【インタビュー】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 e5ae5393 cd26 4335 883e 00c6f9ad2105
「膵島移植」の生着率を向上させるには?膵臓移植との1型糖尿病治療効果の違い
膵島移植は膵臓移植と比べ、身体への負担が格段に少なく、入院期間も短期で済むというメリットがあります。では、生着率や1型糖尿病の治療効果には違いがあるのでしょうか。また、どのような患者さんが膵島移...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

「膵島移植」の生着率を向上させるには?膵臓移植との1型糖尿病治療効果の違い

公開日 2017 年 01 月 18 日 | 更新日 2017 年 09 月 14 日

「膵島移植」の生着率を向上させるには?膵臓移植との1型糖尿病治療効果の違い
穴澤 貴行 先生

京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科 助教

穴澤 貴行 先生

膵島移植は膵臓移植と比べ、身体への負担が格段に少なく、入院期間も短期で済むというメリットがあります。では、生着率や1型糖尿病の治療効果には違いがあるのでしょうか。

また、どのような患者さんが膵島移植の適応となるのでしょうか。

京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科助教の穴澤貴行先生に、膵島移植の適応条件や、再生医療を用いるアイデアなどを交えながら、膵島移植の現状とこれからについてお伺いしました。

なぜ膵島移植の一般医療化が進められているのか?膵臓移植の生着率は高くはない

膵臓単独移植の5年生着率は約4割

前項では膵島移植が先進医療の枠組みで行われているとお話しました。では、膵臓移植という1型糖尿病の治療法が確立されているなかで、なぜ膵島移植の一般医療化が目指されているのでしょうか。

この理由は、膵臓を単独で移植した場合、5年生着率は約4~5割程度と他の臓器移植の成績に比べ低い数値に留まっていることにあります。

記事1『「膵島移植」とは?負担の少ない1型糖尿病の新たな治療方法』でもご解説したように、臓器移植とは侵襲が高い治療であり、繰り返し移植手術を受けることは患者さんにとって大きな負担となります。

このような背景があるなかで、膵臓移植と同等の効果が期待される低侵襲手術・膵島移植が出てきたため、現在開発が進められているのです。

膵腎同時移植は今後も生き残っていく治療法だと考えられている

ただし、膵臓と腎臓を同時に移植する膵腎同時移植の5年生着率は約8割と非常によいため、膵臓単独の移植とは区別して考える必要があります。

膵腎同時移植は、膵臓単独移植とは異なり、膵島移植が発展しても生き残っていくでしょう。

尚、膵腎同時移植は腎不全の患者さんを対象に行っており、膵臓単独移植や膵島移植の対象とはやや異なります。膵島移植の適応については、後段をご覧ください。

膵島移植で1型糖尿病を根治できるのか-膵臓移植に比べた治療効果は?

現時点では、膵島移植のみで100人中100人の患者さんを、インスリン離脱状態にまで改善できるとはいえません。離脱できる割合はおおよそ3~4割ほどです。

そのため、アメリカではこの治療の目的を「無自覚性低血糖からの解放」と「安定した血糖コントロール」としており、インスリン療法離脱を確約する治療ではないとしています。

京都大学では、膵島移植の他に膵臓移植も行っています。膵島移植は臨床試験中であり、膵臓移植の症例数もそれほど多くありませんので結論付けることはできませんが、1回の移植での治療効果は膵臓移植のほうが大きいような印象を持っています。

膵島移植が一般医療となることの意義は、患者さんが効果と侵襲の度合いを比べて、ご自身で治療を選択できるようになるという点にあります。

また、膵臓移植の治療成績は近年ではほとんど変化が見られませんが、膵島移植の成績は年々とはいえませんが、約5年ごと程度でみると向上しているため、今後の見通しがよい治療であるといえます。

見通しがよい

膵島移植の適応条件

糖尿病専門医の治療努力によっても血糖コントロールが困難な場合

膵島移植は、膵臓移植にかわる1型糖尿病の新たな治療法として、開発が進められている治療です。

1型糖尿病とは、「ご自身の体内で作られる内因性インスリンが、治療を要するほどに著しく低下している」状態を指し、これが膵島移植の適応条件の大枠になります。ただし、全ての1型糖尿病患者さんが膵島移植を受けられるわけではありません。

