院長インタビュー

市立ひらかた病院

市立ひらかた病院
森田 眞照 先生

市立ひらかた病院 病院長

森田 眞照 先生

この記事の最終更新は2017年10月06日です。

市立ひらかた病院は人口約118万人の規模を誇る大阪府北河内医療圏において、2014年9月に新築移転し、2017年1月にすべての工事を終えてグランドオープンしました。同医療圏で唯一の24時間入院対応可能な小児救急医療機関であり、地域の小児救急患者さんを一手に受け入れている急性期病院です。周辺には300床を超える大規模病院が複数あり、地域医療を守るためのしっかりした連携が取れています。

地域医療における公立病院としての役割を果たすため、地域のみなさまとの信頼関係を築き、質の高い安全な医療の提供をめざす、同院の院長である森田眞照先生にお話を伺いました。

 

 

当院は、これからも患者数が増えると予想されるがんの治療に、ますます力を注げるよう、最新の機器を導入し、緩和ケア病棟を開設しています。そうして地域の中核病院として地域のみなさまの命を守るため、質の高い安全な医療を提供し続けています。また、二次救急指定医療機関として、救急患者さんを受け入れています。年間の救急車の搬送台数は約3,500件、救急車を使わず自力でご来院される救急患者さんは約9,700名にのぼります。とくに小児救急に力を入れており、小児科医不足が叫ばれている昨今で、365日24時間対応の小児救急医療を提供しています。これは枚方市にとってもアピールポイントになっています。

病床数は355床、23の診療科を有し、手術・検査にともなう痛み・発熱・出血などをできる限り少なくする、患者さんにやさしい医療(低侵襲医療)に積極的に取り組んでいます。

 

当院は、北河内医療圏の二次医療圏のなかで唯一、小児救急患者さんを365日24時間体制で受け入れています。35床の小児病棟を有し、発熱や、呼吸困難、ひきつけ、けいれん発作、嘔吐や下痢、脱水、意識障害などの症状を呈するほとんどの急性疾患に対応しています。

数年前までは、年間の時間外受診患者数は小児科だけで約16,000名を超え、救急患者さんに4、5時間待っていただくことが常になり、小児救急が継続できない状態にまでなりました。

解決策として、一次救急を担う北河内夜間救急センターを当院に隣接する枚方市保健センターに移転し、当院と連携しながら比較的軽症の患者さんに対する救急医療をお任せする形になりました。一方、当院は入院が必要と判断された二次救急患者さんに特化した診察を行い、必要に応じて集中治療を行う三次救急病院に患者さんを搬送する役割を担いました。その結果、当院にいらっしゃる時間外受診患者数が以前の十分の一まで減り、患者さんを長時間お待たせすることがなくなりました。さらに入院患者さんは救急外来受診者の約4割に増え、当院が果たすべき二次救急患者さんへの集中的な診察・治療ができているといえます。これからも小児医療の拠点病院としての責任を果たしてまいります。

 

 

当院は、大阪府がん診療拠点病院に指定されています。がん診療拠点病院とは、日本に多いがん(肺がん胃がん肝がん大腸がんおよび乳がんなど)について、専門的な診療機能を持つ病院のことです。新病院には、320列と64列の2台のCT、3テスラと1.5テスラの2台のMRI、さらにSPECT装置や最新の放射線治療装置を導入し、より精度の高い診断や質の高い治療ができるようになりました。

当院では、手術・検査にともなう痛み・発熱・出血などをできる限り少なくする患者さんにやさしい医療(低侵襲医療)に積極的に取り組んでいます。

泌尿器科で実施している前立腺がんに対する高密度焦点式超音波治療法(HIFU)は、超音波を1点に集めて照射することで、前立腺がんだけを治療し、ほかの組織にはダメージがほとんどない治療法です。関西では当院がはじめて導入し、現在までに300例の治療を行いました。

また、低侵襲医療の代表的な手法である内視鏡外科手術をさらに充実させるため、7部屋ある手術室のうち2部屋を内視鏡外科手術専用にしました。内視鏡外科センターを設置し、複数の診療科にまたがる内視鏡外科手術の安全性の確保や教育訓練などを統括する体制を整備し、医療の質の向上に努めています。

 

新病院の特徴のひとつでもある緩和ケア病棟は、20床の病室がすべて個室になっており、家族部屋を備えるなど、緩和医療を提供しているがん患者さんとそのご家族が、その人らしさを大切にした環境でゆっくり過ごしていただける病棟になっています。

