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放射線治療の最先端 第26回日本乳癌学会学術総会レポート

放射線治療の最先端 第26回日本乳癌学会学術総会レポート
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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この記事の最終更新は2018年06月25日です。

去る2018年5月16日(水)〜18日(金)、国立京都国際会館(京都市左京区)にて第26回日本乳癌学会学術総会が開催されました。本学会では、連日プレスリリースが実施され、注目演題の概要や乳がん領域におけるトピックが発表されました。座長は大会長である戸井雅和先生(京都大学大学院医学研究科外科学講座 乳腺外科学教授)が務められました。

本記事では、滋賀県立総合病院放射線治療科の山内智香子先生の発表をお伝えいたします。山内先生は、2018年に改定された乳癌診療ガイドラインのポイントとともに、放射線治療の現状と問題点などについてお話しをされました。

新しい乳癌診療ガイドラインでは、寡分割照射(かぶんかつしょうしゃ)が通常の分割照射と同等の治療として推奨する内容のCQ(クリニカルクエスチョン)が出ています。通常の分割照射は、50Gyの線量を25回に分けて行うことが一般的です。一方、寡分割照射は40Gyを15回に分けるなど、1回の線量を増やして治療回数と総線量を減らす方法で行います。

寡分割照射は、通常の分割照射と同等の効果が得られるうえに、患者さんの治療にかかる時間やコストを軽減するため、今後標準治療として確立してくと考えられます。

しかし、多くの生命保険会社では「放射線治療を行った場合の保険金の給付は総線量が50Gy以上」という規定があり、これは大きな問題であると考えています。

これまで日本放射線腫瘍学会から生命保険協会などに対して線量規定の撤廃のお願いをしてきましたが、2018年現在線量規定は残ったままです。医学の進歩とともにさまざまな線量の放射線治療が行えるようになってきているため、線量規定が一刻も早く撤廃されることを強く望んでいます。

また、乳癌診療ガイドラインでは、腋窩リンパ節転移4個以上陽性の患者さんに対するPMRT(乳房全切除術後の放射線治療)は標準治療とするとしています。また、メタ解析の結果でもPMRTを行うことで局所再発率や乳がん死の確率を低下させるという結果も出ています。

しかし、NCD(ナショナルクリニカルデータベース)を用いてPMRT施行率を調査すると、腋窩リンパ節転移4個以上陽性の3300例の症例に対して、56.5%の患者さんにしかPMRTが行われていないことがわかりました。また、がん診療拠点病院の施設認定の種類などによっても病院ごとにPMRTの施行率にばらつきがみられているという問題点が挙げられました。

これらの結果から、PMRTの恩恵が受けられていない患者さんが多くいることが予測できます。

これまでは乳房再建術と放射線療法の併用は避けられてきました。しかし、再建手術と術後マネージメントの進歩により、再建乳房に対する照射の安全性は増してきています。

このような現状を踏まえて、乳癌診療ガイドラインでは、乳房再建術後の放射線療法について以下のような推奨文を出しています。

これらの治療を併用した際の合併症を調査したメタ解析によると、自家組織を使った乳房再建後の放射線治療では、合併症の発症率は1.11倍と低い結果が示されています。また、インプラントでは9.32倍、エキスパンダー挿入中では23.41倍の確率で合併症が起こっています。

放射線治療による有害事象のひとつとして、左側乳がんの放射線治療における虚血性心疾患が挙げられます。しかし、放射線治療技術の進歩により虚血性心疾患の発症は減少傾向にあります。さらに近年、心臓への照射を避けるために「深吸気呼吸停止下全乳房照射」という深呼吸をして息を止める方法で放射線治療を行う病院も増えてきています。そのほか、放射線治療の有害事象を低減させる取り組みは進んできています。

放射線治療の技術進歩はめざましく、治療法のエビデンスやトレンドは日々変化しています。そのような時代のなかで、放射線治療も乳がん治療の柱としてさらなる躍進を目指していくべきであると考えています。

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