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胃食道逆流症の治療―重症心身障害児には手術をする場合もある
胃食道逆流は、食道や胃の筋肉が未発達な赤ちゃんにはよくみられる現象です。通常は成長発達とともに症状が軽快していくため、食事内容や姿勢などを見直すだけで特別な治療をしない場合もあります。ただし、食...
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胃食道逆流症の治療―重症心身障害児には手術をする場合もある

公開日 2016 年 12 月 26 日 | 更新日 2018 年 09 月 21 日

胃食道逆流症の治療―重症心身障害児には手術をする場合もある
内田 広夫 先生

名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学教授

内田 広夫 先生

田井中 貴久 先生

名古屋大学医学部附属病院 小児外科講師

田井中 貴久 先生

胃食道逆流は、食道や胃の筋肉が未発達な赤ちゃんにはよくみられる現象です。通常は成長発達とともに症状が軽快していくため、食事内容や姿勢などを見直すだけで特別な治療をしない場合もあります。ただし、食道裂孔ヘルニアがみられる赤ちゃんや、重症心身障害児の場合は、本人とご家族のQOLを向上させる目的で手術を行います。名古屋大学医学部附属病院では、胃食道逆流症に対して腹腔鏡下で噴門を形成するNissen手術を適応しています。引き続き、名古屋大学医学部附属病院小児外科教授の内田広夫先生と、同院小児外科講師の田井中貴久先生に、胃食道逆流症の治療についてお話しいただきました。

胃食道逆流症の治療

赤ちゃんの場合はすぐに手術をしないこともある

子どもの胃食道逆流症は基本的に経過観察であり、治療をする場合は薬物療法から開始します。

記事1『大人だけではない!赤ちゃんの胃食道逆流症―嘔吐や肺炎を繰り返すときは注意』でご紹介したように、赤ちゃんは逆流を防ぐ噴門や下部食道括約筋等の器官が未発達なため、大人よりも胃食道逆流が起こりやすい体質です。しかし、成長に伴って筋肉が発達するため、次第に逆流は治まっていきます。ですから赤ちゃんの胃食道逆流症の場合は、成長障害や食道裂孔ヘルニアがみられない限りは治療を行わず、体の仕組みが完成するのを待ちます。

この間はできるだけ逆流を防止するために、とろみをつけた特殊なミルクを少量ずつ頻回に与えたり、授乳中や食後30分は赤ちゃんを起こしたままの姿勢にするなど、日常的な面での改善を図ります。これだけで症状が改善する赤ちゃんもいます。

赤ちゃんの胃食道逆流症に対する薬物療法

食事や姿勢の改善を行っても逆流症状が治まらない場合は、胃酸を中和する薬や胃酸の産生を抑制する薬、消化管の動きを改善する薬が処方される場合があります。

名古屋大学病院の場合、漢方薬(六君子湯:りっくんしとう)にH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー:ザンタック®、ガスター®、アシノン®、アルタット®、プロテカジン®など)またはプロトンポンプ阻害薬(PPI:オメプラール®、タケプロン®、パリエット®、ネキシウム®、タケキャブ®など)のどちらかを併用して処方します。

六君子湯は胃食道逆流症にはとても有効な薬で、半数以上の方が薬物療法で治ってしまいます。

漢方薬

このように、胃食道逆流症は手術をせずとも自然に治ることが多いので、赤ちゃんの場合は乳幼児突発性危急事態(ALTE)などよほどのことがない限り手術をすることはありません。

※乳幼児突発性危急事態(ALTE)については記事1『大人だけではない!赤ちゃんの胃食道逆流症―嘔吐や肺炎を繰り返すときは注意』を参照

胃食道逆流症で手術が必要な場合は?

生まれつき食道裂孔ヘルニアの方、重症心身障害児で胃食道逆流症を合併している方は、手術で治療をすることが推奨されます。

食道裂孔ヘルニアで胃食道逆流症の手術が必要な場合

体の胸部と腹部は、横隔膜という筋肉によって分けられています。この横隔膜には、胸部から腹部へ降りてくる食道や動脈・静脈が通過するための穴があり、このうち食道が通過するための穴を食道裂孔(しょくどうれっこう)といいます。

食道裂孔ヘルニアとは、通常横隔膜の下部に位置している胃の一部が食道裂孔を通って胸部に飛び出てしまっている状態です。

いろいろな食道裂孔ヘルニアのイラスト

食道裂孔ヘルニアには、食道と胃のつなぎ目(噴門部)が胸部に出ているタイプ、胃の一部が出ているタイプ、この2種類が混合したタイプがある

赤ちゃんの場合、何らかの形態の異常によって、生まれつき食道裂孔ヘルニアを発症していることがあります。この場合は早めの手術が必要です。

重症心身障害児で胃食道逆流症の手術が必要な場合

私はぜひ、胃食道逆流症を持つ重症心身障害児の方には、小児外科に相談に来ていただきたいと考えています。

重症心身障害児は、筋肉の異常な緊張や脊椎の変形(側彎)、腹圧の上昇、慢性的な呼吸障害、食道裂孔ヘルニアなどにより、高頻度で胃食道逆流症を発症していることが知られています。

多くの場合、重症心身障害児は口からものを食べることができないので、鼻から管を入れて栄養を補給しています。管があるだけでも不快なのですが、胃食道逆流症がある場合はここから肺炎や呼吸困難、チアノーゼを繰り返すため、さらに呼吸障害を悪化させてしまいます。

また、体を動かすことができない重症心身障害児は、逆流による嘔吐によって何度も着替えをしなければなりません。このような状況は、本人と家族の生活の質(QOL)を著しく低下させてしまいます。

