院長インタビュー

「身近で信頼できる大学病院として」滋賀医科大学医学部附属病院の理念

「身近で信頼できる大学病院として」滋賀医科大学医学部附属病院の理念
松末 吉隆 先生

滋賀医科大学 前副学長・理事(医療等担当)、滋賀医科大学医学部附属病院 前病院長

松末 吉隆 先生

この記事の最終更新は2017年04月25日です。

滋賀県大津市に位置する滋賀医科大学医学部附属病院は、国が「一県一医大」を進めた時代、滋賀県の中核を担う医療機関として1978年10月に創設されました。同院は、地域に根ざした良質な医療を提供すると同時に、滋賀県唯一の大学病院として、医師や看護師をはじめとする医療人の育成・輩出を最大のミッションに掲げています。そんな同院の理念や特徴について、病院長の松末吉隆(まつすえ よしたか)先生にお話を伺いました。

※この記事は、2017年4月時点の事実に基づいて記載されています。現在とは状況が異なる場合があります。

滋賀医科大学医学部附属病院は、612の病床・31の診療科を備え、高品質な医療を提供しています。当院の医療圏は大津と湖南(こなん)にまたがり、広域から幅広い患者さんを受け入れています。患者さんのおよそ3割は大津から、残りの7割は湖南・甲賀・東近江を含めた近隣の広いエリアから訪れます。

当院には幅広い診療科が揃い数多くの疾患をカバーしていますが、なかでも心臓血管外科は豊富な症例数・良好な治療成績が特徴で、県外からの患者さんも来院されます。

滋賀医科大学医学部附属病院の外観 画像提供:滋賀医科大学医学部附属病院

滋賀医科大学医学部附属病院は、救急医療において「No Refusal Policy:断らない医療」を理念とし、県内・県外を問わず数多くの患者さんを受け入れています。たとえば大動脈解離や心臓破裂など緊急性の高いケースについて、地域内の病院と協力し、ドクターヘリ等を用いて迅速に患者さんを搬送して治療にあたります。

滋賀医科大学医学部附属病院は、母体胎児集中治療室(MFICU)を備え、総合周産期母子医療センターとして周産期医療にも力を入れています。滋賀県内で母体胎児集中治療室(MFICU)を有する病院は、大津赤十字病院と当院の2つに限られており、一般病院では対応困難なハイリスクなケース(合併症妊娠多胎妊娠切迫早産前期破水妊娠高血圧症候群など)に対して24時間体制の集中的な管理・治療を行います。

滋賀医科大学医学部附属病院は、厚生労働省により滋賀県の地域がん診療連携拠点病院(専門的ながん医療を提供するとともに、圏域内の医療機関に対する診療支援・医療従事者への研修などを行う拠点病院)および滋賀県からがん診療高度中核拠点病院に指定されています。

難治性のがんに対する治療、たとえば前立腺がんに対するロボット(ダ・ヴィンチ)支援手術や、最近では妊孕性(にんようせい)温存療法なども行います。妊孕性温存療法とは、妊娠を望むがん患者さんに対して治療前に卵巣を保存する方法です。国内でも妊孕性温存療法を行う医療機関はまだ少ないため、県外からも患者さんが訪れます。

滋賀医科大学医学部附属病院は、滋賀県の難病医療拠点病院に指定され、地域における難病治療の中核を担います。炎症性腸疾患(IBD)センターを設置し、消化器内科・栄養治療部・消化器外科が連携し、潰瘍性大腸炎クローン病などの炎症性腸疾患に対して集学的な治療を行っています。また数多く存在する神経難病(ALS筋萎縮性側索硬化症パーキンソン病など)に対しては、滋賀医科大学医学部で臨床研究(患者さんの診療データを活用した実用的な研究)を始め、治療に役立てています。

滋賀医科大学医学部附属病院は、滋賀県唯一の大学病院として医療人(医師・看護師)の育成と輩出を最大のミッションとしています。よい医療人を育成・輩出することは、よい医療を提供し続けるために非常に大切です。本学は地域医療教育研究拠点を置き、県内の東近江医療センター、JCHO滋賀病院とそれぞれ協定を結び、総合診療医の育成に力を入れています。

滋賀県医科大学医学部には現在1学年に110名余りの医学生が在籍し、例年卒業生の半数弱が当学に残りそれぞれの専門分野で活躍しています。また当院は京都・大阪など都市部からもアクセスが良好なため、多様なエリアからスタッフが集まります。

当院は「全人的医療」を目指しています。全人的医療とは、特定の疾患や部位に限定せず、患者さんの精神的・社会的側面を考慮しながら、個々人に応じて総合的に行う医療をさします。病院といえども我々は患者さんの治療をするだけでなく、患者さんを取り巻くさまざまな事象を考慮し、患者さんと同じ立場でともに病気に向き合うことで、最善の選択を導くことをポリシーとしています。

滋賀医科大学医学部における教育では、単に知識・技術を伝えるだけでなく、全人的医療の視点を持った医療人の育成を目指します。たとえば、実習中に地域の診療所や患者さんの自宅をまわる「里親制度」を導入し、患者さんのバックグラウンドを知り得る機会を設けています。この取り組みを通して、学生は実地的に全人的医療の概念を身につけ、患者さんにとってよりよい医療を提供できる医療人へと成長していきます。

国の方針に基づき、今後ますます病院は機能分化していくでしょう。そのような流れのなかで我々は、大学病院を核とした地域連携組織を構築したいと考えています。具体的には、各種情報の見える化を行い、大学病院と地域の病院がお互いに紹介するべき患者さんについて認識を共有し実行に移すことで、スムーズに機能分化を進めていきます。

滋賀県、特に南部はまだ人口が増えている地域ですから、当院が率先して、地域の方々が安心して暮らせる基盤をつくる使命があると感じています。

松末吉隆(まつすえ よしたか)先生

滋賀医科大学医学部附属病院は、滋賀県唯一の大学病院として、これからも良質な医療を提供し続けます。たとえ治療の困難な症例であっても私たちが最後の砦となり、行き場のない患者さんをできる限り減らすことが使命だと考えます。

患者さんにとって身近にあり、いつでも相談できる病院として信頼していただけるよう、私たちはこれからも患者さんの診療と医療人の育成に力を注ぎます。

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