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知ってほしい甲状腺のこと~5月25日は世界甲状腺デー~ レポート

知ってほしい甲状腺のこと~5月25日は世界甲状腺デー~ レポート
宮内 昭 先生

医療法人神甲会 隈病院 名誉院長

宮内 昭 先生

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この記事の最終更新は2018年08月01日です。

5月25日の世界甲状腺デーに伴い、大阪よみうり文化センター主催、日本甲状腺学会等の共催により甲状腺疾患についての市民健康講座が開催されました。講座は5月19日、20日、27日の3日間にわたり行われ、多くの甲状腺の専門家が講演されました。本記事では、5月19日に行われた隈病院 外科科長の木原実先生の講演と、5月27日に行われた隈病院院長の宮内昭先生の講演をダイジェストでお伝えします。

提供:隈病院

木原実先生は「甲状腺にできものがあるって言われたら?」をテーマに講演されました。

「できもの」とは、しこりや腫瘍のことです。

一般的に、甲状腺に腫瘍ができても症状は現れにくいです。そのため、甲状腺腫瘍は検診などでみつかることが多いです。

病気が進行し、腫瘍が大きくなったときには、・声がかすれる

  • 圧迫感がある
  • 飲み込みにくい
  • 息が苦しい
  • 首を触るとしこりに触れる

などの症状が現れることがあります。

甲状腺腫瘍の有無を調べる検査としては

  • 視触診
  • 超音波検査(エコー)
  • 血液検査
  • CT

などがあります。

上記の検査で甲状腺に腫瘍があるとわかった場合、穿刺吸引細胞診によって腫瘍が良性なのか悪性なのか、悪性であればどういった性質のものなのかを調べます。

CT…エックス線を使って身体の断面を撮影する検査。

穿刺吸引細胞診…腫瘍の一部を採取し、顕微鏡で観察する検査。

提供:隈病院

腫瘍というと悪性のものを思い浮かべる方も多いと思いますが、甲状腺にできる腫瘍の場合、約9割は良性のものです。良性の腫瘍は、多くの場合、日常生活に支障をきたすことはないため、経過観察が基本です。まれに良性でも、がんが合併したり増大したりするケースがあるため、場合によっては手術を実施します。

甲状腺がんは、その他の種類のがんと比較すると予後がよいといわれています。たとえば、国立がん研究センターの部位別10年相対生存率のデータ(2002~2006年追跡例)によると、甲状腺がんの患者さんの10年後の生存率は、男性が87.1%、女性が94.8%でした。しかし、決して100%ではないためしっかりとした治療が必要です。

甲状腺の悪性腫瘍の治療は

  • 手術
  • アイソトープ治療
  • 放射線外部照射
  • 薬物治療(抗がん剤など)

を組み合わせて行います。

手術

甲状腺がんの手術では、がんが大きい場合や、がんが甲状腺の左右にある場合は、甲状腺の全摘出と周囲のリンパ節を郭清(切除)します。がんが甲状腺の片側だけにある場合は、がんがあるほうの甲状腺だけを摘出します。

甲状腺を摘出することで、必然的に甲状腺ホルモンの分泌が減少します。そのため、術後は必要に応じて甲状腺ホルモン剤を服用します。また、反回神経という首にある神経を手術中に傷つけて麻痺させてしまったり、がんが反回神経を巻き込んでいて神経ごと摘出したりした場合は、術後患者さんの声がかすれるという合併症も起こります。そのため、反回神経の摘出が必要な場合は、色々の方法で反回神経を再建すると声帯の動きは回復しませんが声は正常近くまで回復します。腫瘍を摘出するだけではなく、患者さんの術後の生活のことも考えながら手術をすることが大切です。

合併症…ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状。

アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)

アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)とは、放射線ヨウ素の入ったカプセルを服用する治療法であり、手術で甲状腺を全摘出した後に開始します。甲状腺がんが他の臓器に転移した患者さんに対して実施します。また、甲状腺がんだけでなくバセドウ病の治療でも使用します。

甲状腺はヨウ素を取り込むことによって、甲状腺ホルモンをつくり出します。そして、甲状腺から発生したがんも甲状腺と同じく、ヨウ素を取り込む性質を持っています。その性質を利用したものがアイソトープ治療です。放射線ヨウ素を入れたカプセルを甲状腺がんの患者さんが服用することで、全身に放射線ヨウ素が流れていきます。そして、転移した甲状腺がんが放射線ヨウ素を取り込むことによって、放射線とがんが闘う仕組みです

