インタビュー

DBS(Deep Brain Stimulation)とは

DBS(Deep Brain Stimulation)とは
片山 容一 先生

青森大学 脳と健康科学研究センター長、青森新都市病院 総長、日本大学脳神経外科 名誉教授

片山 容一 先生

この記事の最終更新は2016年03月24日です。

パーキンソン病ジストニアなどの治療で、脳に電極を埋め込み刺激する方法があります。それをDBS(Deep Brain Stimulation)と呼びますが、いったいどのような方法なのでしょうか。脳神経外科医師、湘南医療大学副学長の片山容一先生にうかがいます。

頭蓋骨の上、つまり頭の皮膚の上から刺激する方法と、直接脳内に電極を設置して刺激する方法の2つに分けられます。

このうち、脳の中に電極を設置して刺激する方法を「脳深部刺激療法」といいます。頭の皮膚(頭蓋骨の外側)から皮膚を傷つけずに外から刺激する方法には、「経頭蓋電気刺激療法」と「経頭蓋磁気激療法」があります。現在では、脳に直接電気を送って刺激する方法をまとめて「DBS(Deep Brain Stimulation)」と呼んでいます

1979年にこの研究が始まった時から30年以上経った今まで、「脳深部刺激療法」は脳外科領域では浸透した呼び名でした。脳神経外科学会の編纂した用語集や定位・機能神経外科学会のガイドラインなどにもこの呼び名が使われています。しかし、このような手術があることを知らなかった医師たちの間では「Deep Brain Stimulation」をそのまま翻訳して「深部脳刺激(療法)」と呼ぶ方もいらっしゃいます。ただ、日本では「脳深部刺激療法」という言葉が従来から使われていたことを強調しておくべきでしょう。

DBSは、脳全体を刺激するECT(Electro Convulsive Therapy)とは異なり特定の数ミリの範囲だけを刺激するため、刺激したい部位の周辺の機能に影響がないように行えます。その一方、影響を及ぼさないという面と治療の精度を上げるために、刺激したい部位をピンポイントで探す必要もあり、手術の方法には技術も必要であるといえます。

DBSは、現在ではパーキンソン病ジストニアで積極的に行われている治療ですが、刺激する部位は病気によって異なります。

たとえばパーキンソン病の場合、視床下核あるいは淡蒼球内節を刺激します。さらに、同じパーキンソン病の方でも表れる症状が患者さんそれぞれによって異なるため、症状に合わせてターゲットを変えていきます。つまり、病気によって機能異常が起こるシステムは同じなので、パーキンソン病の場合刺激する部位は「視床下核」か「淡蒼球内節」ですが、患者さんそれぞれによって刺激する部位は少しずつ異なるということです。

刺激する部位
刺激する部位:赤線がパーキンソン病で刺激する部位、青線がジストニアで刺激する部位

これは私の考えですが、DBSはもっと広く使われてもよいのではないかと思っています。しかし脳に電極を埋め込むわけですから、治療の効果以前に「脳に電極を埋めることがこわい」と思われる方が多いことも理解できます。ですから、軽度の症状しかない方の場合、「そこまでして治療をしたくないから我慢する」とおっしゃる方も多く、ほとんどの方が10年程度経過した後にDBSの治療をお考えになるという現状です。

「DBS治療を必要としている患者さんがどれぐらいいるのか」は非常に難しい話です。この「希望しているけれど治療に踏み切れない」患者さんがどの程度いるのか、その患者さんをどのように治療に導くかが、今後DBSが普及していくかどうかの鍵になると考えています。

 

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