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インタビュー

リジン尿性蛋白不耐症を疑ったら?検査・治療方法を紹介

リジン尿性蛋白不耐症を疑ったら?検査・治療方法を紹介
高橋 勉 先生

秋田大学医学部附属病院小児科 診療科長 秋田大学大学院医学系研究科医学専攻小児科学分野 教授

高橋 勉 先生

野口 篤子 先生

秋田大学医学部附属病院小児科 外来医長 秋田大学大学院医学系研究科医学専攻小児科学分野 助教

野口 篤子 先生

リジン尿性蛋白不耐症は非常にまれな先天代謝異常症のひとつです。肺、肝臓、腎臓といったさまざまな臓器障害や、体の免疫システムの異常などがみられ、全身に多様な症状がおこりうる疾患ですが、発症に早く気付き適切な治療を行うことで、そうした症状をより軽減させていくことが可能になります。

ではリジン尿性蛋白不耐症はどのような症状が発見のきっかけとなるのでしょうか。記事1に引き続き、秋田大学医学部附属病院 小児科 教授の高橋勉先生、同院 外来医長 助教の野口篤子先生にリジン尿性蛋白不耐症の検査や治療方法について伺いました。

▼リジン尿性蛋白不耐症の概要については記事1をご覧ください。「記事1『リジン尿性蛋白不耐症とは?症状・原因について詳しく解説』

患者さんによって症状の重症度も患者さんによって異なりますので、なかには症状が全然であらわれない方もいます。そのため生後4カ月から肺炎を繰り返して発症する方もいれば、目立った症状は特になく体の成長だけが少し遅く、9~10歳まで病気に気が付かない方もいらっしゃいます。

また非常にまれな疾患であるため、一般の小児科医の先生方で、この疾患の診療に携わったことがある方も少ないと考えられます。日本では先天代謝異常症や内分泌疾患に早期に気づいて治療介入するための取り組みとして、生後5~7日の赤ちゃんを対象に「新生児マススクリーニング」という検査が行われていますが、リジン尿性蛋白不耐症はこのスクリーニングの対象とはなっていません。また医学生が学ぶための教科書にも、リジン尿性蛋白不耐症についての記載はあまり多くないというのが現状です。そうした経緯からも、リジン尿性蛋白不耐症の認知度は他の疾患と比べると低いと考えられます。

リジン尿性蛋白不耐症の患者さんでは「タンパク嫌い」がみられることがあります。これはタンパク質摂取後、血中のアンモニア濃度が上昇し、気持ち悪さや嘔吐などの症状があらわれることから、次第にタンパク質を口にするのを避けるようになる症状です。

タンパク嫌いは「好き嫌いなのではないか」「アレルギーではないか」といった解釈をされてしまうこともあります。しかしリジン尿性蛋白不耐症の患者さんでは嘔吐だけではなく、腹痛やけいれん、意識障害などもみられることがあります。こうした嘔吐以外の症状に気付いていくことが、タンパク嫌いに気付くためのポイントとなります。

リジン尿性蛋白不耐症は症状が多様であるため、患者さんや保護者の方は何の疾患なのかわからず、さまざまな診療科を受診されています。多くは小児科、神経内科といった診療科で診療されているケースが多いですが、なかにはけいれん・てんかん・幻聴といった症状があらわれたことから精神科を受診されていたケースもあります。

気付きにくい症状ではありますが、現在受診されている診療科で治療を続けても症状が改善しない場合や、タンパク嫌いなどの症状がみられる場合には、一度、リジン尿性蛋白不耐症の可能性を考えてみることも必要でしょう。

タンパク嫌いなどから食後の高アンモニア血症を疑われれば、血液検査を行います。

血中アンモニア濃度は肝臓における尿素サイクル機能低下を評価するための指標となります。

また、リジン尿性蛋白不耐症の患者さんでは血清LDH(乳酸脱水素酵素)やフェリチン値が高いという特徴があります。さらには、白血球数が少ない、貧血、血小板減少などの血液所見もみられることがあります。このような血液検査所見をお持ちの場合はリジン尿性蛋白不耐症の可能性が高まりますので、血中・尿中アミノ酸の検査に進んでいただきたいと思います。

アミノ酸の評価においては、血中アミノ酸に加えて尿中のアミノ酸量の分析も行います。リジン尿性蛋白不耐症の患者さんでは尿細管での再吸収が弱いため、体内にあるリジン・アルギニン・オルニチン(二塩基性アミノ酸)が尿にどんどん出てしまう、という特徴があります。尿検査でアミノ酸分析を行うとこれらのアミノ酸がたくさん排泄されていることがわかりますので、リジン尿性蛋白不耐症の診断につながります。

