院長インタビュー

池田市の公立病院として、地域に貢献し続ける市立池田病院

池田市の公立病院として、地域に貢献し続ける市立池田病院
今井 康陽 先生

市立池田病院  病院長

今井 康陽 先生

この記事の最終更新は2017年09月27日です。

 

地域医療支援病院 市立池田病院は、豊能二次医療圏(池田市・箕面市・豊中市・吹田市・能勢町・豊能町)における最初の公立病院として1951年に開設されました。数次に渡る増改築を経て、1997年に現病院に新築移転しました。さらに、2004年には100床を増床するなど、地域の医療を支えるために常に進化を続けています。2017年現在は364病床数、26診療科に救急総合診療部(総合内科)も含め、より専門的で高度な医療の提供を行っています。同院は10万都市である池田市のみならず、隣接する市や町からの患者さんも多く受け入れており、地域の基幹病院として大きな役割を果たしています。地域において主要な公立病院である同院の取り組みについて、院長である今井康陽先生にお話を伺いました。

当院の消化器病センターでは、消化器内科と消化器外科が垣根を超えて密接に連携しており、さまざまな消化器に関する病気に対応しています。一般的な病気から、特定疾患まで、肝臓、大腸、胃、食道、膵臓、胆嚢など広範囲にわたる消化器病疾患に対して、それぞれの分野の専門医を中心に対応しています。

また、当センターでは、腹腔鏡手術のなかでも特に難しい手技が必要とされる胃がんの腹腔鏡手術において、日本内視鏡外科学会技術認定を取得した経験豊富で確かな技術を持った医師が担当しています。

当センターでは積極的に術後回復強化(ERAS)プログラム (ERAS: Enhance Recovery After Surgery)を行っています。ERASプログラムとは、体にとって大きな負担となりうる手術のダメージを可能な限り減らし、術後回復能力を高めて、早期回復・早期退院を促し、社会復帰を早める取り組みです。世界でも注目されているこの取り組みを当院ではいち早く導入しました。導入以来、実績を積み、2016年4月の日本外科学会でも発表しました。
たとえば、従来の大腸手術では、術前から絶食したうえで2Lほど下剤を飲み、術後は数日間点滴のみで過ごし、3~4日してから食事を開始していました。痛みや不安などで苦しい思いをされている患者さんにとっては、こうした手術前後の準備も負担になることが多いです。

しかし当院のERAS適用の大腸手術では、前述のような患者さんにとって負担になることを極力減らすようにしています。このようなことを可能にするのは、卓越した手術・麻酔技術はもちろんですが、ERASに精通した看護師が、事前に詳細をご説明し、患者さんに回復意欲を持っていただいているためです。そして、スタッフ全員で早期回復へ導いています。ERASの厳密な麻酔管理のもと、手術は原則として腹腔鏡で行います。腹腔鏡での手術は低侵襲で創部が小さいため、痛み止めを効かせれば翌日からの歩行が可能です。同時に食事もできるため、精神的な負担も軽くなり早期の回復が望めます。

当院の救急総合診療部では急性期病院の重要な役割の1つである救急医療を担っています。2017年現在、当院の救急総合診療部では9名の医師が勤務にあたっており、この医師数は全国的にもトップクラスとなっています。救急の患者さんや、重症の患者さんに対し、少しでも迅速かつ的確で密度の高い医療で対応できるよう体制や施設を整えており、2次救急指定病院として高度な医療を提供できるよう努めています。また、総合内科外来では、主に紹介状を持たずに当院を受診された内科系初診の患者さんの診察を行います。どの科を受診したらよいかわからない、困った点がいくつもあってどこを優先して診察してもらったらよいかわからない、という場合もまずは総合内科外来で診察を行い、適切な診断や診療の優先順位をつけ、必要であれば院内の専門科に紹介しています。

当院の初期研修では、定員に対して約4.5倍もの応募がくるなど、多くの研修医に支持されているといえます。充実した研修教育体制に加えて、プライマリ・ケアの研修を徹底していることが人気の理由のひとつです。プライマリ・ケアとは、さまざまな症状や疾患に対応できる医療のことで、主に初期対応にあたり適切な専門医・診療科を紹介するという大きな役割を担っています。また、当院ではこのプライマリ・ケアを主として救急総合診療部(総合内科)が担当し、平成30年度から開始の専門医制度では総合診療専門医の役割となっています。当院でも平成30年度から新専門医制度に沿った総合診療研修プログラムを開始予定です。当院の研修では、プライマリ・ケアの研修を徹底し、診療科を横断的にみる力や基礎力を身に着けられます。この2つの力は、医師としてとても大切なものです。当院では、全人的な医療を心がける医師たちが熱意をもってこの研修にあたり、地域医療を支える優れた医療人の育成に力を注いでいます。

