院長インタビュー

長期療養が必要な重症患者さんを数多く受け入れている相和病院

長期療養が必要な重症患者さんを数多く受け入れている相和病院
川村 一彦 先生

相和病院 理事長・院長

川村 一彦 先生

この記事の最終更新は2017年11月21日です。

医療法人財団 愛慈会 相和病院は、JR・京王相模原線の橋本駅から同院の送迎バスに乗り、約15分の相模原市北西部に位置します。

長期療養が必要な重症患者さんを受け入れる医療療養型病院として機能しています。急性期の治療を終えたものの在宅復帰は難しく、継続的な医療処置が長期に渡って必要な方が多くいらっしゃいます。相和病院はそのなかでも人工呼吸器を外せないような重症な方を、東京、埼玉、千葉、神奈川などの大病院や中規模病院から数多く受け入れています。医療療養型病床を持つ病院は全国に約27万床ありますが(2012年時点)、人工呼吸器の管理をはじめとした、高度な医療を長期に渡って提供する施設は多くありません。

「最期まで継続した治療を提供する医療療養型病院」を自任している同院を、外科医として、また理事長として率いる川村一彦院長に病院の特徴についてお話を伺いました。

当院は、1980年に開設しました。開院当初は現在と異なる介護療養型病院としてスタートしました。

2007年に前任のオーナーが亡くなり、私が理事長を引き受けることになりました。病院の経営に携わることになり、病院の経営状態を知ったときはその苦しさに驚きました。当院を立て直すため、出した結論は介護療養型病院から医療療養型病院に転換する、というものでした。

一般的な急性期病院では、一定の時期が過ぎると退院、もしくは転院をすることになります。転院先として療養型病院があり、この病院は介護に重きを置いている介護型と、医療に重きを置いている医療型に分かれています。さらに当院は一般的な医療療養型病院と一線を画し、どの医療機関でも対応が困難な重症の患者さんを積極的に受け入れ、最期まで継続した治療を提供する医療療養に特化した病院へ転換しました。

長期療養の必要な重症の患者さんを受け入れるためには、医師を筆頭に高度かつ専門的なスキルを持つスタッフをそろえるのが前提となります。

また、尽くせる限りの手を尽くす患者さん中心の医療を行っていくために、格段に忙しくなりました。一瞬の油断により生命の危機が発生するような病態の患者さんが多いため、スタッフは少しも気が抜けません。このように職員には大変な負担をかけましたが、高いモチベーションを持つ彼らの熱意によってどうにか乗り切り、現在の相和病院があります。

「患者さん中心の医療」と「病院スタッフのモチベーション」のふたつをきちんと両立できることを、当院のスタッフは証明してくれました。このことを私はとても誇りに思っています。

人工呼吸器が必要な重症の患者さんには、気管切開をしていて話ができない方が相当数いらっしゃいます。さらに、動脈瘤の破裂で手術をしたが意識が戻らない方や、慢性閉塞性肺疾患COPD)などの呼吸器疾患がある、脳血管疾患の後遺症がある、がんの末期で疼痛を抑えるために医療用麻薬でコントロールしている患者さんもいます。

人工呼吸器には目的に応じていろんな機種があります。ASV、CPAP,NPPV,VELAなど、現在は全部で110台ほどそろえており、患者さんの病態によって使い分ける体制となっています。これも当院が首都圏の多くの病院から評価を受けている要因となっています。たとえば、重症の心不全ながら自発呼吸がしっかりしている患者さんには、内服薬治療と併用して、マスク型の呼吸補助装置を着けていただき、呼気終末陽圧をかけます。すると肺胞内の水分が減り、心臓が収縮する直前にかかる負荷が軽減されるため、呼吸が楽になります。

首都圏の大学病院には、このようなメニューを含めて説明に伺っています。説明することで、安心して治療を引き継げると感じていただけており、その結果、多くの患者さんをご紹介していただいています。

当院では人工透析が必要なものの、脳血管疾患、糖尿病の末期合併症、感染症などを持っているため、通院の透析ができないといった方も受け入れ、入院透析も積極的に行っています。

重症の患者さんでは摂食が一時的に、あるいは長期に渡って困難になるケースがよくあります。その場合の栄養補給は、チューブを介して栄養剤を入れる経管栄養法と点滴による経静脈栄養法があります。経管栄養法には鼻から胃までチューブを入れる方法や、腹部の皮膚に小さい孔を開けてチューブを入れる胃ろうなどがあります。もちろん摂食ができるように回復するのが一番ですが、すぐには叶わない場合もあります。胃ろうは一度つけたら一生外れないという誤解があり忌避されるご家族もいらっしゃいますが、摂食能力が回復して胃ろうを外すケースも数多くあります。また胃ろうは、誤嚥性肺炎が少なくなるというメリットもあります。摂食は生きる喜びでもあります。そういった点も尊重し、生命をつなぐために医療的な栄養療法が必要なことも、当院では丁寧に説明しています。

患者さんが入浴する際には介護士2名が介助します。人工呼吸器を着けていらっしゃる患者さんは、看護師がアンビューバック(手動で空気を送り込むマスク型の医療機器)で手動換気を行いながら入浴をしてもらっています。入浴をすると患者さんの顔がほころぶ様子がよくわかり、当院では入浴も大切にしています。現在介護スタッフは85名ほどおり、8割以上が介護福祉士の資格を取得しています。

また介護の質を向上させる試みとしてさまざまな工夫をしています。患者さんのベッドに、各病棟共通のマークを貼って、介護の質の平準化をはかっています。これを見れば、患者さんの状態や必要な介護の内容がどのスタッフでもひと目でわかります。

病院経営は一般企業と通ずる点はあるものの、市場原理とは違うと肝に銘じています。それは社会貢献が中心の理念を掲げていることです。

療養型病院は看取りの病院ではありません。どのような患者さんを受け入れても、絶対にあきらめずに治療を継続することを基本姿勢とすべきだと思っています。抗がん剤を使っているがん患者さんは療養期間が長くなるため、コスト面で受け入れが難しい施設もあります。しかし当院は治療効果を優先し治療を行います。また、あきらめない治療はご家族が望まなければ困難です。当院では前もってこの理念をご家族にお話しして、ご理解をいただいたうえで継続的な治療を行うようにしております。

川村院長

療養型病院では多様な疾患・病態の患者さんが入院していらっしゃるため、さまざまな治療を最善の方法で行う必要があります。そしてEBMに則っていなければなりません。そのため当院に勤務する医師には、あらためてきちんと勉強をしてもらい、どんな患者さんにも対応でき、全身を診ることができる総合医を目指してもらうようにしています。

私自身、大学病院で感染症や医療安全の講習を受けました。脳の疾患の患者さんも多いので、そちらの勉強もしています。当院でスキルを磨きたいと考えている医師はぜひいらしてください。

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