緩和ケアは、がんと診断されたそのときから開始することが大切であるといわれています。

当院では、医師や専門看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、社会福祉士など多種多様な分野の専門家がチームとなり患者さんとご家族を支えています。大切な時間を有意義に過ごしていただくためのさまざまな工夫もしています。

ご遺族に対するグリーフケア(大きな悲しみに襲われている方に対するサポート)の一環として、当院でお看取りをさせていただいた患者さんのご家族を招待し、ほかの患者さんのご家族や当院のスタッフとお話をする場を提供させていただいています。いらっしゃったご家族の方からは、「ほかの患者さんのご家族とお話ができ、遺された家族の気持ちは同じであると心強く感じた」、「スタッフが家族のことを覚えていてくれたことに感動した」とおっしゃる方もいらっしゃいました。これからもよりいっそう、充実した緩和ケアを提供したいと考えています。

 

 

当院は、枚方市の災害医療センターに位置付けられています。災害時において、患者さんの生命と安全をお守りすることはもちろん、被災地域の内外を問わず、枚方市の医療救急活動の拠点として、迅速かつ適切な医療救急活動を担う使命があります。

新病棟は、震災時にも病院機能を維持できるよう、枚方市の公共建築物では、はじめて免震構造を採用しました。非常用発電設備もあります。玄関前の約700㎡の芝生広場は、重症度などで治療の優先順位を判断するトリアージを行うためのテントを張るスペースになります。さらに、1階の外来待合スペースや2階の講堂などに医療ガス供給設備を配置し、災害時には医療活動スペースとして利用できるようにしています。

また、災害対応マニュアルの徹底を図るとともに、職員の危機管理に対する意識およびスキルの向上のために、年に2回災害医療訓練を実施しています。災害医療訓練は、当院の職員だけではなく、枚方市、消防署、保健所や、市内の近隣病院、地域の医療機関の職員の方々とともに共同で実施しています。訓練には、毎回100~200名の職員が参加し、非常に充実した内容となっています。

訓練で得た課題を今後にいかし、さらなる災害医療体制の充実に努めてまいります。

 

 

当院は、地域のみなさまの健康増進のため、積極的に医療や健康に関する情報を発信しています。当院2階の講堂を使って市民公開講座を開き、がんの予防から発見・治療方法や、成人病や介護のことなどをわかりやすくご説明し、参加された方からのご相談に応じています。また、イベント開催中は測定コーナーを設け、骨密度や血管の老化を計る検査や視力・眼圧、血糖値や血圧、体脂肪の測定などを無料で行っています。

将来の医療を担う子どもたちにも、病院や医療を身近に感じてもらえるようなイベントも行っています。2017年8月には、親子アドベンチャーツアーを開催し、28組56名の親子のみなさまにご参加いただきました。そこでは、病院説明や手術室などの院内見学、当院職員との交流を行いました。腹腔鏡の体験や手術衣を着ての記念撮影、X線透視検査やCT/MRI検査の実験、松葉杖の体験や認知症検査のテストなどをも行い、大いに盛り上がりました。

 

患者さんからは「病院が明るくて雰囲気がよい」「職員が優しくて、居心地がよい」といってもらえることがあります。これはひとえに当院の職員が、「心のかよう医療を行い、信頼される病院」という当院の理念を胸に、常に患者さんの立場に立って、患者さんを中心とした医療サービスの提供を心がけているからだと考えます。

地域の公立病院として歩んできた伝統を守り、これからも職員にとって働きがいのある、魅力あふれる病院づくりをめざしていきます。そして、公立病院として果たすべき役割を職員一人ひとりが考え、困っている患者さんに対して解決策をみつけられる職員が少しでも多く育つよう、努力してまいります。

 

 

当院は、公立病院として地域のみなさまのそばに寄り添い、安心して、気軽にお越しいただける病院であり続けたいと思っています。それとともに、急性期病院としての体制を維持し、今後増えてくると予想される、ご高齢の救急患者さんを一人でも多く受け入れられるような病院づくりを目指していきます。

医療の質の向上、サービスの向上などの課題に対して、すべての職員が一丸となり継続的に取り組んでまいります。これからも安心で安全な「こころのかよう医療を行い、信頼される病院」として、地域のみなさまに愛される病院であり続けたいと考えています。

 

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