院長インタビュー

「地域に信頼される質の高い医療・ケアの実践をめざして」JCHO星ヶ丘医療センター

「地域に信頼される質の高い医療・ケアの実践をめざして」JCHO星ヶ丘医療センター
松本 昌泰 先生

堺市立総合医療センター 顧問

松本 昌泰 先生

この記事の最終更新は2017年05月24日です。

織姫彦星で有名な天の川伝説の発祥の地、大阪府枚方市星丘に位置する独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)星ヶ丘医療センターは、地域包括ケアにおける中心的な役割を果たす病院として、地域とのつながりを大切にしながら診療を続けています。またリハビリテーション、緩和ケア、がん治療に力を入れ、地域から信頼される質の高い医療・介護の実践に努力し続けています。

地域とのつながりを重要視し、質の高い医療を目指し続けるJCHO星ヶ丘医療センターの取り組みについて院長の松本昌泰先生にお話を伺いました。

 

当院は2014年(平成26年)から独立行政法人である地域医療機能推進機構JCHO:ジェイコー)の運営病院グループに属しています。

JCHOは地域の住民、行政、関係機関と連携し、安心して暮らせる地域づくりに貢献することを理念とした運営法人です。地域医療・地域包括ケア連携の要として、「急性期医療~回復期リハビリ~介護」の連携を重視したサービスを提供し、地域医療・地域包括ケアの確保ができるよう取り組みを進めています。

当院は前身の星ヶ丘厚生年金病院のときから地域医療・ケアの充実に対して長年取り組んでまいりました。そしてJCHO星ヶ丘医療センターとなってからはより公的な病院として、地域の行政、医師会、歯科医師会、薬剤師会、訪問看護ステーション、介護関係者などとの密接な連携のもと地域包括ケアを推進し、地域包括ケアにおける中心的な役割を果たしています。

当院は2016年(平成28年)の病院機能評価で、リハビリテーション機能を適切に発揮しているとしてS評価をいただきました。当院はリハビリテーションの先進施設として40年以上の歴史を有しています。当院のリハビリテーションにおける最大の特徴は、回復期病棟で頸髄損傷を中心とした脊髄損傷リハビリテーションを行っていることです。限られた期間で患者さんに各損傷レベルに必要な知識と機能を獲得していただき、環境整備の援助を行って在宅復帰・社会復帰を目指しています。そうした取り組みもあり在宅復帰率は約75%になっています。

そして2016年からは最先端機器である介護支援用ロボットスーツHALを導入しました。最先端の医療ロボットの導入によりさらなる医療レベルの向上を目指します。

※病院機能評価…全国の病院を対象に、組織全体の運営管理および提供される医療について中立的、科学的・専門的な見地から評価を行うツール。公益財団法人日本医療機能評価機構が運営している。

当院には現在29の診療科があります。ここでは当院のなかでも特色ある診療科をご紹介します。

当科は脳神経外科、脳卒中内科、呼吸器内科、循環器内科、整形外科などの治療の援助という形で約90名のリハビリスタッフ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)を中心にリハビリテーションを行い、特に脳血管疾患では早期から脳血管の専門医師、看護師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーが協力して在宅復帰を含めたリハビリテーションを行っており、多職種でのチーム医療を実践しています。また呼吸器専門医の指導のもとでCOPD慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎を中心とした呼吸器疾患のリハビリテーションを行っており、脳血管疾患とともに枚方市周辺の病院と理学療法士の勉強会や全国講習会を開催することを通じて病院間の連携を図っています。

脳神経内科は2017年(平成29年)より新体制で診療を開始しました。当科とリハビリテーション科では筋委縮性側索硬化症や筋ジストロフィーなどの神経難病に対して、ロボットスーツHALによるリハビリ療法を導入予定です。

当科では院内外を問わず、がん患者さん、ご家族、ご遺族の方を対象に外来診察や相談を医師・専門看護師・臨床心理士・ソーシャルワーカー他が行っています。がんという病気は身体の辛さだけではなく患者さんとご家族の心に大きな影を落とします。そのため診断を受けたときのショック、治療に伴う数々の悩みや不安、残されたご家族の悲しみなどを支えていくために当科を設置しました。がんの診断・治療時に「気分が滅入る」「不安で食欲がない」「眠れない」などの症状があれば当科へお越しください。またご家族、ご遺族の方も「不安」「不眠」「考えがまとまらない」「食欲がない」「何も手につかない」などの症状があれば当科へご相談ください。

2016年6月よりペインクリニック外来を開設しました。ペインクリニック外来では様々な痛みの診断・治療を行っています。それぞれの痛みにあわせ、神経ブロック(局所麻酔薬)・薬剤・低周波・温熱・レーザー・漢方などを用いて痛みを緩和します。

また痛みがない疾患でも、突発性難聴顔面神経麻痺、顔面・眼瞼けいれん、痙性斜頸などでは神経ブロックや薬物治療が奏効するため当科で治療しています。

最近では、上腹部内臓痛に対する内臓神経ブロックをより安全に施行できる「コーンビームCTガイド下内臓神経ブロック(腹腔神経叢ブロック)」や、腹水貯留に対して数日の入院で腹水を除去、再静注できる「腹水濾過濃縮再静注法(CART)」などを導入しています。

