院長インタビュー

痔核に対する画期的な手術を、国内外に向けて発信する札幌いしやま病院

痔核に対する画期的な手術を、国内外に向けて発信する札幌いしやま病院
石山 元太郎 先生

札幌いしやま病院 理事長

石山 元太郎 先生

この記事の最終更新は2017年12月20日です。

藻友会 札幌いしやま病院は、日本を代表する肛門科専門病院として、全国にその名を知られています。いしやま病院では、これまでに独自の手術法や麻酔法を導入し、肛門手術を大きく進歩させてきました。現在、どのような治療を提供しているのか、理事長である石山 元太郎先生にお話を伺いました。

当院は1977年、私の父である現・名誉院長の石山勇司が開設しました。当時、北海道に肛門の専門病院はなく、全国的にも5~6施設ほどしかなかったと記憶しております。

そのため当院は、現在でも北海道における肛門治療の拠点となっています。道内には、当院で研修されて肛門科病院を開業された先生方もたくさんいらっしゃいます。

現在、毎年6万名弱の患者さんに受診いただき、手術数は月に5,000件ほど行っています。この数字は、国内でもトップクラスです。

核(いぼ痔)というのは、筋肉と一緒に肛門の出口で便やガスの排出を調節している「肛門クッション」が、肛門の出口側にずれ落ちてしまった状態です。

今までの治療法では、この痔核を単純に切除していました。しかしこのやり方では、切除後に肛門が狭くなるなど、排便時にさまざまな不便を感じる患者さんも多かったのです。

そこで約30年前、「ずり落ちた肛門クッションを元の位置に引き上げる」手術を、現在の名誉院長が考案しました。それが、「肛門クッション吊り上げ術(ACL術)」と呼ばれる方法です。ACL手術を採用すると、手術後の見た目も奇麗ですし、肛門機能も維持されます。そのため、患者さんのQOL(生活の質)は格段に向上しました。

「美しい肛門は機能も美しい」これが私たちのモットーです。

このように当院では長い歴史を持つACL手術を7、8年前から学会で報告するようにしました。その結果、全国の先生方に興味をお持ちいただき、毎年20名ほどの医師が見学にいらっしゃいます。

今後はこの手術を、日本だけでなく、全世界に発信したいと考えております。

近年、核患者さんのニーズが多様化してきました。特に、日帰りの治療を希望する患者さんが増えています。

そのため当院でも、軽症の患者さんに対しては、注射による痔核縮小治療である「ALTA(アルタ)療法」を行っています。ただし手術に比べ、再発率が高いのは否めません。

なおALTA療法は、先に述べたACL手施行時にも併用しています。

ALTA療法では治癒しないと思われるにもかかわらず、日帰り治療を望まれる患者さんも数多くいらっしゃいます。そのような場合、普通の手術に比べると、しっかり治癒しない可能性をお話した上で、少し簡略化した手術を行います。

なお、当院では年間約5000件の肛門手術を行っています。そのうちの1,500件が日帰り手術です。

日帰り手術を可能にしているのが、当院で早くから取り入れている「仙骨硬膜外麻酔」です。

通常用いられる局所麻酔では麻酔時に強い痛みを感じま。また、下半身全体を麻痺させる「腰椎麻酔」と呼ばれるやり方では、手術が終わった後も麻酔に関する管理が必要です。そのため、基本的に入院が必要です。

しかし仙骨硬膜外麻酔であれば、肛門部周辺だけを麻痺させることが可能なため、麻酔が覚めればそのまま帰れます。

入院された患者さんには、退院時に看護師や栄養士による生活指導が行われます。「生活習慣病」という理解のもと、痔を再発させない正しい食生活や排便習慣を身に付けていただきます。

なお、入院食に用いられている野菜の約7割は、当院の自家菜園である「いしやま農園」の収穫物を使っています。無農薬で栽培された、体に優しい野菜です。

このように当院では、治療のみではなく、包括的な医療を志しています。

」で怖いのは、「大腸がん」による出血や血便を「痔」と勘違いしてしまうことです。頻度としてはあまり高くありませんが、当院でも毎年100名ほどに大腸がんが見つかります。

そのため、肛門から出血がある、あるいは便の出方が変わったと感じたら一度、肛門科の受診をお勧めします。

痔核に限らず、痔瘻(ろう)の手術も数多く行っています。痔瘻とは、直腸が肛門以外を介して外とつながってしまったトンネルです。

一般的に治療が難しいとされる深い痔瘻でも、当院では手術が可能です。そのため、北海道全域から患者さんを御紹介いただいております。

以外の疾患としては、直腸脱患者さんが多くなっています。高齢者の方などでは、直腸を引っ張り上げている筋肉が弱まり、直腸が肛門から飛び出してしまうことがあります。これが直腸脱です。直腸脱は基本的に高齢の方に発症しますので、他疾患と比べて、より侵襲の少ない手術法が望まれます。このため当院では開腹せず、肛門からアプローチする手術法を採用しています。

女性には直腸ポケットと呼ばれる疾患や、分娩時外傷などによる直腸膣瘻など、女性特有の疾患があります。また、羞恥心のため病院を受診できない患者さんも多くいることが予想されます。そのため当院では週に1日、女性の患者さんのみの診療を行う「女性診療」の日を設けています。診療は男性医師も担当しますが、当院には女性医師が3名常勤しておりますので、希望があれば女性医師の診療も受けられます。

昔から、アッペ(虫垂炎)、ヘルニア脱腸)、ヘモ()は研修医がまず覚える手術とされ、比較的簡単な手術としての位置づけでした。しかし、良性疾患であるが故、手術がうまくいかない場合などでは肛門の違和感や機能異常など、目に見える形で現れます。このため痔の治療は最近では専門病院でしかほとんど行われなくなりました。当院は札幌の地で開業以来40年間、一貫して肛門治療を提供してきました。常に既存の治療法を改良し、研究を重ねております。我々の治療も当然完璧なものではありませんが、常に最良の治療を提供できるよう努力しておりますので、お尻のことでお悩みの方は、是非、当院へご相談下さい。

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