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神経内分泌がん(NEC)とは? その治療と化学療法

神経内分泌がん(NEC)とは? その治療と化学療法
市川 靖史 先生

横浜市立大学大学院 医学研究科がん総合医科学主任教授、横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科・乳腺外...

市川 靖史 先生

小林 規俊 先生

公立大学法人 横浜市立大学 がん総合医科学 、横浜市立大学附属病院 臨床腫瘍科 准教授

小林 規俊 先生

高野 祥子 先生

横浜市立大学 放射線科 指導診療医

高野 祥子 先生

神経内分泌腫瘍(しんけいないぶんぴつしゅよう)(NET)は病理学的な診断に基づいてG1・G2・G3という3つのグレードに分類されます。この中でG3のグレードに相当するNEC(神経内分泌がん)は非常に進行が速く悪性度が高いことから、G1やG2のNETとはまったく異なる治療戦略が必要とされます。横浜市立大学附属病院臨床腫瘍科・乳腺外科の小林規俊先生、放射線科の高野祥子先生にNECの最新抗がん剤治療についてお話を伺いました。

(監修:同院臨床腫瘍科・乳腺外科 診療部長/主任教授 市川靖史先生)

分類

NET(G1,、G2):Neuroendocrine tumor

NEC(G3):Neuroendocrine carcinoma神経内分泌がん

WHO(世界保健機構)が2010年に改訂したNETの分類でG3(グレード3)に相当するものがNECです。 NEC(G3)は非常に進行が速く、悪性度が高いため、NETとは区別して「神経内分泌がん」とも呼ばれますが、これもNETの一種です。もともとNET自体もまれな病気ですが、NECはさらに頻度が少なく、NET全体の2~13%といわれています。

分類2

また、2017年から膵臓(すいぞう)の場合だけ、Ki-67指数と核分裂像数が>20であっても病理学・臨床学的にNETに近いものはNETのG3とする分類が加わり、これと区別するためこれまでの悪性度の高いものはNEC G3に改訂されました。

ヨーロッパの神経内分泌腫瘍のガイドラインでは、日本でも行われているシスプラチンあるいはカルボプラチンとエトポシドという抗がん剤がG3(NEC)の治療として推奨されています。さらにイリノテカンやオキサリプラチンといった抗がん剤も記載されています。また同じガイドラインの中に、特にNET G3ではシスプラチンは効果が乏しいかもしれないので、テモゾロミドを基本とした抗がん剤や、もしもソマトスタチン受容体が陽性であるならばPRRTを検討してもよいと記されています。

ガイドライン1

ガイドライン2

このガイドラインは2012年にENETS(European Neuroendocrine Tumor Society:欧州神経内分泌腫瘍学会)が発表したガイドラインです。2016年版では、膵臓と消化管で治療方針が分けられました。膵臓の場合は、NECのG3とNETのG3で分けた治療が必要であると記載されています。

当院の臨床腫瘍科では、NEC(G3)についてもさまざまな抗がん剤を使って治療を行っています。NECは最初に実施した抗がん剤治療だけではすぐに効かなくなってしまうため、次々に別の抗がん剤を使っていかなければなりません。そこで私たちは、先に述べたように欧米の事例を研究した結果、日本では脳腫瘍グリオーマのみに保険適用となっているテモゾロミド(Temozolomide)を二次治療、三次治療として使っていこうという試みを実施しました。

この治療は臨床試験として2013年から行い、病院内の先進医療推進支援機構に申請をすることで薬剤の費用を病院が負担するという形で進めました。そのため、他施設と組んで行う大規模研究という形を取ることはできませんでした。

臨床試験の結果、多くの患者さんはテモゾロミド単剤療法では、2か月程度しか奏効率が得られないという結果に終わりました。しかし、一部のMGMTという酵素が欠損している患者さんでは、腫瘍の明らかな縮小があったという結果も出ました。また患者さん全体に対して継続不能となるような強い副作用は出ませんでした。

テモゾロミド

私たちは当院でのこれまでのデータと、海外での報告などを元に、カペシタビンというもう1つの抗がん剤と併用することで、NET G1、G2、G3やNEC G3に治療効果があるのではないかと考え、2016年より病院内の先進医療推進支援機構を利用して、引き続き臨床試験を実施しています。

このカペシタビン(capecitabine)+テモゾロミド(temozolomide)の併用療法はCAPTEM療法と呼ばれ、海外では50%以上という高いレベルの奏効率を示すデータが出ています。

ENETSの2016年のガイドラインでも、特にNET G3に対して、テモゾロミドを基本とした抗がん剤治療が取り上げられています。

しかしながら、CAPTEM併用療法は保険適用ではなく、2018年現在、国内では自由診療でしか実施できません。テモゾロミドの単独療法と同様に製薬企業主導でのアクションがないために、我々が臨床研究を始めているという状況がこれまで続いていました。

2018年に厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」からの要請があり、現在国内におけCAPTEM併用療法使用の実態調査が実施されています。

CAPTEM併用療法は、患者さんたちのネットワークではすでによく知られている治療で、「日本でも早く受けられるようにしてほしい」という声が厚生労働省に届いたものと思われ、国内での保険適用下での使用が今後可能となることが期待されています。引き続き当院では、臨床試験を継続していく予定です。

市川靖史先生が最新のがん治療情報を分かりやすく発信している2020年度横浜市民講座『がん放射線治療最前線 in KANAGAWA』もぜひご覧ください!

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