です。

何か動作をしようとする時に起こる震えや、安静時にみられる震えなど、震えはいくつかのタイプに分類されます。治療法は震えの種類によって異なるため、正しい診断が非常に大切です。福岡山王病院 脳神経外科部長の大原信司先生に震えについてお話を伺いました。

震えがあると、コップや茶碗、箸やスプーンなどかうまく持てないため食事ができなかったり、ペンを持つ手が震えて字が書けなかったりといった症状によって日常生活にも大きな影響を与えます。仕事への支障が出ることもあり、このような震えの症状で悩んでいる方は意外に多いのです。

緊張した時や寒い時などに現れる震えなど、誰にでも生じる生理的振戦(しんせん)は病気ではないため治療を行う必要はありませんが、震えには病気によって起こるタイプのものがあります。その代表的なものがパーキンソン病本態性振戦甲状腺機能亢進症アルコール依存症などです。その中でも特に震えの原因として多くを占めているのが本態性振戦とパーキンソン病です。

震えには安静にしている時に出現する「安静時振戦」や何かの動作をする時に現れる「動作時振戦」などがあります。動作時振戦はさらに、「企図振戦」や「姿勢振戦」などにこまかく分類されています。

・安静時振戦 安静にしている時に起こる震え。パーキンソン病に多くみられる。

・動作時振戦

①企図振戦(小脳性振戦)ボタンを押したあとや、物を取ろうとした時などに起こる震え。小脳と呼ばれる部位が原因となっており、多発性硬化症脊髄小脳変性症脳卒中アルコール依存症などにおいてみられる。

②姿勢振戦 コップやお箸を持つなど、 腕や足を一定の状態に保持した時などに起こる震え。原因としては、本態性振戦甲状腺機能亢進症など。

パーキンソン病の場合は、安静時振戦といってからだを動かしていない時に出るタイプの震えです。一方、本態性振戦の場合はパーキンソン病の時とは反対に、安静時には現れず、手やからだを動かした時に震えが起こります。本態性振戦にしてもパーキンソン病にしても、その他の病気もそうですが、治療はまず内科的に行います。内科的治療を行っても効果が得られず、日常生活に支障を来すような場合に外科的治療が検討されることになります。

福岡山王病院脳神経外科で震えの外科的治療の対象としている疾患は、本態性振戦とパーキンソン病です。外科治療で主流として行われているのは脳深部刺激療法(DBS)という治療です。これは脳内に電極を植え込み、神経細胞に電気刺激を持続的に送ることで震えを抑える治療法です。心臓に挿入するペースメーカーのようなものをイメージするとわかりやすいでしょう。

脳深部刺激療法は震えに対し非常に効果的で、9割程度において軽減することができます。パーキンソン病においては、震え以外の症状に対しても有効であることが示されています。

これはMRI(磁気共鳴画像)ガイド下に行う超音波を用いた治療法です。超音波のビームを一点に収束させ、ターゲットとなる部位を超音波の熱で変性させるという治療です。まだ治験段階ですが、この治療を求めて患者さんが殺到しているところをみると、震えで悩んでいる方は決して少なくないのだと思います。

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  • おおはら脳神経クリニック 院長

    日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医

    大原 信司 先生

    福岡山王病院脳神経外科部長として、脳腫瘍をはじめ、脳卒中や外傷など脳神経外科全般の診療に加えて、パーキンソン病や振戦(震え)、ジストニアなどに対する脳深部刺激療法(DBS)、痛みに対する脊髄刺激療法(SCS)、てんかんに対する外科治療を行ってきた。震えや痛みは心身の不具合を来すもの。症状を軽減しQOLの改善に向けた治療を心がけている。

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