院長インタビュー

北海道札幌市内における医療の中心に!手稲渓仁会病院の取り組み

北海道札幌市内における医療の中心に!手稲渓仁会病院の取り組み
成田 吉明 先生

渓仁会グループ 最高責任者、医療法人渓仁会 理事長

成田 吉明 先生

この記事の最終更新は2017年04月25日です。

急性期医療および高度専門医療を担う総合病院として、札幌市や周辺地域の医療を支える手稲渓仁会病院は、2017年12月に創立30周年を迎えます。

院長の成田吉明先生に、救急医療をはじめとする手稲渓仁会病院が持つ特徴や取り組み、将来像について伺いました。

※この記事は、2017年4月の取材に基づいて記載されています。現在とは状況が異なる場合があります。

手稲渓仁会病院

「手稲渓仁会病院は救急車を常に受け入れているイメージがある」とよく言われます。

手稲渓仁会病院では急性期医療と専門医療を二本柱にして、よりよい医療の追求と、札幌市を中心とした周辺地域への医療の提供を目標にしています。

手稲渓仁会病院の救命救急センターは2005年に19床でスタートしました。2015年10月には30床に増床したことから、現在ではより多くの救急車の応需(受け入れ)が可能になりました。現に2016年12月の救急車応需件数は当院過去最高の547件を記録し、さらに2016年度では5,000台以上の救急車を受け入れできるだろうと予測しています。

手稲渓仁会病院における救急車応需件数の飛躍的な増加は、救命救急センターが増床したことも大きいですが、ここで働く医師の存在も欠かせません。

夜間の救急外来や病棟の診療は、当直の医師が1名ですべて行なう病院が多いなか、手稲渓仁会病院の救命救急センターでは、夜間でも救急専門の医師2名が常駐しています。他にも消化器内科、循環器内科、脳神経外科、外科、総合内科、ICU(集中治療室)などの医師や初期研修医・後期研修医などを合わせれば25名ほどが夜間も常駐しているため、救急専門医の手が回らない・手に負えないといった状態でも、常に病院全体でバックアップ可能な体制が整っています。

 

手稲渓仁会病院のヘリ

札幌市内及び北海道全域の救急医療を支えるため、手稲渓仁会病院ではドクターヘリ運航も行っています。ドクターヘリの導入は北海道初、民間病院では全国2番目、公的病院を含めると全国で9番目の取り組みです。

現在北海道内では4機が運航されていますが、手稲渓仁会病院における2015年度のドクターヘリ出動要請件数は711件で、そのうち出動は393件、未出動(離陸前キャンセルを含む)は318件でした。

このように、当院では救急医療の実践とヘリコプター運航双方のノウハウが蓄積していることから、全国初の取り組みとして現在注目を集めている「メディカルウイング」(医療優先固定翼機)の実証運航にも協力しています。

オール北海道体制で行われている、急性期医療・高度専門医療問題解消のためのメディカルウイング運航実現に対し、手稲渓仁会病院では、医療・運航面での協力を積極的に続けていきたいと考えています。

 

 

成田吉明先生

 

手稲渓仁会病院に求められる役割は、急性期医療が必要な患者さんを札幌市や周辺地域にとどまらず北海道全域から受け入れ、治療することと考えています。しかし病院で受け入れ可能な患者さんの数には限りがあるため、近隣の医療機関との連携は非常に重要です。

手稲渓仁会病院と周辺地域の医療機関による取り組みは、札幌市および北海道における地域医療構想のモデルケースとして、たびたび取り上げていただいています。

札幌市内や近隣の医療機関は、競合相手になることもあります。しかし、それぞれの病院に求められる機能が異なることから、「慢性的な疾患や急性期以外の治療は近隣の医療機関で。救急医療や専門医療は手稲渓仁会病院で。」という、機能分担の認識や関係が構築されることで、必要な方に必要な医療が効率的・効果的に提供できていると考えます。

 

 

成田吉明先生

 

札幌市および北海道における救急医療だけでなく、手稲渓仁会病院では高度専門医療も積極的に行っています。

例えば「ダヴィンチ」と呼ばれる手術支援ロボットがありますが、これを使用することでより正確かつ細やかな動きが可能なため、手術による傷を少なくできる以外に、神経等を傷つけるリスクも低く抑えられます。現在では前立腺がん腎臓がんの部分切除をする手術のみで健康保険適用となっていますが、実はこのダヴィンチを北海道で初めて導入したのも当院です。

手稲渓仁会病院でダヴィンチを導入したのは、前立腺がん手術が健康保険適用になるよりも前だったことから、当初は導入に対するリスクが院内で問題視されていました。しかし道内における高度専門医療のレベル向上と当院の認知度を高めることを考え、当時外科部長だった私は産婦人科や泌尿器科の先生とダヴィンチの有用性について前院長を含む上層部に説明を重ね、最終的に理解を得ることができました。

