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胃切除後障害のひとつ、ダンピング症状とは?【講演録④】

胃切除後障害のひとつ、ダンピング症状とは?【講演録④】
中田 浩二 先生

東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 教授 、慈恵医大第三病院 中央検査部 診療部長

中田 浩二 先生

胃がんなどで胃を切除したことにより引き起こされる胃切除後障害。その概要と詳細について、「胃を切った人 友の会 アルファ・クラブ」でセミナーが開催されました。登壇者は東京慈恵会医科大学の中田浩二先生。胃切除後によくみられる障害とその原因。また、それぞれの障害にどのような対処をするのか。ひとつずつ詳細にお話しいただきました。

ダンプカーが荷台をあげると中身がどさっと流れ落ちていきますが、胃の手術後には、これと同じように食べた物が腸に一気に入ってきます。これが原因で起きるさまざまな症状をまとめてダンピング症状と呼んでいます。ダンピング症状は消化器の症状だけにとどまらず、表に示すような全身の症状がみられます。

ダンピング症状には、食事をとって30分~1時間以内に起こる早期ダンピング症状と、だいたい1時間半~3時間後に起こる後期ダンピング症状があります。

 

全身症状:眠気、全身倦怠感、冷汗、動悸、全身熱感、めまい、息苦しさ、全身脱力感、頭痛・頭重、顔面蒼白、しびれ、顔面紅潮、失神など

腹部症状:腹部膨満、腹鳴、腹部不快感、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐など。
(*の項目は牛乳を除く)

全身症状:空腹感、全身倦怠感、冷汗、無気力、動悸、全身脱力感、めまい、手指のふるえ、呼吸促迫、頭痛、失神発作など。

食事と一緒に水分をたくさん摂ると、食べた物がより短い時間で胃から小腸に移動します。これがダンピング症状を引き起こす一因なので、ダンピングの症状がある方は、食事中の水分摂取を減らすよう指導します。

小腸に大量の濃い食べ物が一度に入ってくると、浸透圧(同じ濃度になろうと水が移動する力)がはたらいて血液中の水分が腸内に移動します。これによって、体を回っている血液量が減り、いわゆるショックに近い状態になってしまうことで、眠気、全身倦怠感、冷汗、動悸などの全身症状が起こります。

そのほか、腸に食べ物が一気に入ることによって、腸が広がって神経反射のような現象が生じたり、これにより腸の動きが活発化して、腹鳴、腹痛、下痢などのお腹の症状が起きたりします。

ダンピング症状は、基本的には胃から腸に食べ物が急速に流れ込むのを、従来の胃排出のスピードに戻せば改善するはずです。ですから、多くの場合は食べ方を工夫することでよくなります。

胃を切除すると、「食べること」にはある程度の妥協が求められます。多くの方は、食事の摂り方とそのときのダンピング症状の辛さとの体験を積み重ねるうちに、自ずと食べ方を変えて順応してゆき、1~2年くらいで改善することが多いです。

ダンピング症状を避けるポイントは炭水化物の摂り過ぎを控え、また、食事中の水分摂取量を減らすことです。

ダンピング症状を抑えるためには、胃以外の内臓にいく神経(=迷走神経の腹腔枝)を残すのが有効だと考えられています。ですから、なるべく迷走神経の腹腔枝を残すようにします。

そのほか、食べた物が胃を素通りしてしまわないように胃の出口の幽門(=食べた物の排出の速さを調節している部分)を温存したり、胃を全部取ってしまった後に胃の代わりに食べ物を貯める袋を小腸でつくったり(代用胃といいます)する手術法の工夫も行われています。

後期ダンピング症状は、いわゆる低血糖症状といえます。

食後、炭水化物が腸から一気に吸収されると、血糖値が急激に上がってしまいます。すると、血糖値を一定に保とうと、膵臓から過剰にインスリン(血糖値を下げるホルモン)が分泌されてしまいます。

体に入った糖の量に対してインスリンが出すぎてしまうと、逆に血糖値が下がりすぎてしまい、さまざまな低血糖症状が現れるのです。

対策としては、甘いお菓子などの糖分や炭水化物の量を減らしたり、最近の糖尿病の食事療法で行われているように、炭水化物を食事の最後に食べるようにするのが望ましいです。これにより血糖値の上昇を緩やかにできます。

後期ダンピング症状には、基本的には食事の内容や摂り方の工夫で対応しますが、状況によっては糖尿病の治療で使われている糖の吸収を緩やかにする薬を使用することもあります。

この記事は胃を切った人 友の会 アルファ・クラブ主催の講演内容をベースに作成しています

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