院長インタビュー

地域医療機関との連携でよりよい医療提供を目指す愛媛医療センター

地域医療機関との連携でよりよい医療提供を目指す愛媛医療センター
岩田 猛 先生

国立病院機構 愛媛医療センター 院長

岩田 猛 先生

この記事の最終更新は2017年12月21日です。

独立行政法人 国立病院機構 愛媛医療センターは、愛媛県東温市にある医療機関です。約80年の歴史があり、近年では二次救急医療および一般急性期・慢性期医療を提供しています。2013年には、結核病棟や神経難病病棟、ポストNICU(新生児集中治療室(NICU)の後方支援病棟)といった設備を備えた新病棟が完成し、2014年には給食施設や食堂などを有するサービス棟を新たに開設するなど、病院としての機能をさらに充実させています。同院の取り組みや今後の展望について、院長である岩田 猛先生にお話を伺いました。

当院は1939年に開設された陸軍附属の「軍事保護院傷痍軍人愛媛療養所」を前身としています。戦時中は負傷兵や病気を患った軍人の治療にあたる医療機関でした。終戦をむかえた1945年に厚生労働省へ移管された当院は「国立愛媛療養所」へと名称を変更し、結核療養所の機能をもつ国立病院として生まれ変わりました。

その後、長らく結核をメインに医療の提供を行い、最盛期には1,000名を超える患者さんが入院していましたが、結核患者の減少にともない、結核の専門医療を継続しながらも呼吸器・循環器・消化器診療といった一般診療の機能を充実させてきました。また内科だけでなく、外科と整形外科の診療も充実させています。

また、これに加えて1970年には40床の「重症心身障害児病棟」を開設し、心身障害児の受け入れを開始しました。開設以来、この病棟は徐々に病床数を増やし、160床を有するまでに規模を拡大しています。現在は「重症心身障害児(者)病棟」へと名称を変更し、心身障害を持つ小児患者のみならず、成人患者の受け入れも行おこなっています。2004年には、独立行政法人化されて国立病院機構の病院になりました。また、2013年には名称を「愛媛医療センター」へと変更し、今日に至ります。

現在は、政策医療と地域医療を2本の柱に据えて医療の提供を行おこなっています。政策医療では愛媛県全域を、地域医療では東温市と松山市東部を主な診療圏としています。政策医療とは重症心身障害・神経難病・結核に対する専門的な医療を、地域医療とは救急医療と一般急性期医療を意味します。これらを実践することで、今後も地域に貢献していきたいと考えています。

呼吸器内科では、結核療養所としての経験をいかした質の高い医療提供を目指してきました。入院治療を含む結核の専門医療に加え、非定型抗酸菌を原因とする肺炎や免疫反応などによっておこる間質性肺炎といった肺の感染症、特殊な肺炎・呼吸器疾患などの治療にも力を入れています。

当院には呼吸器内科を担当する医師が6名、呼吸器外科を専門とする医師が1名在籍しており(2017年12月現在)、それぞれが連携を図りながら診療にあたっています。

呼吸器内科が提供する呼吸リハビリテーションや、循環器内科が提供する心臓リハビリテーションのような、特殊なリハビリテーションに力を入れていることも当院の特徴です。

呼吸リハビリテーションとは、病気やケガによって呼吸器機能に障害をもつ患者さんに対して、機能回復や機能維持を目的に行うリハビリです。当院では、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、結核後遺症などをもつ患者さんを中心にリハビリや在宅酸素療法を行おこなっています。

また、心臓リハビリテーションとは、心筋梗塞狭心症などによって心臓の機能が低下した患者さんに対して、体力回復と再発防止を目的に行うリハビリです。

当院の循環器内科では、医師や理学療法士、栄養管理士といったスタッフがそれぞれの専門分野をいかしながら、運動療法や食事療法の指導にあたる、包括的な心臓リハビリテーションの提供を目指しています。

当院は、160床の病床を有する重症心身障害児(者)病棟を開設し、重度の知的障害と肢体不自由を同時にかかえる心身障害児(者)への入院介護ケアを行っています。医師とコメディカルスタッフが連携して行うチーム医療によって、よりよい療養生活の提供を目指しています。

当院が開設するポストNICUでは、人工呼吸器などの医療ケアを長期間必要とする新生児を受け入れています。ポストNICUとは、NICU(新生児集中治療室)での治療を終えたあとも、退院することが難しい新生児を受け入れる病棟です。NICUから在宅療養へのスムーズな移行を可能にする中間施設であることに加え、自宅で呼吸器を使用している新生児の一時的な受け入れ先としても機能しています。

20072007年に神経難病センターを開設して、筋萎縮性側索硬化症ALS)などの神経難病患者の受け入れを開始しました。現在では愛媛県の領域別難病拠点病院としての役割を果たしています。

当院は、会合・ミーティングなどを実施することで、東温市や松山市をはじめとする周辺地域の病院や介護老人保健施設などとの連携強化をはかってきました。連携を強化することで、高度な急性期医療を必要とする患者さんを愛媛大学医学部附属病院や四国がんセンターといった近隣の大きな病院へすぐに紹介できる医療連携体制を構築してきました。これに加え、退院後に介護が必要な患者さんを、地域の介護老人保健施設や老人ホームへと紹介する連携体制も整えています。

愛媛大学医学部附属病院はすぐ隣にあり特に良好な協力関係を築いており、高度急性期医療を必要する患者さんは愛媛大学で、一般的な急性期医療を必要とする患者さんは当院で治療を行うという役割分担をはかってきました。

また、東温市内の医療機関に在籍する医師や開業医の先生方とは、しっかりとした協力関係を築いています。急性期医療が必要な患者さんがいらっしゃれば、開業医の先生方が気軽に当院へ紹介してくれています。

松山市医師会の要請を受けて、2016年4月より松山医療圏域の輪番制二次救急に参加しています。輪番制救急とは、参加する医療機関が日替わりで救急搬送の受け入れを担当するシステムのことです。当院は、8日に一度のペースで松山医療圏内の救急患者を受け入れています。

また、当番日には愛媛大学医学部に在籍する研修医が研修の一環として診療に参加できるようにすることで、救急医療の現場を学んでもらっています。

当院で働いてくれている看護師には「病気ではなく患者さんと向きあって職務にあたってほしい」と伝えています。附属機関である看護学校の学生にも同様に、患者さんの気持ちに寄り添う優しい看護を提供するよう教育しています。そのためか、当院には心のこもった看護を提供する看護師が多いように感じます。

当院は、周辺の病院や介護施設、開業医の先生方などと密に連携をはかることで、患者さん一人ひとりに適切な医療を提供できる体制の構築に努めています。これからも地域の医療機関との連携体制を強めて、よりよい医療提供を目指していきます。

国立病院機構に所属する医療機関には、臨床研究の機能を持つことが義務付けられています。当院も、その一員として臨床研究に取り組んできました。臨床研究部を設けることで研究がしやすい環境を整え、また研究のための予算を用意するなど、さまざまなサポートを行おこなっています。

私は、研究がよい医師になるための大切な要素であると考えています。研究マインドをもって医療と向き合うことで、提供する医療の質を高めることができると思います。特に若い医師には臨床研究に取り組み、医療に対する広い視野と自身の専門分野に関する多くの知識を身につけてほしいと思っています。

当院は国立病院機構全体で取り組む臨床研究に参加しているため、組織の一員として研究に取り組むこともできます。自身の研究に取り組むとともに、ぜひ共同研究にも参加してください。

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