インタビュー

慢性疼痛を緩和する薬について-オピオイド鎮痛薬が必要なときと必要でないとき

慢性疼痛を緩和する薬について-オピオイド鎮痛薬が必要なときと必要でないとき
徳田 安春 先生

群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 ...

徳田 安春 先生

Choosing Wisely

この記事の最終更新は2016年04月08日です。

「オピオイド鎮痛薬」は一般的な鎮痛剤です。オピオイド鎮痛薬は、たとえば骨折手術後の痛みのように、短期的かつ重い疼痛を抑えるのに役立ちます。また、がんなどの疾患による痛みを抑えるためにも有用です。

ただし、オピオイド鎮痛薬は、強力な薬剤であることに注意せねばなりません。また、この薬を関節炎や腰痛、頻繁に起こる頭痛など、長期間持続する痛みを抑えるために使用することは、通常適切ではありません。このような痛みのことを、「慢性的な」疼痛と呼びます。慢性疼痛にオピオイド鎮痛薬を使用する前に、必ず他の選択肢はないか、医師と相談し検討するべきです。一体なぜでしょうか。

慢性疼痛は、病院を受診する理由のうち、最も多いものの一つといわれています。慢性疼痛を訴える患者の5人に1人がオピオイド鎮痛薬を処方されています。

一般的なオピオイド鎮痛薬には、下記のものが含まれています。

  • オキシコドン

オピオイド鎮痛薬は、短期の使用であれば役に立ちます。しかし、長期にわたる使用の効果は証明されていません。

オピオイド鎮痛薬を長期間繰り返し使用していると、体が薬に慣れて効き目が得られなくなっていきます。そのため、徐々にオピオイド鎮痛薬の投与量を増やすことになります。投与量が多くなることで起こり得る副作用には、次のようなものがあります。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 便秘
  • 排尿困難
  • 命にかかわるほどの呼吸抑制
  • 錯乱や精神障害

また、オピオイド鎮痛薬には強い中毒性があります。米国では、オピオイド鎮痛薬を長期にわたって使用している方のうち4人に1人が中毒者となっています。これに加え、米国ではオピオイド鎮痛薬の多量投与により毎日46人が死亡していることも見逃せません。さらに、1日数百人という人が救命救急センターに運ばれています。

オキシコドンのような種類のオピオイド鎮痛薬は、毎月1000ドル(日本円で約110.000円)費用がかかります。この費用は、米国の場合加入している保険によってはカバーできますが、副作用が出た場合はさらに費用がかさむことになります。

オピオイド鎮痛薬を用いない疼痛治療により、より高い効果を得られ、リスクを減らせる可能性があります。

鎮痛治療の専門家は、最初にオピオイド鎮痛薬以外の治療(下記)を試すべきと述べています。

◆市販の薬(下段の「アドバイス・コラム」をご参照ください。

◆薬を使用しない治療法

  • 運動
  • 理学療法
  • 脊椎徒手整復
  • マッサージ療法
  • 鍼療法

◆ステロイド注射などの注射治療

◆ほかの処方薬(リスクと副作用をきくこと)

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • てんかん

痛みの種類によっては、市販の鎮痛剤でも十分抑えることができます。下記に挙げる鎮痛剤は、服用方法を守り頻繁に服用し過ぎなければ安全なものです。

  • アセトアミノフェン(ジェネリック薬含む)
  • イブプロフェン(ジェネリック薬含む)
  • ナプロキセン(ジェネリック薬含む)

ジェネリック薬や薬局で販売されている医薬品は安価です。また、安全であるだけでなく、効果もあります。

下記の項目に従い、安全に服用しましょう

  • 使用上の注意をよく読み、用法用量を守って服用しましょう。
  • 多量飲酒をしている方、肝臓病もしくはその恐れがある方は、アセトアミノフェンを服用しないように気を付けましょう。
  • 同系統の薬、例えばイブプロフェンとナプロキセンを一緒に服用してはいけません。どちらも非ステロイド系の消炎鎮痛薬です。
  • 医師と相談せずにイブプロフェン、ナプロキセン、もしくは非ステロイド系の消炎鎮痛薬を10日以上服用することは危険です。これらの鎮痛剤は、胃や腸からの出血の原因となることがあります。長期間にわたって服用すると、腎機能障害を来すこともあります。

アセトアミノフェンの過剰摂取に気を付けましょう

米国の消費者レポートは、1日3250㎎以下に服用量を留めるよう推奨しています。

  • 1日3250㎎以上の服用は、肝臓、脳、腎臓の障害リスクを高めます。
  • アセトアミノフェンは、気づかず多量摂取してしまいやすい薬です。鎮痛剤、風邪や副鼻腔の薬、乗り物酔いの薬、安眠薬など600種類以上の製品があります。
  • 使用上の注意をよく読み、アセトアミノフェンを含む薬を2つ以上服用する場合は、服用量を足して合計量を把握しましょう。

 

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  • 群星沖縄臨床研修センター センター長 、東京科学大学 臨床教授、獨協大学 特任教授、琉球大学 客員教授、筑波大学 客員教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of Hospital General Medicine 編集長

    徳田 安春 先生

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