膵島移植の適応条件のなかでも最も重要なことは、「糖尿病専門医の治療努力によっても、血糖コントロールが困難である」ということです。

まずは、注射によるインスリン療法などを受けていただき、それでも血糖コントロールが難しい場合にはじめて膵島移植を考えることとなるのです。

ただし、現時点では膵島移植は保険収載されていない先進医療Bという枠のなかで行われているため、更に厳しい適応基準が設けられています。

また、悪性腫瘍や感染症、未処置の網膜症などは、膵島移植の禁忌となります。

ご自身が適応となるかどうかの詳細は、膵島移植を行っている施設(京都大学を含む)を受診し、専門医にお問い合わせください。

膵島移植の生着率の向上を目指して

エドモントンプロトコールにかわる新規免疫抑制プロトコールが登場

世界の医師が研究をすすめている

記事1『「膵島移植」とは?負担の少ない1型糖尿病の新たな治療方法』では、2000年に報告されたエドモントンプロトコールを用いた膵島移植によってインスリン離脱の可能性が示唆され、膵島移植が世界的に広がったと述べました。

しかし、その後もエドモントンプロトコールを用いた膵島移植が多施設で行われたものの、インスリン離脱状態を長期間維持できた割合は低く、期待を十分に満たす結果はみられませんでした。

その後、ミネソタ大学から報告された新規免疫抑制プロトコールを用いた膵島移植が行われ、その成績はエドモントンプロトコールの成績を大きく上回るものとなりました。

日本でもこのプロトコールによる膵島移植の臨床試験を先進医療Bという枠組みで行っている最中であり、これが成功すれば、現時点における膵臓単独移植の成績よりやや劣るか同等の成績がでるものと期待されています。

生着率向上のためには免疫抑制療法の工夫が最重要

生着率を向上させるために、現在進行系で最も注力していることは、新たな薬剤を組み合わせるなどした免疫抑制療法の改良の工夫です。

このほか、日本では膵島を分離する技術や保存法の改良も実施されてきており、研究としてはほぼ完成形に近づいています。

膵島移植の課題-再生医療などの技術を用いドナー細胞を作る

生体膵島移植はドナーにかかる負担があまりに大きい

京都大学では2005年に唯一1例のみ生体膵島移植を行っていますが、今後2例目を行う予定はありません。というのも、膵島を提供するために膵臓を切除することはドナーにかかる負担が大きく、メリットとデメリットを天秤にかけて考えると、現時点では生体ドナーから膵島提供を受けることのベネフィットがリスクより上回るとはいえないからです。

繰り返しお話してきたように、膵島移植は1度の手術のみで完全にインスリン離脱を目指せる治療法ではなく、また、膵臓は肝臓のように再生する臓器ではありません。

そのため、現在はどのような技術や材料を用いてドナーあるいは移植できる膵島を増やしていくかが課題となっています。

iPS細胞やES細胞を用いた膵島の作製が行われているが、実現には年数がかかる

ES細胞

たとえば、iPS細胞やES細胞を用いて作った膵島を移植するという、再生医療領域の技術を使った手法の誕生に期待が集まっています。

この実現にはまだまだ年数がかかるものと思われますが、実際にアメリカではES細胞を用いて作製した膵島細胞を移植する臨床試験も始まっています。

ブタの膵島を用いるには拒絶反応を抑制する工夫が必要

また、私はiPS細胞やES細胞よりも、ブタの膵島を用いるという手法のほうが、より早く臨床の場で応用できるようになると考えています。ブタのインスリンはヒトに対しよく効くため、既に何十年も前からインスリン製剤などに利用されてきました。ブタの膵島を移植するアイデアも以前から提唱されています。

ただし、ブタからヒトなどへの異種移植では、「拒絶反応」が課題となります。

幸いにも、膵島移植は2ccほどの少量の組織を用いるだけで済む治療ですので、工夫を加えれば、十分に拒絶反応を抑えられると考えられています。具体的には、移植する膵島をカプセルに包む、ブタ自体に遺伝子改変を加える、といった案が挙げられています。

今後の展望-膵島移植により膵臓単独移植はなくなっていく可能性もある

穴澤先生

膵島移植を一般医療にするには、現在行われている臨床試験の症例のデータや経験をもとにしつつ、さらに前項で述べた手法を組み合わせるなどして、治療成績を改善させていく必要があります。

膵島移植のメリットと膵臓単独移植のデメリットを考えると、最終的には1型糖尿病の治療法としての膵臓単独移植という選択肢はなくなり、膵島移植に移行していくことが理想といえます。

 

膵島移植(穴澤 貴行先生)の連載記事

低侵襲な細胞組織移植医療として膵島移植を確立するために、日本での膵島移植臨床試験を推進している中心医師の一人。普段は高難度の肝胆膵外科手術、肝移植・膵臓移植も手がける外科医であり、臨床の現場で奮闘しながら、新たな医療の確立に努めている。

関連記事