初期研修医が参加必須となっているM&Mカンファレンスは、合併症などにより症状が悪化してしまった患者さんの事例や医療上予測できなかった事例などに対して、情報を共有し、リスクマネージメントをする、他職種・他診療科間で行うカンファレンス(会議)です。素晴らしい症例や、珍しい症例などを共有するだけでなく、改善することが必要な症例についても情報を共有・開示し、話し合うことで、病院の改善や医療人の意識の向上にもつながっています。一つひとつの症例に真剣に向き合いながらも、さまざまなリスクを把握することで、医療の質の向上を日々図っています。

当院は、地域住民のみなさまの健康を支えるとともに、地域の医療水準の向上を目指して医療・介護連携を推進しています。

当院は2009年に地域医療支援病院として厚生労働省より承認されました。その事業の一環として、地域医療連携推進委員会を年4回定期的に開催しています。行政と一丸となり、在宅医療を受ける患者さんや、認知症の患者さんのトータルケアをする活動をしています。行政と地域医療連携推進委員会が連携してケアマネージャー、リハビリテーションスタッフ、訪問看護師などそれぞれの職種毎の研修会、また多職種連携を深めるための研修会を定期的に開催し、在宅医療・介護連携を強固なものにしています。患者さんやご家族の方の視点に立った保健や医療、福祉の連携に努める活動の中核的な運営をこの推進委員会で行っています。

大阪府がん診療拠点病院として、肺がん胃がん肝がん大腸がん乳がんの5大がん、さらに前立腺がん、腎がん、膵臓がん食道がん、婦人科がんなどについて腹腔鏡手術を中心とした手術、内視鏡治療、化学療法、放射線治療、緩和ケアと幅広く高度ながん専門診療を行っています。地域住民のみなさまには、当院にお越しいただければ質の高いがん治療が受けられると安心していただけているのではないでしょうか。

エンド・オブ・ライフ・ケアへの取り組みとして、2013年から勉強会を開始し、地域ともにその人らしく最期まで過ごせる医療とケアの提供について考えてきました。老いや病により人生を終える時期にいる患者さんに対して、その人の生き方や価値観を尊重し、患者さんの意思を尊重し、家族もまじえて多職種で最善を考えて、話し合いを重ねていくことを大切にしています。早期から、患者さんがどういった治療を受けたいのか、受けたくないのかという情報を多職種で共有し、適切な治療を適切な時期に受けていただけるような話し合いを継続的に行っています。また、池田市の在宅医療・介護連携事業の一貫として、地域住民・行政・医師会がメンバーとなった池田市アドバンス・ケア・プランニング推進プロジェクトチームを設置し、事前指示書の作成にも取り組んでいます。また、地域に出向き、市民に対して胃ろうの説明などを通して自分の生き方・逝き方を考えるきっかけづくりを行っています。エンド・オブ・ライフ・ケアの企画については、池田市以外からの参加者も多く、現在で24回の実績があります。

 

 

今井康陽先生

当院では、基本理念である、創意に富み 思いやりのある「信頼される病院」をめざして、さまざまな取り組みを積極的に行ってきました。直接的に患者さんに提供できる急性期病院としての医療の技術・質の向上はもちろん、院内生活が少しでも過ごしやすくなるような癒しをつくる病院づくりにも力を入れております。

また、医療人の育成やメディカル・タウン構想によって、かかりつけ医の先生方、薬剤師・介護師・訪問看護師の方々、行政機関とも連携しながら、より安心・安全で豊かな医療を受けていただくための取り組みを行っています。今後は、患者さんのQOL(生活の質)を支えながら医療を提供することがますます期待されていきます。そのために、当院ができることを隅々まで提供し、どのように生きていきたいのかということから、どのような医療を受けたいのか、最期のときをどのように過ごしたいのかということまで患者さんの心と人生に寄り添える病院でありたいと思っております。

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