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アジアの臨床研究、臨床試験の最前線 第26回日本乳癌学会学術総会レポート

アジアの臨床研究、臨床試験の最前線 第26回日本乳癌学会学術総会レポート
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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この記事の最終更新は2018年06月25日です。

去る2018年5月16日(水)〜18日(金)、国立京都国際会館(京都市左京区)にて第26回日本乳癌学会学術総会が開催されました。本学会では、連日プレスリリースが実施され、注目演題の概要や乳がん領域におけるトピックが発表されました。座長は佐治重衡先生(福島県立医科大学 腫瘍内科学講座)が務められました。本記事では、西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長である、虎の門病院 臨床腫瘍科の高野利実先生の発表をお伝えいたします。

乳がん診療におけるさまざまなCQ(クリニカルクエスチョン)を解決するためには、アジア全体で臨床試験に取り組む必要があります。

しかし、日本の臨床試験は欧米に比べて遅れをとっているのが現状です。その理由のひとつとして、日本にはレベルの高い病院が多くあるにもかかわらず、各病院の規模が小さく大規模臨床研究が実施しにくいという現状があります。そして、そもそも日本には臨床試験の文化が根付いていないことも理由として挙げられます。

さらに、日本の医師主導臨床試験は、すでに承認されている薬剤を適応の範囲内でしか使用できないため、魅力的な臨床試験ができなかったことも大きな理由といえます。

しかし、この臨床試験を取り巻く現状に、少しずつ変化がみられ始めています。たとえば、医師主導臨床試験において未承認薬や適応外の薬剤が制度上使用できるようになりました。

また、2018年4月には臨床研究法が施行されています。

日本がこの時代の流れに対応して臨床試験のレベルを上げるためには、まずはインフラ構築(質の高い臨床試験の実施体制や新薬開発の体制など)を急速に行い、さらに一般国民に対しても臨床試験の文化を根付かせる必要があります。そして、臨床試験を主導できる人材の育成も重要です。WJOGでは、統計家や各診療科医師などを集め、年に1回2泊3日の合宿を行い臨床試験の研修を行っています。

 

グローバル試験とは、現状アメリカとヨーロッパが主導で行う臨床試験を指しています。私たちアジアなどは「Rest of the world(その他の地域)」よばれ、グローバル試験の主導権を握ることはありません。

しかし、アジアもアメリカやヨーロッパと肩を並べて、臨床試験を行っていくべきであると考えています。なぜなら、世界人口の約55%がアジア人であり、これが臨床試験におけるマイノリティであるわけではないからです。さらに、アジア人の民族差やアジア人に多いがん胃がんや肝臓がんなど)も臨床試験におけるアドバンテージになると考えています。

また、DS-8201やニボルマブなどの有望な新薬が日本から多く生まれています。しかし、これらの開発の主導権は最終的に欧米に取られてしまっている現状があります。そのため、アジアが主導となり新薬の開発を進めていく必要があります。

DS-8201は第一三共株式会社が開発した抗体薬物複合体で、現在世界中を巻き込んだ臨床試験が進んでいて、すでに第II相試験で有効性が示されています。

また、ニボルマブも小野薬品工業株式会社が開発した免疫チェックポイント阻害剤です。ニボルマブ単剤での乳がんに対する効果は限定的ではありますが、化学療法を併用した臨床試験「I-SPY2」では良好な結果が示されています。さらに、ニボルマブはトリプルネガティブの乳がんに使用されてきましたが、ホルモン受容体陽性の乳がんにも効果がもたらされることが臨床試験でわかっています。

このように、日本をはじめとしたアジアから生まれた新薬の臨床試験をアジア主導で進めていく体制を整えていくべきであると考えています。

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