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高安動脈炎とは? 大動脈や頸動脈など太い動脈に炎症が起こり、脳や心臓に...
高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん)は、主に大動脈などの太い血管に炎症が生じ、血管の狭窄や閉塞が起こることで、手足が疲れやすくなったり、脳・心臓・腎臓といった生命活動に重要な臓器に障害を与えたり...
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高安動脈炎とは? 大動脈や頸動脈など太い動脈に炎症が起こり、脳や心臓に障害が及ぶ病気

公開日 2016 年 09 月 29 日 | 更新日 2018 年 10 月 23 日

高安動脈炎とは? 大動脈や頸動脈など太い動脈に炎症が起こり、脳や心臓に障害が及ぶ病気
有村 義宏 先生

杏林大学医学部第一内科学教室(腎臓・リウマチ膠原病内科) 教授

有村 義宏 先生

高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん)は、主に大動脈などの太い血管に炎症が生じ、血管の狭窄や閉塞が起こることで、手足が疲れやすくなったり、脳・心臓・腎臓といった生命活動に重要な臓器に障害を与えたりする原因不明の病気です。血管炎の一種で、どの血管に炎症が生じたかによって様々な症状が出現します。今回は血管炎のなかの高安動脈炎について、診断から治療の手順、治療の際の注意点までご説明します。引き続き、杏林大学第一内科腎臓・リウマチ膠原病内科教授の有村義宏先生にお話しいただきます。

かつて「イコール」だった高安動脈炎と大動脈炎症候群―実は別の病気

大動脈イメージ

かつて、高安動脈炎は大動脈炎症候群と同じ病気であるとされていましたが、実際には完全に同じではありません。

高安動脈炎は若い女性に多発し、大動脈を中心とした大型血管に原因不明の血管炎を生じます。一方、大動脈炎症候群では同じように大型血管が障害されますが、高安動脈炎だけでなく、梅毒などの感染症による大型血管炎も含んでいます。

以前は厚生労働省でも、高安動脈炎を大動脈炎症候群として難病に指定していましたが、2013年の難病法の制定により病名改訂が行われ、大動脈炎症候群の名称は高安動脈炎と変更されました。現在、指定難病に認定されているのは高安動脈炎です。

高安動脈炎の原因は遺伝?感染症?

高安動脈炎の原因は残念ながらいまだに不明ですが、東洋に多いこと、若い女性に多いことなどより何らかの遺伝的な要素や環境因子が関連していると考えられています。

たとえば、若い女性が上気道感染症にかかったあとで高安動脈炎を発症する場合もあります。しかし、どうして血管炎が発症するのかはわかっていません。

高安動脈炎は東洋に多く、患者さんのほとんどは女性である

アジア人女性イメージ

高安動脈炎は、記事1『血管に炎症が起こる「ANCA関連血管炎」とは? 膠原病(こうげんびょう)の一種とされる免疫の病気』で述べた血管炎の分類のうち、「大型血管炎」に該当します。大型血管炎では主に心臓から出てくる動脈(大動脈)と大動脈から枝わかれして体の主要な場所(頭、腕、足)に行く太い動脈(頸動脈、上腕動脈、大腿動脈)が侵され、若い女性に多いという特徴を持ちます。また、高安動脈炎は東洋に多く発生するという特徴もあります。

さらに、一部の患者さんでは特異的な遺伝的な要素(HLAなど)が関係しているのではないかとも推測されています。

高安動脈炎の症状―不定愁訴から始まる

高安動脈炎では障害された血管の部位によって症状が変わり、様々な異変が現れます。

一般的に、初期には発熱や全身倦怠感、食欲不振、体重減少など、風邪をひいたようなはっきりしない症状から始まることが多いです。

また、血管が障害され、大動脈壁の硬化、大動脈弁閉鎖不全症、腎動脈病変などが起こりやすくなるため、高血圧症を合併する方もいらっしゃいます。高血圧は高安動脈炎の予後に大きく関連しているといわれています。

血管炎が進行すると、炎症によって血管が狭窄や閉塞、拡張し、血液がうまく行き渡らなくなってきます。たとえば頭に血液を運ぶための血管(頸動脈)に炎症を起こると、めまいや立ちくらみ、難聴や耳鳴り、歯の痛み、頸部痛失神、ひどい場合には脳梗塞や失明をきたすこともあります。また、腕に分布する血管(上腕動脈)に炎症が起こると、腕が疲れやすかったり脈が触れなかったりします。脈が触れにくいことから、高安動脈炎は「脈なし病」とも呼ばれています。

