百日咳とは百日咳菌という細菌に感染することで、激しくしつこい咳が長期間にわたり出続ける感染症です。生後6ヶ月未満の乳幼児が発症すると重症化することもあるため、ワクチンによる予防を徹底することが大切です。
今回は、東京都立小児総合医療センターの感染症科医長である堀越先生に、子どもの百日咳の症状についてお話を伺いました。
百日咳の初期症状には咳や頭痛・発熱という風邪とよく似た症状がみられます。一般的な風邪であれば1~2週間で治りますが、百日咳の場合、咳がその後も長期間にわたり続きます。その名のとおり、100日に渡る長期間、数カ月間も咳が出続けることもあります。
初期症状がみられる段階で百日咳と判断することは小児科の専門医でも難しく、お子さんが「コンコンコン、ヒュー」という特徴的な呼吸音を伴う咳が出た場合、1週間以上(1歳未満では期間の限定は無し)強い咳が続くようであれば病院を受診しましょう。
初期症状が出始めてからさらに7〜14日で、「コンコンコン、ヒュー」という呼吸音を伴う特徴的な咳が出るようになります。連続する咳で肺から息を吐き切ってしまい、苦しくなり息を吸う音がヒューと聴こえ、笛のような音と表現されることもあります。この咳は比較的長い期間にわたり続きます。また年長児や大人では、普通の咳が長く続くこともあります。
しかし、多くのウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、結核などの感染症、気管支喘息でも長期にわたり咳が続くことがあるため、判別が難しいケースもあります。
百日咳は細菌に感染してもすぐに発症せず、7〜14日の潜伏期間を経てから発症します。
発症してから3週間は菌の排出が強いため、感染力が強いことが知られています。
乳幼児にとって百日咳はリスクの高い病気であり、以下の症状が出ることもあります。
また生後6か月未満の赤ちゃんの場合、ワクチンを接種していないと、死に至ることもあり、治療に入院が必要になることもあります。厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/whooping_cough/index.html)上では、
「百日咳にかかった場合、一般に0.2%(月齢6ヵ月以内の場合は0.6%)のお子さんが亡くなってしまうといわれています。また、肺炎になってしまう お子さんが5%程度(月齢6ヵ月以内の場合は約12%)いるとされており、その他けいれんや脳炎を引き起こしてしまう場合もあります。」
厚生労働省「百日咳」より引用
と、紹介されています。百日咳で重症化や死亡する子供の多くは、ワクチン接種開始前の3か月未満の乳児、ワクチン接種をしていない乳児、小さく生まれた乳児、もしくは慢性の病気をもっている乳児です。
特に乳児の場合、「百日咳かもしれない」と思った時点で、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
お伝えしたとおり、初期症状の段階では百日咳を疑う材料が乏しいため、判断が難しいです。百日咳が進行すると特徴的な症状が見られるようになるので、判断がしやすくなります。具体的な判断材料は下記のとおりです。
これらの症状がみられた場合、病院では次にご紹介する血液検査もしくは、培養や拡散増幅法(LAMP法)によって確定診断をします。
百日咳の検査には大きく血液検査と培養法、拡散増幅法(LAMP法)の3種類があります。
通常2回の採血が行われ、最初の血液検査と2回目の血液検査で百日咳の抗体の結果を比較して診断します。ワクチン接種でも抗体が上昇するので判断に注意が必要です。また百日咳に感染していると白血球のリンパ球数が増加するのも参考になります。
鼻の奥に綿棒をいれて、粘膜から百日咳菌の有無を調べます。しかし、培養が難しい細菌で生えないこともあります。
培養法と同じく鼻の奥に綿棒のようなスワブをいれて採取し、百日咳菌の遺伝子の有無を調べる検査方法です。最も鋭敏な方法とされます。
百日咳の診断には、一般的に血液検査が主流です。しかし、培養法は結果が出るまでに1週間、血液検査だと2~3週間もの時間がかかり、早期の結果が望まれる百日咳にとってはこの点が課題でもあります。そんな中、2016年に新しく拡散増幅法(LAMP法)が登場し、最短数時間で検査結果がわかるようになりました。しかし、多くの病院では院内で検査ができず、
検査会社に外注するため数日かかります。
百日咳の症状が軽症であれば、病院で処方した抗菌薬で治療することができますが、お子さんが生後6か月未満の赤ちゃんの場合や症状が重い場合は、入院が必要になることもあります。また、百日風は細菌が出す毒素で気道が傷つけられるため、抗菌薬を服用し、細菌をやっつけたあとも、気道が回復するまでに時間がかかり、咳が続くことが多いのが特徴です。
感染から時間がたつと、菌がいなくなった後も気管支のダメージにより咳だけが続きますが、このようなケースでは、抗菌薬は効果がないため服用する必要がありません。抗菌薬は生きている百日咳菌にだけ効くからです。
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員
小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。
関連の医療相談が11件あります
咳が辛そうで心配です。
8か月の息子の件です。風邪だと思って様子をみていたら、変な咳をしだしたので私のかかりつけの内科に連れて行きました。喘息様気管支炎とか言われて吸入に数日通い、薬も飲んだり、背中に貼るテープをもらいました。でも全然咳が良くならずに熱も高くなってきて、かすれたような変な咳に代わってきて、席をすると顔が真っ赤になってしまうので、小児科に診てもらいました。検査はできないそうなんですが、百日咳だろうと言われました。薬も新しく出してもらったのですが、夜になると顔を真っ赤にして咳をして、死んじゃいそうです。心配で心配でなりません。心配なので相談してみました。
百日咳とは
子供が春頃から、鼻水などや、風邪などよく繰り返しているのですが、その度に小児科、耳鼻科と通院し、お薬をもらいながら経過見ているのですが、 なかなか咳がすっきりと治りません。 ずっとひどいわけではないのですが、 確かに鼻水が増えた時や、熱が出た後は咳が強くなります。もちろんそれは通常として理解しているのですが、 何ヶ月も弱い咳が基本的にはあり、たまに強弱があるという経過です。 小児科でも元々アレルギー鼻炎気味ではあり、現在は気管支喘息のお薬ももらっています。 ふと、百日咳があたまをよぎったのですが、百日咳だと、ずっと症状が続きますか? 最初何週間か咳が強くなるとみたことあります。 ですが、うちの子供は最初の1週間が強く出て、そのあとは頻度は減ります。 父親も一度風邪をひくと毎回咳が長引き、呼吸器内科もかかっていますが、特に百日咳の指摘もなく検査もないようです。
体重増加と排便について
1ヶ月半前から体重の増えが悪く、600g程しか増えておらず、授乳回数を5回→7回に増やし、毎回足すミルクも50mlから70ml増やした所、排便が2〜3日に1回だったのが、毎日6回排便するようになりました。それでも体重が思ったほど増えませんが、排便回数が多いうちは増えないのか聞きたいです。 あと5日ほど前から便に出血がたまに混じるが、医者によるとそれは問題ないとの診断です。排便が多いと血も出やすい等ありますでしょうか。
排便時、血がつく
便が硬い時、トイレットペーパーに血がつくことがあります。 数日前に1回目拭いてつき、2回目はつかないこともあった為、これは血なのか?と思っていたのですが、本日2日ぶりに排便し、拭いた際に血がついていたので相談させていただきました。 毎回そうなのですが、子供は凄く力んで排便します。昔からそうです。 切れ痔なのかな?と思い本人に聞いても痛くないと言っているのですが、もし病院で診察してもらうなら小児科でいいのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「百日咳(こども)」を登録すると、新着の情報をお知らせします