DBS治療は、大学病院を中心に広がりを見せ、ここ20年ほどで技術はほぼ確立されているといっても過言ではありません。DBS治療を希望する患者さんはどんな情報を得るべきか、脳神経外科医師・湘南医療大学副学長の片山容一先生にうかがいます。
今よりもDBS治療を行える施設が少なかった5年ほど前までは、当時私の所属していた日本大学病院では半年ほど患者さんが治療をお待ちになっている期間がありました。しかし、2016年現在では、3ヶ月程度で受診の目途が経つほどに改善され、待っているのになかなか治療が受けられないという患者さんはいらっしゃいません。
治療を希望する場合、日本定位・機能神経外科学会が技術認定をしている施設があります。ホームページなどでも情報を探すことが可能です。技術認定された施設ならば認定医もいるため基本的には治療可能なケースが多いですが、神経ナビゲーション・神経モニタリング、定位脳手術の装置などかなり専門的な機器と設備が必要とされるため、大学病院を中心に行われているのが現状です。
希望すればどのような方でも治療を受けることができます。さらにDBS治療は2015年から高額医療の対象となったため、高額療養費制度の申請が可能です。ですから、患者さんが実際に負担する費用としては多くとも20~30万円程度で、年収によってはこれよりもずっと負担が少なくなる場合があります。
成長によって頭蓋骨の大きさも変化するため、ターゲットの位置がずれるという弊害はありますが、電極の調整は手術によって可能です。また患者さんが女性の場合も、将来的に妊娠・出産に影響が出ることはありません。
実は、DBSはうつ状態の改善にも用いられることがあり、パーキンソン病からの合併として「うつ状態」になった方へのDBSは症状の改善にかなり効果が高いことがわかっています。しかし、もしその症状が「うつ状態」ではなく、長く精神科にかからなければならないような「うつ病」の状態に移行してしまっている場合、DBSを行っても治療効果が得られないことがあります。
パーキンソン病の不随意運動はドパミンの不足が原因であるため、患者さんはドパミンを補充する「レボドパ」という薬を服用しています。ところが、レボドパに依存性が出てしまうと、本当はうつ状態が存在しているのに症状が抑えられてうつ状態が隠れてしまうことがあります。そのため、薬をやめた途端に反動でひどいうつ状態になってしまう方がいらっしゃいます。DBS治療になかなか踏み切れずレボドパを長期間服用していると依存性が出てしまい、DBS治療に移行する=レボドパの服用をやめることが難しくなってしまうのです。実際に、DBS治療を行って身体症状が改善されたためレボドパの服用が必要なくなったのに、やめたらうつ状態が強く出てなかなか服用がやめられないという方もいらっしゃいます。言い換えると、「レボドパをやめたいからDBS治療をしたい」という目的の患者さんには適していないということです。
青森大学 脳と健康科学研究センター長、青森新都市病院 総長、日本大学脳神経外科 名誉教授
片山 容一 先生の所属医療機関
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