高安動脈炎の患者さんのうち、約3分の1では心臓の大動脈弁付近にも炎症が及んで大動脈弁閉鎖不全症という弁膜症(べんまくしょう)という病気を合併することが知られています。弁膜症の程度によっては、心臓の働きに問題が生じることがあります。

さらに、腎臓に向かう血管(腎動脈)が障害された場合は、腎臓の働きが低下したり、高血圧になることがあります。また、下肢に栄養を運ぶための血管が障害された場合は歩行困難になることもあります。このように、高安動脈炎は重要な臓器の機能低下をきたす可能性が高い疾患なのです。

高安動脈炎の検査と診断について―画像診断が役立つ

高安動脈炎は画像診断をはじめ、血液検査や臨床所見などから総合的に診断します。

1、臨床所見から血管狭窄の程度を確認する

一般の診察では、血管の狭窄の有無を調べるため、聴診器を首や胸にあてて雑音の有無を確認します。また、脈や血圧の左右差を調べます。

2、画像診断(CT、MRI)で大動脈の形の変化を確認する

高安動脈炎

(心臓から出ている大動脈および頭に向かう首の動脈、腕に向かう動脈の血管に狭窄や拡張が認められる(矢印)。 画像提供:有村義宏先生)

高安動脈炎を確定診断するためには画像診断が重要となります。

具体的には、CT、MRI、MRAなどで、大動脈の狭窄や拡張の有無、壁の厚さの程度を確認し、血管の形の変化から診断します。

その他、FDG-PETを用いることで大動脈の炎症の程度や局在を知ることができますが、FDG-PETは保険外診療であるため、現在のところ全ての患者さんには使われていません。

3、血液検査から炎症反応の程度を診断する

血液検査で炎症反応(血沈、CRPなど)をみて、炎症が起こっているかを判断することできます。

高安動脈炎に対する遺伝子検査は必要か?

HLAなどの遺伝的素因を調べる検査を行う場合がありますが、高安動脈炎は遺伝病ではないので確定診断には有用ではなく、先に述べた画像診断が重要です。

高安動脈炎の診断―厚生労働省の診断基準を用いた確定診断について

通常は厚生労働省の診断基準を使って診断を進めます。この診断基準も、医学の進歩にあわせ専門家による討議のうえ改良が重ねられています。

関連リンク:厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究

診断の流れ

(1) 確定診断は画像診断(CT、MRA、FDG-PET、DSA、血管エコー)によって行います。

(2) 対象者が若い方で、尚且つ大動脈とその第一次分枝に壁肥厚、閉塞性、あるいは拡張性病変がみつかった場合は、炎症反応が陰性であっても第一に高安動脈炎を疑います。

(3) (2)に加えて炎症反応が陽性の場合、高安動脈炎と診断します。(ただし、活動性があっても CRP(炎症反応を測定する血液検査の項目)の上昇がない場合があります)

(参考:厚生労働省より)

国際血管炎・ANCA学会の開催に向けて―東京大会のテーマは?

国際血管炎・ANCA学会

2017年3月25日(土曜)から28日(火曜)まで、東京(東京大学 伊藤国際学術研究センター)で第18回国際血管炎・ANCA学会が開催されます。今回の東京大会のテーマは、「Vasculitis: Diversity(多様性)and Integration(統合) for Tomorrow」です。世界各国(30カ国以上の国々)から血管炎を専門とする研究者や臨床医が一同に集まり、血管炎克服の未来にむけて最新の基礎研究や臨床研究について討議する予定です。

血管炎の国際会議の案内はこちら 「The 18th International Vasculitis & ANCA Workshop –Diversity and Integration for Tomorrow-」

「第18回国際血管炎・ANCA学会(18th International Vasculitis and ANCA workshop 2017 in Tokyo)」の事前参加登録締め切り日(2月20日)のお知らせ。http://anca2017.tokyo/

事前参加登録の締め切り(2月20日)まで約2週間になりました。

本学会は、血管炎の定義・分類基準、病名改訂、ANCA測定法、新規治療法の開発に主導的な役割を果たしてきました。

おかげ様で今大会には各国から血管炎に関して451題という多数の演題登録をいただき、プログラムも確定しましたhttp://anca2017.tokyo/program.html

現時点で、欧州、アジア、南北アメリカなど、37か国から事前参加登録をいただき、参加者多数のため伊藤国際研究センターに加え急遽、安田講堂も会場に加え開催することといたしました。

開催当日は、受付の混雑が予想されます。

おそれいりますが、ご参加をご検討いただいている先生方、事前参加登録を何卒よろしくお願い申し上げます。http://anca2017.tokyo/registration.html

■事前参加登録締め切り;2017年2月20日

■開催概要

会期:2017年3月25日(土)~28日(火曜)