※痙性斜頸(けいせいしゃけい)…首が左右上下のいずれかに傾く、捻じれる、震えるなどの不随意運動を引き起こす局所性ジストニアの一種

当院は健康医療都市ひらかたコンソーシアムに参画しています。

健康医療都市ひらかたコンソーシアムとは、枚方市の14の団体が参画している健康と医療に関わるコンソーシアム(共同事業体)で、2014年に設立されました。健康と医療に関わる機関や団体がコンソーシアムを設立したのは大阪府内で初めてのことです。当コンソーシアムでは、市民のみなさんの健康増進地域医療の充実などを目的に、参画団体と多彩な連携事業を展開・発信することで、市民の定住化を高めることを目指しています。

当院では当コンソーシアムの一環として地域医療連携システム「天の川ネット」の運用を市立ひらかた病院とともに2016年に開始しました。

地域医療連携システムとは、ICT(情報処理や通信に関連する技術)を活用して医療機関の連携機能を強化することで、枚方市域内の医療資源の有効活用を図るとともに、重複検査・重複処方の防止などより効率的な診療を行うことを目的としたものです。このシステムにより診療所等が病院の患者情報を参照できるほか、病院同士でも、互いに患者情報の参照が可能になります。

今後はこのシステムの活用を2つの病院だけでなく、枚方市の医療機関へと拡大していきたいと考えています。こうしたシステムを活用することで、枚方市の地域のみなさんによりよい医療を提供できるように取り組んでいきたいと思います。

当院の歴史は古く、地域支援病院として看護部は力を入れていました。そのため患者さんの「入院時~現在~退院後」を捉えた継続性をもち、療養環境や健康状態の変化にかかわらず責任をもって一貫した看護を提供する継続看護には力を入れています。

そして現在では様々な分野の専門知識を持つエキスパートナースが当院で活躍することでさらに質の高い看護ケアの実現を目指しています。

【当院の専門・認定看護師】

たとえば脳卒中リハビリテーション看護認定看護師は、患者さんの病気発症直後からかかわり、医師やリハビリスタッフ、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのメディカルスタッフとともにチームで連携をとりながら、病態も含めた患者さんの状態把握をしっかりと行います。そして病気の重篤化を回避しながらリハビリテーションに取り組める身体と心を作る看護ケアを行います。急な病気の発症でショックを受けている患者さんやご家族の方々をチームで支え、その人らしい生活を取り戻せるように支援することが重要です。そうしたチーム医療のなかで、スペシャリストナースの役割はとても大きいといえます。

また当院では看護師・介護福祉士を中心として病棟内で院内デイケア(ほしのサロン)を行っています。院内デイケアとは入院中患者さんのなかには高齢な方、そして認知症の方も多くいらっしゃいます。そのような方を対象に、生活環境の変化による認知機能の低下を予防し、昼夜のリズムを修正し、QOLを改善することを目的に行っています。今後は多職種と協働し、こうした体制を整えていこうと考えています。

当院は2016年に日本医療機能評価機構より、一定の水準を満たした病院である「認定病院」の評価(更新)を受けました。そのなかの病院機能評価は4段階(S:秀でている、A:適切に行われている、B:一定の水準に達している、C:一定の水準に達していない)で判定されますが、リハビリテーションの評価項目でS評価、また全89項目のうち80項目がA評価を受けました。今後も高評価の認定を受け続けられるよう努力していきたいと思っています。

また当院の緩和ケア、がん領域、そしてTotal Vascular Managementは非常によい体制になっています。たとえば脳卒中の血管内治療を脳神経外科及び内科が共同で担当する、リハビリテーション科でHALを導入するなど、全身の脳心血管疾患発症のリスクに対して複数の診療科が包括的サポートを実施しています。こうした治療領域を軸に、さらなる適切な多職種チームによる取り組みをどう促進できるのか、検討を進めています。

※Total Vascular Management…動脈硬化性疾患リスク因子を有する患者さんに対し、全身の脳心血管イベントリスクを包括的に管理する

松本昌泰先生

地域医療を進めるためには、この地域にどんな方が住んでいるのか、どんな方が受診しているのかを知ることを大事にしないといけません。

当院が位置する大阪府枚方市星丘には織姫彦星で有名な七夕伝説に登場する天の川の由来となった「天野川」が流れ、その流域には七夕伝説に関わりのある地名や史跡が多く残ります。そのためこの地域は七夕伝説のふるさとの地として有名です。またこの地域には「暁(あかつき)」という大阪ひらかた銘菓や、「ひらかたパーク」という創業100年を超える日本最古より運営される遊園地もあります。

こうした地域の文化を知り、人々の歴史を見ないと地域医療は実現できません。地域の方々を知ることは地域医療の基本なのです。地域包括ケアの中心的な役割を果たす総合病院として、こうした地域とのつながりを大切にしたいと思っています。

今年のメッセージは「One for all, All for one! It’s our medical center!」です。これから地域のみなさまによりよい医療を提供していくためにも、診療科の垣根を超えたチームワークをさらに重視して医療レベルの向上に努めていきたいと思います。

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