インタビュー

パーキンソン病の症状

パーキンソン病の症状
鈴木 正彦 先生

東京慈恵医科大学 内科学講座脳神経内科 教授、東京大学医科学研究所 非常勤講師

鈴木 正彦 先生

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この記事の最終更新は2015年10月10日です。

パーキンソン病は主に運動機能の障害という面でとらえられることが多い疾患ですが、それ以外にも非運動症状と呼ばれる症状があります。東京慈恵会医科大学葛飾医療センター神経内科診療部長の鈴木正彦先生は、パーキンソン病の主症状が発症する前に現れる非運動症状に着目し、発症前診断の足がかりになると考えています。今回はパーキンソン病の症状という観点からお話をうかがいました。

特徴としては、体の左右どちらかにより強くふるえが出ます。また、何もしていないときに起こり、何かしようとすると止まります。これを安静時振戦と呼びます。

医師が患者さんの手首や肘関節を支えてゆっくりと動かすと、途中でカクカクという抵抗感があります。普段の生活で患者さんが気づくことはあまりありませんが、症状が進むと動きがぎこちなくなったり、歩くときに片側の腕の振りが悪くなって片足を引きずるようになります。

寡動(かどう)は動作の開始に時間を要し、動いても動作の幅が小さく緩慢となった状態を指します。寡動が亢進すると無動となります。瞬目減少や仮面様顔貌、すくみ足(歩行開始時に第一歩を踏み出せない)、小刻み歩行、前傾姿勢、小字症、小声症などが代表的な症状です。

バランスがとりづらいため足が前に出にくくなり、つまずいたり転んだりしやすくなります。また、少し押されただけでよろけたり、いったん歩き出すと小走りになって止まらなくなったりします。このため、バランスを取ろうとしてふだんから立ったときに前かがみになり、歩くときはすり足で歩幅が小さくなりがちです。

運動症状からパーキンソン病の進行の度合いを判断する指標として、ヤールの重症度分類(ホーエン&ヤールの重症度分類)があります。

重症度症状

I体の片側のみに症状があり、症状はごく軽い

II体の両側に症状があり、姿勢反射障害はない

III姿勢反射障害がある

IV起立・歩行はなんとかできるが、日常生活に介助が必要なことがある

V一人で起立・歩行ができず、日常生活に介助が必要

4大症状を始めとする運動症状の有無は、従来からパーキンソン病の診断において重要なものと考えられていました。しかし近年ではそれ以外の非運動症状や精神症状がこれまで以上に重要なものとして注目されるようになっています。

パーキンソン病には前項の運動症状の他にも起立性低血圧・発汗異常・排尿障害・便秘・嚥下障害・唾液分泌異常など、さまざまな非運動症状があります。以下の非運動症状はパーキンソン病の運動症状に先行することが知られています。

  • 嗅覚低下(においを感じない)
  • 便秘
  • レム睡眠行動障害(RBD: REM Sleep Behavior Disorder)
  • 抑うつ

これらの症状がみられる方を対象に、核医学検査で線条体ドパミントランスポーターの状態を調べると、多くの症例で運動症状がなくてもすでに低下していることがわかってきました。(関連記事「パーキンソン病の検査と診断」参照)

パーキンソン病では、原因となるドパミン神経細胞の減少が始まっても、すぐに発症するわけではありません。運動症状が現れる5年前からドパミン神経細胞が減り始め、60〜70%も減ってからようやく発症するとされています。今後、神経の変性を抑制する新たな治療法の開発が進めば、発症前に治療を開始することにより、運動症状のないままに過ごすことも可能になります。すでにその一端が私たちの研究によって明らかになりつつあります。

病状が進むにつれてドパミンが減少すると、意欲の低下も起こるようになります。また、レビー小体が大脳皮質に移行すると、意識レベルの変容をともなう認知機能障害が発生するようになり、レビー小体型認知症(DLB:dementia with Lewy bodies)あるいは認知症を伴うパーキンソン病(PDD:Parkinson’ s disease with dementia)と呼ばれる状態になります。

パーキンソン病の運動症状そのものは、現在ではさまざまな治療によってコントロールすることが可能であり、天寿を全うできる方も多数おられます。しかし認知症を発症するかどうかという点が予後、すなわち患者さんのその後のQOL(生活の質)を規定する大きな要因となっています。

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