院長インタビュー

救急医療からがんまで、地域の医療を幅広く担う福岡徳洲会病院

救急医療からがんまで、地域の医療を幅広く担う福岡徳洲会病院
海江田 令次 先生

福岡徳洲会病院 院長/麻酔科医

海江田 令次 先生

この記事の最終更新は2017年08月16日です。

福岡徳洲会病院は、602床、25診療科を擁する総合病院であり、西鉄天神大牟田線の井尻駅、大橋駅からいずれも、バスで10分ほどのところにあります。「生命だけは平等だ」という理念のもと、「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」を目指す徳洲会グループの一員として、どのような取り組みをされているのか、病院長の海江田令次先生にお伺いしました。

当院は1979年10月に、150床の病院として開設されました。「救急患者を断らない」という徳洲会の理念を実現すべく、24時間365日、常に患者さんを受け入れられる体制で診療にあたっています。

2012年、旧病棟が老朽化したため新病棟の建設に着工し、2014年に移転しました。

新病棟では、救急体制が大きく改善されました。たとえば、ヘリポートの設置や救急外来、集中治療センター、血管造影室、新生児集中治療センターなどの拡充です。ヘリコプターでは宮崎や長崎の患者さんも受け入れています。

当院の救急は1993年から、北米型イマージェンシー・ルーム(ER)システムを採用しています。すなわち、救急外来の患者さんの初期評価と処置は救急総合診療部のスタッフが行い、院内の適切な専門科に紹介します。その後の治療はそれぞれの専門科が行うというシステムです。そのため夜間であっても、内科と外科、小児科、循環器内科、脳神経外科、産婦人科は毎日、当直医が待機しています。新病棟ではこれらの診療科が有機的に連携できるよう、患者さんの動線なども大きく改善されました。

現在、ほぼすべての救急要請を受け入れており、救急要請の応需率は約99%です。残念ながら、重症者の搬入が重なりやむなく他の施設への搬送を依頼する状況も生じています。それでも年間の受け入れ患者数は10,000例を超え、これは全国的にも上位レベルと思います。

最近の傾向は高齢者の骨折の増加です。整形外科では年間1,000例以上の手術を行っています。なかでも大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折と橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折の手術数は、全国上位10位以内です。

当院は救命救急センターではありませんが、急性心筋梗塞脳卒中などの血管系の疾患にも重点を置いて対応しています。事故による外傷にも、外科、整形外科と形成外科が協力して対処します。いずれも24時間体制です。

また脳卒中患者さんに限りませんが、リハビリテーションも充実しています。急性期から退院時まできちんとケアさせていただきます。

新病棟におけるもうひとつの大きな変化は、がん診療への取り組みです。これまで当院では、あまり積極的に受け入れてきませんでした。しかし社会の高齢化にともない、日本人の2人に1人ががんを経験する時代になりました。それだけ一般的な疾患(コモン・ディジーズ)となった「がん」を診察しないのは、地域の総合病院として適切ではないと考えたのです。そこで新設したのが「がん治療センター」です。消化器外科や産婦人科、泌尿器科の医師が、胃がん、肝胆膵(すい)がん、乳がん子宮がん卵巣がん、膀胱(ぼうこう)がんなどを対象に、手術や化学療法、さらに放射線療法を行っています。がん化学療法認定看護師と緩和ケア認定看護師も在籍しています。治療が困難な場合は九州がんセンターなどにご紹介しますが、標準的ながん治療は当院で可能となりました。

当院では患者さんの全身をケアできるという強みもあります。先ほども申し上げましたが、高齢の患者さんが多いので、来院の理由となった主訴以外にも慢性疾患をお持ちのケースが多いのです。心臓系の疾患で入院された患者さんに、がんが見つかることもあります。そのような場合、当院では、各科が連携した治療、つまり院内完結型の治療が可能です。

その鍵になるのが「総合内科」です。入院されている患者さんの内科系疾患全般を管理します。総合内科にはもう少し多くのドクターを配置したいと考えています。

当院は、地域医療支援病院でもあります。紹介率は約65%、逆紹介率は70%ほどです。

また地域全体の有病率減少を目的とした「健康づくり講座」も、積極的に開催しています。この講座は、公民館などへ出向いて行います。土日祝日を除く毎日、多くの場合、複数の会場で開催しています。医師だけではなく、看護師や管理栄養士なども講師として派遣し、病院をあげて地域のみなさまの健康維持のお手伝いに励んでいます。

加えて、健康管理センターでは、人間ドック健康診断も行っています。人間ドックでは、利用者のニーズに合わせて検査項目を組み合わせる、テーラーメイド・ドックも可能です。

当院は古くから、教育にも熱心に取り組んできました。初期研修医を受け入れ始めたのは1980年です。これまでに500名近い初期研修医を受け入れてきました。九州内の大学からの研修医が大半ですが、北は旭川医科大学から南は琉球大学まで、全国から受け入れています。初期研修医は現在、1年次15名、2年次13名が研修しています。

研修医の先生には、救急総合診療部と総合内科の研修を頑張ってもらっています。当院の救急は年間およそ1万例を受け入れていますが、全例、初期治療は研修医の先生が担当します。2年間を通して4日に1回の割合で当直がありますから、幅広い疾患に対する初期診断と治療を習得できます。

総合内科では、教育回診を毎日2時間かけて行います。基本的に救急総合診療部と直結し退院までの病棟管理を学びます。集中治療室でのクリティカルケアも学べます。

市中病院ですから、患者さんの多くはコモン・ディジーズです。しかしそのような患者さんの診療を多数経験した結果、コモン・ディジーズの裏に隠れている病態を見逃さないようになります。これは、当院で研修する大きなメリットのひとつです。

いずれの科も、指導を担当する上級医は若く、活気ある雰囲気のなかで研修を行えます。

関心のある学生さんは、ぜひ見学にいらしてください。

今後の日本は、人口が減少し、少子高齢化が進むと考えられます。そうした変化とともに高齢者医療の自己負担なども変わっていくでしょう。おそらく、これからは「検査や薬剤は最小限で、最大の患者満足度が得られる医療」が求められるようになるのではないでしょうか。それに備え、今から病院の医療の質を高めていく必要性を感じています。

そのため患者さんには、当院に至らぬところがあれば、ぜひ、教えていただきたいのです。それが当院の質を高めるには、最も効率のよい方法だからです。

この地域には大学病院が2つありますが、「近所の病院で治療したい」という思いは、患者さんだけでなくご家族にも必ずあるはずです。そのような声に応えられるよう、これからもさらによい病院を目指していきたいと思っています。

受診について相談する
「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。