現在当院では、保険適用の前立腺がんや腎がん以外に、膀胱がん肺がん縦隔腫瘍胃がん大腸がん、子宮体部腫瘍、子宮頸がんなどにも自由診療で患者さんのニーズに応えています。

もともと私は臨床一筋の医師だったため、目の前の患者さんに対して常にベストを尽くしたいと考えています。今回ご紹介したダヴィンチ導入と現在の取り組みは一例に過ぎませんが、この手術のように患者さんにとってより治療成績の高い選択肢をご提案すると同時に、当院に勤務する外科医師にも多く手術を経験してもらうことで、将来の「よりよい医療」の提供に繋げたいと考えています。

 

 

アメリカ国旗

 

手稲渓仁会病院は、札幌市や北海道内の急性期医療を担う病院として大きな役割を果たすと同時に初期研修医の教育に力を入れている病院としても認知していただいています。

医師国家試験に合格すると、初期研修医と呼ばれる研修期間を2年間、その後専門領域を選択して研修を受ける後期研修医を3〜5年程度経験して、医師としてのスキルを磨きます。

これまで当院では、初期研修医の方により多くの経験を積んでいただきたいと考えていたことから、初期臨床研修の期間を3年間と定めた独自の研修制度を導入していました。近年関連する諸制度が変更になったことを受け研修期間を短縮し、2017年度からは他の医療機関と同様2年間の研修期間を導入していますが、初期研修期間が短くなっても当院で学ぶことの魅力は損なわれていません。

手稲渓仁会病院では、初代院長の時代よりアメリカ・ピッツバーグ大学と連携していることから、毎年ピッツバーグ大学もしくは大学から推薦を受けた医師が派遣されています。そのため当院では、日本国内にいながら英語によるカンファレンス(検討会)や、身体所見に関するレクチャーを受けることが可能です。

道外出身の研修医の比率は上昇傾向にあり、2017年度入職予定者のうち8割程度は道外出身者で、出身地もほぼ全国に分散しています。

若い医師が全国から集まる理由は、急性期医療と救急医療を実践しながら学べることに加え、北米式の医療を学べる環境が整っているためと考えます。そのため、将来海外で医療を学ぶことを希望している医学生が、「初期研修医としての2年間をより充実した環境で学びたい」と考え、当院を目指しているのではないでしょうか。

また2017年4月には米国ピッツバーグ大学内科に加え、新たに米国ケースウエスタンリザーブ大学内科と調印予定のため、将来海外で医療を勉強したいと考えている初期研修医にとって、当院を初期臨床研修の場に選ぶメリットはさらに拡大すると考えています。

 

 

救急車

 

手稲渓仁会病院では、急性期医療と専門医療を二本柱として札幌市を中心とした北海道の医療を支えると同時に、研修制度を充実させることで医療の未来を担う初期研修医に対し実践と学びの場を提供し続けてきました。

これから先は地域医療を支える病院として、「手稲渓仁会病院が考える断らない医療」についてご紹介します。

当院の救急車応需件数は過去最高を更新しました。しかしそれ以上に救急車の需要が増大したため、実は毎月100台程度の救急車に対して不応需(受け入れできない)という返答をしています。

札幌市周辺の高度急性期医療を支える病院として、より多くの患者さんを効率的に受け入れ治療をしていくためには、救急車応需状況の検証と病床数の増加が大きなカギになると考えました。

救急車を不応需した際は状況や断った理由について記録し、報告と検証を義務化しました。当時の状況を救命救急センター長、看護部長、経営管理部長、MSW(医療ソーシャルワーカー)、事務スタッフと共に振り返ることにより、そのときどのような対応をとるのがベストだったのか意見交換が可能になったことと、現場の医師同士が共通認識を持ったことはおおいに役立っています。

 

成田吉明先生

 

当院は数年単位に及ぶ増床計画の最中で、2017年7月には全670床にすることが決定しています。病床数を減らす病院が多いなか、当院の病床数の増加は時代にそぐわないのではと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし病床数を増やすことは、当面高齢者人口がますます増える札幌において、より多くの患者さんを受け入れ可能にするため不可欠なことです。

急性期を脱しリハビリが必要な回復期の患者さんには近隣医療機関または当法人のグループ病院へ転院していただきます。そうして常に新たな重症患者さんなど、高度急性期を必要とする患者さんを受け入れられるよう取り組んでいます。

人口動態予測から、あと20年程度は現在の体制を拡大・継続して大丈夫だろうと考えています。その後は人口の増減や地域ニーズの変化など、そのときの状況に応じて適切な体制に変化させていくことが望ましいと考えています。

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