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血清中 mRNAを用いた乳癌診療・治療効果予測技術の開発 第26回日本乳癌学会学術総会レポート

血清中 mRNAを用いた乳癌診療・治療効果予測技術の開発 第26回日本乳癌学会学術総会レポート
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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この記事の最終更新は2018年06月25日です。

去る2018年5月16日(水)〜18日(金)、国立京都国際会館(京都市左京区)にて第26回日本乳癌学会学術総会が開催されました。本学会では、連日プレスリリースが実施され、注目演題の概要や乳がん領域におけるトピックが発表されました。座長は大会長である戸井雅和先生(京都大学大学院医学研究科外科学講座 乳腺外科学教授)が務められました。本記事では、国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科の下村昭彦先生の発表をお伝えいたします。

近年、リキッドバイオプシーとよばれる体液を使ったがん診断が盛んに行われるようになってきました。私たちの研究グループでは、そのうちmiRNA(マイクロRNA)を使ったリキッドバイオプシーについて研究を行っています。

miRNAは哺乳類の約2%を占めている遺伝子で、ヒトでは2588個のmiRNAが同定されています。そして、特定のメッセンジャーRNA(遺伝子の翻訳に関わるRNA)を制御することで発現を調整し、がんの発生や進展に関わっていることがわかっています。

これらを踏まえて、私たちの研究グループではmiRNAを用いて乳がんの診断や治療予測ができないかどうか検証を行いました。また、それぞれの検証では共通して、300μℓの血清(血液換算約1cc)から高感度DNAチップを用いて網羅的にmiRNAの発現量を測定する方法を用いています。

まず、miRNAを使用して乳がんそのものの診断が可能かどうか検証を行いました。ここでは、1,280例の乳がん患者さんの検体を用いています。結果は、同定された5つのmiRNAを組み合わせることで、感度97%、特異度83%の確率で乳がんと非がんを判別することができました。

また、腋窩リンパ節転移の同定についても検証を行っています。結果としては4つのmiRNAと3つの臨床学的因子により作成した式を用いることで、乳がんの腋窩リンパ節転移の予測に有用であり、将来的には術式の決定にも使用できるのではないかと考えています。

また、トリプルネガティブ乳がんに多い脳転移もmiRNAで予測できないかと考えました。脳転移を有する51名、脳転移がない28名の患者さんで検討した結果、脳転移に関わることが予想される2つのmiRNAが同定され、脳転移が予測できることが示唆されました。

続いて、pCR(病理学的完全奏功)の同定についても検証を行いました。

術前化学療法を行っている91名の検体を用いたところ、pCRと関与していると考えられる2つのmiRNAが検出されました。また、これらのmiRNAはミトコンドリアにあるBCL2という遺伝子をコードするメッセンジャーRNAを制御する機能を持っていることもわかっています。BCL2が発現しているとpCRが得られにくいということが以前より報告されていることからも、これら2つのmiRNAを用いることでpCRの予測が可能であると考えます。

また、転移性乳がんに対するエリブリンの効果が得られない患者さんを同定し、より最適な薬の使い方ができないかという検証も行いました。

147名の解析を行った結果、エリブリン自体の効果を予測できるmiRNAは同定できませんでしたが、エリブリン投与後の予後を予測する8つのmiRNAが特定できました。

これらの研究から、乳がんの診療や治療効果の予測にmiRNAが有用である可能性が示唆されました。また、国立がん研究センターではmiRNAを用いて13種類のがんを血液で診断するというマーカーを作成する前向き臨床試験を行っています。今年度中に、乳がんと大腸がんでのキット化を目指しています。

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