インタビュー

百日咳は大人から子どもに感染する?感染経路とその予防

百日咳は大人から子どもに感染する?感染経路とその予防
堀越 裕歩 先生

WHO Western Pacific Region Office, Field Epidem...

堀越 裕歩 先生

この記事の最終更新は2017年11月08日です。

長期にわたって咳が続く百日咳は、乳幼児が発症すれば、重症化し、入院を要することもある恐ろしい病気です。感染経路が子どもから大人へ変わってきていること、予防を徹底することの大切さについて、前回『子どもの百日咳の症状と検査方法・治療』に引き続き、東京都立小児総合医療センター感染症科医長の堀越裕歩先生にお話を伺いました。

百日咳の感染経路は、保菌者の咳やくしゃみから感染する「飛沫感染」と、保菌者が触れたところから感染する「接触感染」の2通りです。

百日咳菌のウイルスが、保菌者の咳やくしゃみ、会話によって出る飛沫粒子やしぶきに含まれて拡がる。

ドアノブや手すりの間接的、皮膚や粘膜の直接的な接触を介して細菌が拡がる。

注射器

百日咳菌の予防には予防接種が最も有効です。百日咳のワクチンは、破傷風ジフテリアポリオと4種類が一つになっている混合の予防接種です。生後3カ月から接種可能なので、時期がきたらすみやかに予防接種を受けるようにしましょう。

予防接種は生後3ヶ月~1歳までに3〜8週間の間隔で3回、その1〜1.5年後にもう1回と複数回にわたり受ける必要があります。

百日咳菌の毒素への免疫力がつくことで、乳児では百日咳で死亡や重症化を防ぐことができます。

手を洗う

接触感染の場合、最終的にその手で触って口に入れることでウイルスは体内に侵入してしまいます。家に帰ったら手を洗うことを習慣にするとよいでしょう。

  • 百日咳は大人の患者数、大人から子どもへ感染するケースが増加している
  • 乳幼児が感染すると重症化する場合、大人は咳が長引く場合、放置せずに医療機関を受診する

せき込む

子どもの病気という印象の強い百日咳ですが、近年、成人による百日咳の感染が世界的な問題となっています。子どもの頃に接種したワクチンや、百日咳にかかった後の体の免疫は年を重ねるごとに減少してしまうからです。

また、2017年10月現在、日本国内では成人向けの百日咳のワクチンが認可された製品が販売されていないため、事実上、大人が百日咳のワクチンを接種することは不可能なのが現状です。

かつては兄弟間や、集団保育の場で子どもから子どもへ感染することの多かった百日咳ですが、上記の理由により、家庭内で大人から子どもに感染するケースが増えています。

また、大人が百日咳にかかっても症状が比較的軽く、診断が難しいという点が子どもへの二次感染を防ぐことが難しくしています。

乳幼児が百日咳に感染した場合、重症化することが多いということを忘れずに、咳の症状が続く大人は医療機関を早めに受診する・乳幼児との接触をなるべく避けるなどの対策が必要となります。

  • WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤

    日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員

    堀越 裕歩 先生
    • 小児科
    • 原発性免疫不全症・先天性免疫異常症

    小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。

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