こうした場合、私たちは患者さんとご家族のQOL向上の意味を含め、手術治療を積極的に提案します。

もちろん気道の問題や全身状態を考えて手術の適応を考慮しますが、実際に、手術によって患者さんとご家族のQOLは顕著に改善するといわれています。

重症心身障害児の方でたびたび嘔吐や肺炎、呼吸困難を起こし、本人とご家族の生活に支障が出ていると感じたときは、ぜひ小児外科に相談してみてください。

それでは下記より、具体的な手術の方法についてご説明して行きます。

胃食道逆流症の治療「腹腔鏡下噴門形成術(Nissen手術)」

腹腔鏡下噴門形成術は小児に対する食道裂孔ヘルニアの手術法として最も主流な方法です。

腹腔鏡下手術には、Nissen手術とToupet手術の2種類がありますが、小児に対してはNissen手術が多く適応され、名古屋大学病院でもNissen手術を導入しています。

Nissen手術とToupet手術の違いは?なぜ小児にはNissen手術なのか?

腹腔鏡下噴門形成術とは、簡潔に述べると、食道の周囲に胃を巻き付けて新たな逆流防止弁を作るという手術です。

Nissen手術とToupet手術の違いは、胃の巻き付け方にあります。Nissen手術の場合は、食道の全周に胃を巻き付けます。一方Toupet手術では、食道の後方を中心にして約2/3程度の巻き付けにとどめます。巻き付け方が強いNissen手術のほうが、より逆流防止の能力が高いため、私たちはこのNissen手術を適応としています。

一方、Toupet手術は大人の胃食道逆流症の手術に比較的多く用いられる術式です。逆流防止の能力が強ければ強いほど食道が閉まるので、Nissen手術ではものが飲みにくくなったりげっぷがしづらくなる違和感が生じることがあるためです。

「小児期に食道を強く巻き付けて胃と食道の結合部を狭くすると、成長するにしたがって締め付けが強くなり、何らかの障害が起こるのではないか」と不安になる方もいるかと思いますが、そのまま成長するので心配いりません。勿論、カメラや内視鏡も十分に通るため、たとえば腫瘍ができたとしてもそれを見落すことはありません。本手術は本来持つ機能を損なわずに治療できる方法といえるでしょう。

具体的な腹腔鏡下噴門形成術(Nissen手術)の手順

Nissen手術では、まず横隔膜上部にあがっている胃(食道裂孔ヘルニア)を腹部に戻します。続けて、ヘルニアにより緩んで大きくなった裂孔を縫合し、本来の大きさまで縮めます。この後、胃で食道を巻きつけます。Nissen手術の場合は食道全周をすべて胃で覆い、逆流が防止できます。

Nissen手術とToupet手術のイラスト説明

Nissen手術とToupet手術

名古屋大学病院クリニカルインディケータ

名古屋大学病院には、必要な場合に胃食道逆流症に対する腹腔鏡下噴門形成術を実施しています(重症心身障害児や食道裂孔ヘルニアのお子さんが対象です。基本的には、胃食道逆流症は手術をせずとも自然に改善します)

胃食道逆流症に対する手術成績は下記の通りです。

2012年:9件(うち内視鏡手術7件)

2013年:10件(うち内視鏡手術6件)

2014年:12件(うち内視鏡手術12件)

2015年:7件(うち内視鏡手術6件)

(引用元:名古屋大学小児外科)

腹腔鏡下手術の導入で胃食道逆流症の治療は大きく進歩した

現在、名古屋大学病院では小児の胃食道逆流症に対する手術にNissen手術を取り入れていますが、腹腔鏡下手術が導入されてから、胃食道逆流症に対する手術の適応のあり方は大きく変化しました。

Nissen手術のような方法は、開腹手術ではほとんど症例数がなく、侵襲性が低い腹腔鏡下での手術体制が整ってから胃食道逆流症に適応されるようになったのです。Nissen手術は腹腔鏡が導入されたなかで最も適応が増えた手術のひとつではないでしょうか。

特に重症心身障害児の場合、お腹を大きく開けることに抵抗がある親御さんは多いと思いますが、腹腔鏡であれば体への負担も少なくて済みます。そのため、重症心身障害児の場合は、検査で異常がみつかればこの手術を検討します。

重症心身障害児の場合は胃瘻を作るだけでも楽になる

重症心身障害児など、口から食事が食べられない(経管栄養が必要な)患者さんには、術後の栄養管理のため、内視鏡で同時に胃瘻の作成も行うことがあります。胃瘻を作るだけでも鼻管が取れるので、かなり呼吸が楽になります。
 

胃食道逆流症(内田広夫先生、田井中貴久先生)の連載記事

圧倒的な小児内視鏡手術症例経験を持つ小児内視鏡外科のスペシャリスト。「成長・発達が著しい小児に対してこそ侵襲性の低い術式が求められる」と強く訴え、へその部分のみから手術を行う単孔式腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術を開発・導入し数多くの子どもを救ってきた。小児外科の教育制度の改革にも積極的に関与し、小児外科の将来を改善させるために尽力している。

小児医療の拠点である名大病院で、新生児を含む重症・難治性疾患の外科治療に数多く携わる。特に肝胆膵疾患の経験が多く、2015年には東欧から来日した女児の先天性胆道拡張症再手術に成功。胸腔鏡・腹腔鏡を用いた侵襲度の低い内視鏡手術にも高い技量を持つ。将来の小児医療をさらに発展させるべく様々な角度から日々診療と研究を続けている。

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