インタビュー

痛みに対する外科的治療について

痛みに対する外科的治療について
大原 信司 先生

おおはら脳神経クリニック 院長

大原 信司 先生

この記事の最終更新は2016年04月06日です。

震えと同様、耐え難い痛みは大きなストレスになるほか、日常生活のQOL(生活の質)を著しく損なってしまいます。神経の異常による痛みや血流障害による痛みに効果があるとされているのが脊髄刺激療法です。福岡山王病院 脳神経外科部長の大原信司先生に神経障害性の痛みについてお話を伺いました。

震えの治療としてお話しした脳深部刺激療法(DBS)<記事3>と同じように、痛みに対する外科的治療として行われるのが脊髄刺激療法(SCS)です。

痛みというのは、痛みの信号が脊髄から脳に伝わることで「痛い」と認識されるものです。そこで、脊髄に電気刺激を与えることで痛みの伝達を抑制しようというのが脊髄刺激療法のメカニズムです。この歴史は古く、脳深部刺激療法よりも以前から行われている治療です。治療効果については、痛みが5割以上軽減したという方が60%程度みられるほか、患者満足度に関してもおよそ70%であると報告されています。その他にも、鎮痛剤を使用する必要がなくなった方や職場への復帰ができた方などの例もあり、日常生活も大幅に改善されています。

痛みといっても、その原因にはさまざまなものがありますが、脊髄刺激療法で効果が期待されるものとしては、神経の異常による痛みや血流障害による痛みがあります。

神経障害性疼痛(とうつう)と呼ばれることもありますが、脊髄刺激療法はこれら神経に伴う痛みや虚血に伴う痛み、四肢の痛みに対して行います。最近は、脳卒中後に現れる視床痛(ししょうつう)に対しても効果があるとする報告が増えています。

①脊髄手術後の痛み

複合性局所疼痛症候群:CRPS(反射性交換神経性ジストロフィー: RSD・カウザルギー)

③末梢血管障害:PVD(閉塞性動脈硬化症:ASO・バージャー病レイノー病

④脊椎・脊髄疾患(脊柱管狭窄症など)

帯状疱疹後の神経痛

⑥幻肢痛

多発性硬化症

痛みによって困っていることを明確にして、医師は日常生活が改善されるように患者さんと共に治療の目標を立てていきます。次にリードと呼ばれる電極を挿入するのですが、この脊髄刺激療法の大きなメリットのひとつは、試験的にリードを入れて治療効果を判定することができることです。手術は局所麻酔で行い、リードを硬膜外腔(こうまくがいくう)に挿入します。電流を流して患者さんに刺激による生じる感覚を確認しながら、電極を留置するべき位置を探します。

刺激の位置を決めてリードを挿入したら、試験期間として1週間ほど刺激を試してもらいます。刺激の強弱の調整や不快なときには電源をオフにするなど患者さん自身で電流調整を行ってもらいます。トライアル期間で効果が確認されたら、本格的に体内に刺激装置を植え込みます。

脊髄刺激療法の有効性に関する研究で、脊髄刺激療法を行うまでの期間と長期成績との関係について調べた研究によると、治療までの導入期間が早いほど長期成績も良好であるとする結果が示されています。とはいっても、脊髄刺激療法は手術を伴うため、合併症も気になる点です。およそ3000例を対象とした合併症の調査データから、リードがズレたり断線したといった例はあるものの、麻痺を起こすような重症例は1例のみという結果が報告されています。すなわち、脊髄刺激療法はトライアルが可能で有効性が高く、比較的安全に行える治療法といえるでしょう。

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  • おおはら脳神経クリニック 院長

    日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医

    大原 信司 先生

    福岡山王病院脳神経外科部長として、脳腫瘍をはじめ、脳卒中や外傷など脳神経外科全般の診療に加えて、パーキンソン病や振戦(震え)、ジストニアなどに対する脳深部刺激療法(DBS)、痛みに対する脊髄刺激療法(SCS)、てんかんに対する外科治療を行ってきた。震えや痛みは心身の不具合を来すもの。症状を軽減しQOLの改善に向けた治療を心がけている。

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