甲状腺がんのなかにはさまざまな種類が存在し、その1つに乳頭がんがあります。そして、サイズが1㎝以下の乳頭がんを微小がんといいます。微小がんは、がんの一般常識である「早期発見・早期治療」に当てはまらず、時間が経過しても増大する可能性が低いがんです。そのため、低リスクの微小がんに対しては積極的に治療を行う必要はありません。

(微小がんの非手術経過観察について詳しくは、宮内昭先生の講演ダイジェストでお伝えします。)

提供:隈病院

甲状腺にできもの(腫瘍)がみつかっても、その多くは良性です。良性腫瘍の場合、ほとんどは経過観察だけで特別な治療は必要ありません。しかし、悪性の腫瘍、つまり甲状腺がんの場合は、がんの種類や性質に応じた治療が必要です。なお、微小がんの場合は、手術をせず経過観察をすることも可能です。

提供:隈病院

隈病院院長の宮内昭先生は、「甲状腺のしこり(診断と治療、積極的経過観察)」をテーマに講演されました。

甲状腺は喉仏の下にあり、親指くらいの大きさをしています。大きい臓器ですが柔らかいため、手で首を触っても分かりません。もし触れるとすれば、それは甲状腺が大きくなっているか硬くなっているかのどちらかであり、異常な状態です。

甲状腺が全体的に腫れている場合は

といった病気が考えられます。

甲状腺が部分的に腫れている場合は、良性、または悪性の甲状腺の腫瘍(しこり)の可能性があります。甲状腺の悪性腫瘍には

  • 乳頭がん
  • 濾胞(ろほう)がん
  • 低分化がん
  • 未分化がん

などの種類があります。

提供:隈病院

超音波(エコー)などの検査で甲状腺腫瘍と診断された場合は、穿刺吸引細胞診を実施します。穿刺吸引細胞診では、超音波で患者さんの甲状腺をみながら腫瘍に針をさし、腫瘍の一部を吸引します。そして、吸引した腫瘍をプレパラートに吹き付け、顕微鏡で観察する検査です。細胞の形から、良性か悪性かどうか、どの種類のがんかを鑑別することができます。甲状腺がんの種類や性質によって治療方法が変わってきます。

先にも述べたように、甲状腺がんの種類や性質によって適した治療法は異なります。なかでも低リスクの微小がん(1㎝以下の乳頭がん)に対して隈病院では、積極的経過観察という、がんがみつかってもすぐに手術はせず、経過をみるという治療法を推進しています。

なお、高リスクの微小がんとは

  • リンパ節転移、遠隔転移がある
  • 周囲の組織にがんが広がっている(浸潤している)
  • 細胞診の結果、悪性度が高いと判断されたもの
  • 今までの経過で増大が確認されたもの

です。高リスクの微小がんに対しては、手術などの治療を実施します。

微小がんは世界的にも増加

近年、日本を含め世界的に甲状腺の微小がんの患者数は増加傾向にあります。しかし、甲状腺がんが原因で亡くなる患者さんの増加はみられません。それに加えて、甲状腺がん以外の死因で亡くなった患者さんの解剖をすると、多くの方の甲状腺に微小がんが発見されました。これは、ほとんどの患者さんは微小がんがあったとしても無症状であり、治療をせずに生活していても問題がなかったということが考えられます。

隈病院では1993年から積極的経過観察を推奨

提供:隈病院

微小の乳頭癌で手術をした患者さんが、手術の合併症により苦しむケースもあり、甲状腺の微小がんをどのように扱うのかが大きな問題となっていました。

上記の理由から、超音波検査やCTスキャンなど検査機器の発達により微小がんをより高精度に発見できるようになったものの、ほとんどの微小の乳頭がんは手術をしなくても大きな問題にはならないのだと考えました。また、すべての乳頭がんの患者さんの手術をすると、手術のよい点よりも、患者さんの心身への負担や合併症を発生する手術の悪い点が上回ってしまうと考えたのです。

そのため、隈病院では1993年からリンパ節転移や遠隔転移、甲状腺被膜外進展などがない低リスクの微小がんに対しては、積極的経過観察を勧めるようになりました。定期的な検査をしながら、がんが大きくなった場合や患者さんが手術を望む場合は手術を実施しています。

そして、日本のガイドライン「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010年版」、アメリカの甲状腺学会のガイドライン「ATAガイドライン2016年版」でも、低リスクの微小乳頭がんに対しての積極的経過観察が認められました。

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