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胃切除後障害のひとつ、胃切除後胆石とはどんな病気?【講演録③】

胃切除後障害のひとつ、胃切除後胆石とはどんな病気?【講演録③】
中田 浩二 先生

川村病院 外科 、東京慈恵会医科大学 客員教授

中田 浩二 先生

この記事の最終更新は2018年04月08日です。

胃がんなどで胃を切除したことにより引き起こされる胃切除後障害。その概要と詳細について、「胃を切った人 友の会 アルファ・クラブ」でセミナーが開催されました。登壇者は東京慈恵会医科大学の中田浩二先生。胃切除後によくみられる障害とその原因。また、それぞれの障害にどのような対処をするのか。ひとつずつ詳細にお話しいただきました。

 

胆石というと、昔はみつかっただけで手術をしていました。放っておくと、いずれ痛みの発作を起こしたり、バイ菌がついて胆のう炎になったりすると考えられていたからです。将来、歳を取り体力がなくなってから手術をするよりは、みつけた段階で手術した方が安全だということで、症状が現れる前に胆のうを取り除いていたのです。

しかし、最近では考え方が変わってきています。胆石があっても、実際に発作や胆のう炎を起こすものはごく一部であることがわかったため、痛みの発作や胆のう炎を繰り返す場合にのみ手術すればよいとされています。

以前に全国調査が行われましたが。その結果、胃を切って5年以内に胆石ができる確率がだいたい15~20%であることがわかりました。

胃切除後になぜ、胆石になるのかといえば、胆のうに濃い胆汁が長時間停滞するからです。

通常、胆汁は肝臓から分泌され、ご飯を食べていないときに胆のうのなかでどんどん濃縮されていきます。食事を摂ると胆のうを収縮させるコレチストキニン(CCK)というホルモンが分泌され、胆のうが収縮します。その結果、濃厚な胆汁が腸に流れこんで食べ物と混ざり合い、消化吸収がスムーズに行われるのです。

胆のうの収縮にはCCKと迷走神経が関与していますが、胃を手術すると迷走神経を切ってしまうので、胆のうの収縮力が弱まってしまいます。また、食後に胆のうが収縮する時間も短くなり、そうすると胆のうが大きく膨らんで、そこに濃厚な胆汁が長時間停滞することにより固まって、胆石ができるといわれています。

また、胆のうの胆汁が十二指腸に分泌される出口になっているところにはオッジ括約筋という筋肉があります。通常は胆のうが収縮するとオッジ括約筋が緩んでスムーズに胆汁が排出されるのですが、胃を手術すると、ここが緩まなくなることがわかってきました。胆のうは一生懸命収縮し、胆汁を出そうとするのですが、出口にあるオッジ括約筋が緩まないために胆汁が鬱滞して、胆管も太くなってしまいます。これも胆石ができやすい原因といわれています。

ですが、先にお伝えしたように胆石ができただけでは手術はしません。あくまで症状が出てから手術を検討すればよいでしょう。胆石ができてもあまり深刻に考えないことが大切です。

この記事は胃を切った人 友の会 アルファ・クラブ主催の講演内容をベースに作成しています

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