会場:東京大学伊藤国際学術研究センターhttp://www.u-tokyo.ac.jp/ext01/iirc/en/index.html

             東京大学安田講堂    http://www.ut-life.net/guide/map/hongo/yasuda_kodo.php

■大会長:有村義宏(杏林大学)

実行委員会委員長:藤元昭一(宮崎大学)

プログラム委員会委員長:石津明洋(北海道大学)

国際委員(代表):C. Jennette (USA), D. Jayne (UK), L. Guillevin (France), Ingeborg Bajema (Netherlands), Franco Ferrario (Italy), M. Chen(China), Luis Felipe Flores-Suarez (Mexico), Pavel Novikov (Russia), Seza Ozen (Turkey), Niels Rasmussen (Denmark), Andy Rees (Austria),Judy Savige (Australia), Vladimir Tesar (Czech Republic), Michael Walsh (Canada), Kerstin Westman (Sweden), Kirsten de Groot (Germany)

http://anca2017.tokyo/organizing-committee.html

高安動脈炎の治療―他の血管炎と同様、副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬による治療が行われる

経口薬イメージ

高安動脈炎の治療には、他の血管炎と同様に薬物療法(副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬の併用)が行われます。また、ステロイド単独治療を行う場合もあります。

血管が障害されることで血栓ができやすいので、降圧剤や抗血小板薬の投与を行ったり、あまりにも血管狭窄が強ければ手術したりすることもあります。この場合は心臓血管外科と連携して治療を進めていきます。勿論、手術をするにあたり、内科的に炎症を抑えるアプローチを行い、できるだけ血管の炎症が治まったうえで外科的な治療に進みます。炎症が起こったままの血管は縫合などがしづらいためです。

このように、高安動脈炎は内科と外科、両方のアプローチが必要な疾患だといえます。

手術後に高安動脈炎や血管炎が再燃する可能性は?

高安動脈炎に限らず、血管炎は総じて再燃(さいねん:病状が再び悪化すること)が起こりやすい病気です。

ステロイドと免疫抑制薬で日常的に病状をコントロールしていても、薬を減量するタイミングや、その他何らかの原因によって再燃する可能性があります。もしも再燃してしまった場合、治療はやり直しとなり、再びステロイドや免疫抑制薬を増量する場合もあります。

糖尿病や高血圧、膠原病全般などと同じように、高安動脈炎も一生涯病気のコントロールが必要な病気です。高安動脈炎は医学の進歩により、以前に比べると治療によってしっかりとコントロールすることができるようになってきています。実際に私が診ている患者さんは、病気をコントロールして安定している方がほとんどです。

高安動脈炎を治療する際の注意点―自己判断で薬を止めないで

有村先生

患者さんは、ステロイドなど処方された薬の服用を自己判断で辞めてしまわないようにしてください。ステロイドや免疫抑制薬の勝手な中断は命にかかわります。

一部のメディアでは、「ステロイドは悪い薬だ」という情報が報じられています。これらの情報を鵜呑みにして、服薬を怖がってしまうと、かえって病状は悪化します。

薬をきちんと飲んでさえいれば普通に生活できるにもかかわらず、自ら生活を困難にしてしまうような判断はやめましょう。主治医とよく相談して納得し、きちんと薬を飲み続けることが大事です。

高安動脈炎の療養のコツは「3つのA(トリプルA)」

他の膠原病など、どの慢性疾患の療養にも通ずることですが、病気の治療には「諦めない」「焦らない」そしてちょっとした「遊び心」を持つことが大切です。

慢性疾患とは長く付き合うことになるので、「諦めない」「焦らない」気持ちを大切にしましょう。そしてときにはちょっとした「遊び心」を持つことで、随分気持ちも楽になり、コントロールがしやすくなるのではないかと考えます。つまり「諦めない」「焦らない」「遊び心」の3つのA(トリプルA)です。

3つめのAの「遊び心」は特に大切で、笑顔、ユーモアのことを指し、これが心のゆとりにつながります。

ときどき辛さや不安に負けそうになることもあるかもしれませんが、医学、治療法は日々進歩しています。毎日の生活の中で小さな喜び(小さな目標達成、感謝、おしゃれ、趣味、ペットとのふれあいなど)をできる限りたくさんみつけて、笑顔を忘れないことが、病気のコントロールに大切なのです。

 

血管炎(有村義宏先生)の連載記事

血管炎(ANCA関連血管炎など)をはじめとした膠原病診療の第一人者。腎臓病学も専門としている。厚生労働省難治性血管炎に関する調査研究班の研究代表者や国際会議の会長などをも務め、世界的な活躍を続けている。