院長インタビュー

地域の脳神経疾患医療を介護システムの構築を担う病院であるために―倉敷平成病院の取り組み

地域の脳神経疾患医療を介護システムの構築を担う病院であるために―倉敷平成病院の取り組み
高尾 聡一郎  先生

社会医療法人全仁会 倉敷平成病院 理事長

高尾 聡一郎 先生

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この記事の最終更新は2018年12月28日です。

岡山県倉敷市にある倉敷平成病院は、1988年に高尾病院として開設された、脳神経疾患を専門とする病院です。1989年に現在の名称に変更しました。開院以来多くの脳神経疾患の患者さんの診療を行ってきた倉敷平成病院では、現在どのような取り組みを行っているのでしょうか。理事長の高尾 聡一郎先生にお話を伺いました。

 

倉敷平成病院の外観(写真提供:倉敷平成病院)

倉敷平成病院は、救急から在宅まで切れ目のない医療を提供する病院として、脳神経疾患の急性期から回復期、在宅医療までをトータルでサポートしています。

法人内には老人保健施設やグループホーム、訪問看護ステーションやデイサービスなど多くの介護施設・サービスも整備され、高齢化に伴う地域のニーズに幅広く対応しています。

脳卒中認知症など脳神経系の病気は、ご高齢の方に発症することも多いため、糖尿病や高脂血症、高血圧などの基礎疾患を有していることも少なくありません。

そういった合併症のある方でも安全に受け入れることができるよう、内科や整形外科、循環器科といった複数の診療科の医師を配置しています。

当院は、2012年に岡山県より認知症疾患医療センターの指定を受けました。センター化することで、認知症診療に関わるさまざまな職種をチームとして集約し、連携して対応しやすい体制を構築しています。

地域の高齢化が進むにつれて、認知症の患者さんは増加傾向にあります。一方で、その診療はさまざまな配慮を必要としており、医療機関では敬遠されがちです。我々は脳神経疾患の専門病院として、増え続ける認知症患者さん、またご家族の支援にも力を注いでいます。

 

認知症疾患医療センタースタッフ(写真提供:倉敷平成病院)

2017年4月、新たに倉敷ニューロモデュレーションセンターを開設しました。ニューロモデュレーションとは、体内に埋め込んだ神経刺激装置を通して脳神経に微弱な電気刺激を与え、疾患の改善を図る治療法のことです。パーキンソン病ジストニアてんかんなどの疾患に効果があると言われています。

まだ一般には認知度の低い治療方法ですが、だんだんと国内の注目度も高まってきており、国内外問わず他院からの見学や視察の受け入れを行っています。

 

倉敷ニューロモデュレーションセンターで行う定位脳手術の様子(写真提供:倉敷平成病院)

がん、心臓病、脳卒中などいわゆる生活習慣病が大きくクローズアップされています。これらの病気を発症していない方でも、病気を引き起こす危険因子をいくつも抱えていると言っても過言ではありません。

健康で満足のいく生活を送ることができるよう、予防医学の面より1993年に脳ドックセンターを開設し、病気の予防と早期発見に取り組んでいます。病気にならないよう、一人ひとりに合った食事、運動など毎日の生活習慣の具体的な改善方法をわかりやすく指導しています。

 

脳ドックに用いる3.0テスラMRI(写真提供:倉敷平成病院)

美しくありたいという思いは、年齢性別を問わず多くの方が持ち合わせているものだと思います。その希望を叶えることは、体の健康だけでなくメンタルヘルスの観点からも大切だと考え、美容外科や形成外科、婦人科などの診療機能も合わせた総合美容センターを開設しました。

病院らしさを感じさせない和やかな雰囲気の内装で、担当の医師がカウンセリングを含め一貫した診療を行っています。また、プライバシーにも配慮し、受付や待合スペースを一般外来と分けたつくりにしています。

患者さん、ご家族、地域の皆さまと職員のふれあいの場・意見交換の場として「のぞみの会」を、開院前の1982年より開催しています。当院の医師による勉強会や健康チェック・検査体験・創作や施設の見学会などを行っています。

ご参加いただいた方に喜んでもらえるよう、職種関係なく協力し合い、毎回半年ほどかけて準備をしています。

 

地域の皆さまが集まるのぞみの会の様子(写真提供:倉敷平成病院)

地域に切れ目ない医療と介護サービスを提供するために、職員一人ひとりが地域の医療と介護を担う組織の一員であると自覚を持って仕事に臨む姿勢が、我々の目指すものです。

高齢化が進むにつれ、介護を必要とする方は増え、必要重症度も上がってきています。そうした状況の中、日々の業務でうまくいかないことがあるとするならば、システムに問題があることが考えられます。そのため、業務に関する懸念や気づきを、現場で働く職員から汲み取ることも、グループとして必要だと思っています。

(写真提供:倉敷平成病院)

地域医療を担う臨床医としてまず必要なことは、全体を見ることのできる視野の広さだと考えます。我々は倉敷市の二次救急を担っていますが、救急だけでなくリハビリや介護など、患者さんのその後の人生を見通すことも同義です。患者さんは病気を治した後の人生を生きていかなくてはなりません。患者さんの今後の生活までを考えられる、広い視野や人間性が医師にとって大事なのではないかと思います。

手術などの治療を受けるだけで、治療の全てが終わるわけではありません。住み慣れた地域で生活を続けるためには、定期的な検診や介護などのサポートが必要になります。

当院では、患者さんの治療からその後の生活にまで関わっていける病院を目指し、診療を行っています。

医療は、時代の流れと共に変化していきます。しかし、救急から在宅まで患者さんを切れ目なくサポートするという信念は揺るがすことなく、地域の皆さまによりよい医療を提供し続けていきたいと思っています。

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