あがの市民病院は、水原郷病院として1954年に発足、2015年に現在の新病院建設を機に改名しました。新潟県阿賀野市内で唯一の総合病院として、急性期、慢性期、回復期医療を幅広く手がけています。また診療機能を集約させた3つのセンター機能により、地域に欠かせない医療機関として活躍しています。
病院の特徴や地域に向けた情報発信等について、病院長の藤森勝也先生にお話を伺いました。
16診療科を有するあがの市民病院では、「阿賀野市民の健康寿命を延伸する」という目標を達成するため、2015年10月の新病院開設を機に、糖尿病・生活習慣病予防治療センターと地域医療・連携センター、2018年4月には消化器病センターをそれぞれ設置しました。
糖尿病・生活習慣病予防治療センターでは、生活習慣病の予防・治療を重視した診療を新潟大学と共同で実施しています。
糖尿病は自覚症状が少なく、気づいたときには病気が重症化していたり目や腎臓などの臓器で障害を起こしたりする可能性が高いため、早期発見と早期治療、そして病気に対する理解が重要です。当センターでは糖尿病を専門とする医師が診療に当たるほか、地域の医療機関との連携や、栄養師による食事指導や栄養相談に取り組んでいます。また地域住民(14歳と20歳時)の血液検査の結果や推移をもとに、生活習慣病予防に関する研究や論文発表も積極的に行っています。
地域医療・連携センターでは、従来から機能していた地域医療連携室、医療福祉相談室、居住介護支援事業所、訪問看護ステーション、退院支援・在宅医療といった関連部門を1つに集約しました。関係する職員同士の連携がより緊密になり、入退院や他院への転院調整とその手続き、在宅医療を受けている患者さんとそのご家族に対する支援や相談受付など、諸機能がさらにスムーズになりました。
消化器病センターでは、健康寿命を短縮させる原因になることが多い消化器がんをはじめ、生活習慣病に関連する消化器疾患の診療を行っています。また消化器疾患と骨格筋量および骨格筋力の低下を特徴とするサルコペニアとの関係性なども、積極的に研究しています。
病気の早期発見と早期治療のため、各種健康診断の実施にも力を入れています。病院内にある健康管理センターが中心となり、特定健診、がん検診、人間ドックなど施設内検診を実施しています。
新潟県全体で医師不足が深刻化していますが、あがの市民病院のある阿賀野市も例外ではありません。
限られた医療資源をより効率的に利用するため、そして地域医療構想の実現に向けて、2014年10月に所有する病棟の一部を地域包括ケア病床へと転換しました。また介護老人保健施設「五頭の里」を有しており、要介護者に対するケアも充実しています。
急性期を脱した患者さんに対して、慢性期や回復期、ご自宅での療養を希望される方には在宅療養に可能な限り対応できるよう、医療、介護、生活支援などのサービスを切れ目なく提供できる存在であり続けたいと、職員一同懸命に取り組んでいます。
訪問看護では、看護師が療養中の患者さんのもとを訪問して、看護サービスの提供や療養生活に対する助言、医師の診療が伴う場合には診療補助を行います。
当院では1994年8月に訪問看護ステーションを開設して訪問看護を開始、24年以上にわたって地域にお住まいのみなさんの健康を看護の面からも支え続けてきました。高齢化に伴い在宅医療に対する需要が増加しているため、住み慣れたご自宅で過ごしたい方をサポートする訪問看護の重要性は今後ますます高まると考えています。
限られた医療資源を守り活用するためには、健康であることの大切さ、健康管理の重要性について、地域のみなさんに向けて発信することも病院の大切な仕事のひとつです。
病気を治療するだけでなく、正しい医療情報を学んでいただくための場としても病院を活用していただくため、「守ろう地域の医療とみんなの絆」をテーマに掲げ、地域のみなさんに向けた健康講座や出前講座を開催、中学生には、喫煙の害やアルコール・薬物依存症などについてお伝えしています。
協力型の臨床研修病院である当院では、毎年地域医療研修を希望する若手医師を受け入れており、上級医による指導のもと初診外来の一部を担当してもらいます。医療面接から、どのような検査が必要なのか、薬剤の処方、入院が必要かどうかの判断、患者さんと接することで得る気づき、一日の終わりに上級医から受けるフィードバックは、その後続く医師人生を送るうえでも非常に貴重な体験となるでしょう。
医師の仕事は急性期医療から慢性期、回復期、在宅医療と幅広いため、年齢やキャリアプランを考慮して、活躍しやすい職種です。現に、当院に勤務する医師の年齢は20代から70代までと非常に幅広いです。
このキャリアパスを知ってもらうため、若手医師には「なんでも勉強する」という気持ちと柔軟な姿勢を持っていただき、なんでも診るゼネラリストと、自身の専門領域を磨いたスペシャリストのふたつの姿を目指していただきたいと考えています。
また休みの日には、美味しいものを食べたり観光をしたりして気持ちをリフレッシュすると同時に、その土地ならではのよいところを知る機会をなるべく作ってください。
少子高齢化と人口減少が進むなか、私たちあがの市民病院は、地域住民のいのちを守るため、良質な医療を提供し、地域医療のハブとなる病院、そして地域のみなさんから愛される病院であり続けたいと考えています。そのためには、地域のみなさんとの相互理解が欠かせません。医療のことでわからないこと、不安なことがあれば、いつでもご相談ください。私たちあがの市民病院の職員がお話を伺います。
あがの市民病院 病院長
日本内科学会 総合内科専門医・内科指導医日本呼吸器学会 呼吸器専門医・呼吸器指導医日本アレルギー学会 アレルギー専門医日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定医・指導医日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・気管支鏡指導医日本医師会 認定産業医
1985年自治医科大学卒業後、新潟大学第二内科に入局し、荒川正昭教授に師事した。その後、下条文武教授、鈴木榮一教授、成田一衛教授、菊地利明教授に師事した。2007年から新潟県立柿崎病院長を務める。2017年から現職。
全国国民健康保険診療施設協議会理事、新潟県国民健康保険診療施設協議会会長、新潟県国民健康保険診療報酬審査委員会審査委員(2015年に10年継続表彰)、新発田北蒲原医師会理事、日本アレルギー学会代議員、日本東洋医学会代議員、日本プライマリケア連合学会代議員、日本医薬品安全性学会理事、日本呼吸器学会合同北陸地方会評議員、日本咳嗽学会評議員、新潟アレルギー研究会会長、日本東洋医学会新潟県支部会長などを務める。
藤森 勝也 先生の所属医療機関