2017年8月5日(土)京都大学医学部創立百周年記念施設の芝蘭会館にて、京都外科夏季研究会が開催されました。京都外科夏季研究会では、京都外科交流センターの先生が集まり、各領域の活動内容や情報共有、研究内容の報告を行いました。
記事1では、京都外科夏季研究会の第1部「京都大学外科学講座教室の紹介」、第2部「病院紹介」の内容についてレポートします。
京都大学外科交流センターは、2004年に京都大学の肝胆膵・移植外科、消化管外科、乳腺外科の3つの診療科が中心となり設立されました。2017年現在の会員数は約800人で、関連病院は約70施設です。
外科医を志す医師数は年々減少しており、それに伴い地域医療の崩壊も危惧されています。この状況に対応すべく、京都外科交流センターでは外科医の育成やキャリアパス形成など、以下の3つの理念のもと活動を行なっています。
〈京都大学外科交流センターの理念〉
- 互いに連携し、外科診療・外科学の向上と外科医の育成に努める。
京都大学外科学講座とその関連施設で、外科後期研修医に対する共通の研修プログラムを作成・運用し、若手外科医の養成を支援しています。また、会報誌を発行し、各会員施設の症例数や学術業績などを集計・公開することにより、互いに切磋琢磨し、向上を目指す環境を醸成しています。
- 諸活動を通じて地域医療の振興に寄与する。
若手外科医に対して、関連施設の特徴・診療内容・実績などを紹介する機会を数多く設けて、各自のキャリアパスを形成する支援を行っています。
- 会員の親睦を深め、情報を共有し、相互扶助のもとキャリアパス形成を支援する。
数多くの研究会やセミナーを主催・後援しています。さらに、手術動画を含む発表内容を一部、京都大学外科交流センターのホームページの会員専用サイトで閲覧可能となっており、センター会員としてのメリットを享受できます。
京都外科夏季研究会の第1部「京都大学外科学教室講座紹介」では、各教室の先生からご紹介がありました。
京都大学乳腺外科教室の教授である戸井雅和先生より、乳腺外科教室の人事、教育、研究に関する活動報告がありました。研究については、乳がんやハイリスクのがんに対するゲノム解析、新たなバイオマーカー、光超音波研究、免疫に関する臨床研究などの進捗状況のご報告をされました。
戸井雅和先生
引き続き、京都大学肝胆膵・移植外科学教室の教授である上本伸二先生から、肝胆膵・移植外科学教室の人数や学位取得者数、手術件数、論文発表数、留学先のご報告がありました。学位の取得に関しては例年10名ほどですが、今年度は上半期の時点で7名の学位取得者がおり、今後も増える見込みです。
また、現在の留学先はアメリカ、パリ、ドイツですが、今年中にスペインやイギリスなども追加される予定です。
上本伸二先生
ファーストオーサーとして執筆している論文数
最後に京都大学消化管外科学の坂井義治先生から、消化管外科学の診療科構成、臨床、研究に関するお話がありました。臨床については、それぞれの疾患についての症例数のご報告がありました。胃がんの患者さんは全国的には減少していますが、胃がんで京都大学を受診される患者さんの数は増加傾向です。また、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎は内科治療の進歩により外科治療は激減しており、これは素晴らしいことであるとおっしゃっていました。ロボット手術の治療成績も良好で、2017年の4月にはXi(エックスアイ)という機種が導入されました。
坂井先生が大会長を務める日本内視鏡外科学会「30年の想いを新たなる30年へ 心技一体」のご紹介もありました。30年前には腹腔鏡もロボット手術も想像できなかったが、では今から30年後にはどのようになっているのだろうか、ということを考えていきたいということです。会期は2017年12月7日~9日で、国立京都国際会館にて開催されます。
坂井義治先生
消化器外科教室の構成メンバー
消化器外科教室で行なっている研究内容
坂井先生が大会長をされる第30回日本内視鏡外科学会総会のご案内
京都民医連中央病院の副院長である川島市郎先生から、病院紹介と大腸肛門科・乳腺外科のご紹介がありました。
京都民医連中央病院は、京都市中京区に位置する411床の急性期病院です。大腸肛門外科の平均患者年齢は77歳で認知症を併存する方が多く、全身麻酔手術の際には全症例において高齢者機能評価などのスクリーニングを行い、手術ができる状態であるかを確認しているそうです。乳腺外科では、女性技師だけで手術を行なっている点が特徴で、遺伝子相談も積極的に行なっています。
病院は築30年を迎えており、2019年秋には左京区南太秦に新築移転を行う予定です。
川島市郎先生
京都民医連中央病院外科の特徴。総合外科として地域医療に貢献している
将来的にはより一層、外科医養成に力を入れていきたい
続いて公立甲賀病院の消化器外科主任部長である池田房夫先生からお話がありました。公立甲賀病院は、滋賀県甲賀市にある病床数413床で、ほぼ全診療科をカバーする総合病院です。
4年前に広大な敷地に建設された病院は、病院の周りがなんと1kmもあるそうで、院内の廊下はベッドを横にしても進めるという、とても開放的で綺麗な病院です。池田先生が部長を務める消化器外科では、腹腔鏡や胸腔鏡手術を積極的に行なっていて、年間約600例の手術を実施しています。
池田房夫先生
公立甲賀病院の特徴。近隣に大病院が他にないこともあり、救急患者の受け入れ件数が多い。
外科で掲げているポリシー
公立豊岡病院について、外科部長である内田茂樹先生からご紹介がありました。公立豊岡病院は兵庫県但馬地区の北に位置し、創設は明治4年で公立病院では日本で2番目に古い大変歴史のある病院です。救命救急センターでは22名の救命救急医で診療にあたり、年間約6,000台の救急車を受け入れています。ドクターヘリは年間2,000件飛んでいて、国内トップの件数を誇っています。
豊岡市はコウノトリで有名な地域でもあり、今年は100羽放鳥されました。病院の周りでもコウノトリの姿がよくみられるそうです。
内田茂樹先生
2004年の台風による水害のため、2005年に新築移転を行なった。病院の周りの森には鹿などの動物も現れるそう。
最後に、倉敷中央病院の外科医長である橋田和樹先生から病院のご紹介がありました。倉敷中央病院は、病床数は1,166床、医師数は482人と非常に大規模な病院で、DPC全疾患患者数、救急件数・救急車搬送件数は全国1位となっています。*2017年現在外科では年間2,000例を超える手術をこなし、多くの消化器疾患の手術を腹腔鏡下で行なっています。
後期研修の内容もとても特徴的です。後期研修医は責任感を培うために、全員が主治医として術前外来から手術執刀、術後外来まで一貫して診療を行なっています。学会の交通費や参加費は全額病院から支給されるので、後期研修医も積極的に学会発表などを行なっているそうです。手術件数も多く豊富な執刀経験を積むこともできます。
橋田和樹先生
倉敷中央病院は、岡山県倉敷市の中央部にあり、有名な観光地である美観地区からも程近い場所に立地している。
後期研修医の経験症例数。腹腔鏡だけでなく開腹手術も経験できる。
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