リジン尿性蛋白不耐症は遺伝性の疾患であるため、確定診断を行うためには遺伝子解析が有用です。遺伝子検査を行いSLC7A7という遺伝子の変異が確定されれば、リジン尿性蛋白不耐症の確定診断に至ります。

リジン尿性蛋白不耐症には根治療法が確立していませんが、なるべく正常の発育・発達を促し、将来的にも合併症が少なくなるよう、さまざまな治療が行われています。

まず重要となるのは、血中のアンモニア濃度を上昇させないように「タンパク制限」を行っていくことです。高アンモニア血症になると中枢神経にダメージを与えてしまう可能性が高いため、避けていかなければなりません。一方、むやみに制限しすぎてもアンモニアが上がることもあります。特にお子さんでは成長や発達のためにもきちんとタンパク質をとることは大切です。どれくらいのタンパク質をとるのがよいのか、主治医の先生とも相談しながら決めていくのがよいでしょう。こうして適正なタンパク制限を行うことで中枢神経を守りながら、お子さんの成長を支えていくことが必要です。

また、不足しているアミノ酸を補充していくことも重要になります。薬剤としてL-シトルリンを用いると、体内に吸収されたあと、肝臓でアルギニンに変換されるため、アミノ酸の補充に役立ちます。

ただしL-シトルリンは日本では医薬品として認可されていません。そのため現在は日本先天代謝異常学会の窓口を通じて各医療機関で用意し、患者さんへ配布するというシステムができています。(費用は患者さんにご負担いただいています。)

また、シトルリンはスイカなどの果物にも多く含まれています。特にスイカにはシトルリンが多く含まれているため、患者さんのなかではスイカをよく好んで食べていらっしゃる方もいます。

そのほか、同じようにL-アルギニンも不足したアミノ酸の補充に役立ちます。しかしL-アルギニンは吸収障害のため効果が限られているため、下痢をきたす場合もあるので注意が必要です。

また患者さんによっては免疫系の異常により、膠原病のような症状があらわれている方もいらっしゃいます。そうした方に対しては対症療法としてステロイド剤や免疫抑制剤などの薬物治療を行う場合もあります。

シトルリンによる症状改善作用が明らかになり、患者さんに使われるようになってから、リジン尿性蛋白不耐症の治療は大きく向上してきました。

比較的年長(40・50代〜)のリジン尿性蛋白不耐症患者さんにおいては、幼いときにこうした治療を受けていらっしゃらない方が多く、多くの割合で高アンモニア血症による後遺症を抱えていらっしゃいます。今後はシトルリンによる治療を早期から積極的に行い、高アンモニア血症を防いでいくことが望まれるでしょう。

最も予後に関連してくると考えられる要因は、高アンモニア血症です。乳児期の高アンモニア血症は命に危険を及ぼします。

先ほどもお話したように、高アンモニア血症を防ぐための治療法が向上してきているので、最近では成人の患者さんにおける長期的な健康管理をどうするかということが大きな課題になっています。具体的には、患者さんを長期にフォローアップしていくと、腎障害・尿細管障害や肝臓、肺などの合併症を起こす方がいらっしゃることがわかっています。とくに腎障害の頻度は比較的高く、このような臓器障害をどのように予防できるかが今後の課題です。

一方、幼いころから治療介入されてきた比較的若い世代のリジン尿性蛋白不耐症の方(現在30歳代ぐらいまでの方々)が、今後どのような経過をとるのか(腎障害などが進むのかどうか)はまだ正確にはわかっていまません。今後の評価が望まれるところです。しかしすくなくとも早期治療がご本人にとってマイナスとなることはひとつもありません。ひきつづき早期診断、早期発見が望まれることは確かでしょう。

高橋勉先生

リジン尿性蛋白不耐症は患者数が少ないうえ、多様な症状がみられることから、なかなか発見されにくい疾患です。なかには適切な診療科を受診できていないケースも見受けられます。診断が難しい疾患ではありますが、タンパク嫌いや、血液検査の所見、尿検査の結果など、診断に至るまでの手掛かりはいくつかありますので、リジン尿性蛋白不耐症のことをさらに知っていただくことで、早くから治療を開始できる患者さんを増やしていけたらと思います。

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