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第26回日本慢性期医療学会シンポジウム「治療可能な認知症? 最新のトピックから」講演レポート

第26回日本慢性期医療学会シンポジウム「治療可能な認知症? 最新のトピックから」講演レポート
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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この記事の最終更新は2019年05月28日です。

2018年10月11日(木)・12日(金)の2日間にわたり「超少子高齢社会 〜慢性期医療からの提言〜」をメインテーマに、第26回日本慢性期医療学会のシンポジウムが開催されました。

10月11日(木)に行われたシンポジウム「治療可能な認知症?最新のトピックから」では、熊谷賴佳(くまがい よりよし)先生(医療法人社団京浜会 京浜病院 院長)と、田中志子(たなかゆきこ)先生(医療法人大誠会 内田病院 理事長)が座長を務め、講師として久保田有一先生(TMGあさか医療センター 脳卒中てんかんセンター センター長)、渡辺裕貴(わたなべゆたか)先生(医療法人天仁会 天久台病院 精神科医師)のお二人が講演を行われました。

近い将来、国内の認知症患者は約700万人にものぼるといわれています。「65歳以上の5人に一人が認知症」という社会を目前に、本記事では認知症とよく似た症状を持つ「高齢者てんかん」の症例や識別方法、治療法の最新知見をお伝えします。

はじめに、本シンポジウムの座長の一人である医療法人大誠会 内田病院 理事長の田中志子先生が登壇され、高齢者てんかんの症状について説明されました。

田中先生

田中志子先生:

高齢者てんかんは、けいれん発作よりも、

  • 声をかけても反応がなくぼーっとして見える
  • 意識がもうろうとしている
  • 普段と違った行動をとる

などの複雑部分発作が多いのが特徴です。その症状の類似性から認知症と誤診されることもあるため、本シンポジウムでは高齢者てんかんに造詣の深いお二人の先生の講演を拝聴し、本協会からも症例を提示しながら、皆さんと一緒に高齢者てんかんについて学びたいと思います。

次に田中先生はレビー小体型認知症の疑いで他院から紹介された、80歳の男性患者さんの症例を提示されました。

レビー小体型認知症…脳の神経細胞の中にレビー小体といわれる円形の物質が現れる病気で、アルツハイマー型認知症脳血管性認知症と共に「3大認知症」といわれています。

症例:

患者さんは80歳の男性。夕食後急に左下腿が動かなくなり、A病院に搬送されました。そこで脳梗塞の診断を受け、1か月後にリハビリテーション病院へ転院されています。転院当初からせん妄のような症状があり、空中を掴むような動作をしながら「扉がある」などと幻視を疑わせるような言動もみられました。

せん妄・・・幻覚が見えたり、おかしなことを言い出したり、興奮し安静にできなくなる意識障害。高齢者に多く発症がみられる。

診察に当たったA病院の医師は、男性の視空間認知機能の低下や低血圧、便秘、立ちくらみを伴う幻視などの状態から、レビー小体型認知症と診断し、当院(医療法人大誠会内田病院)へ紹介されました。

当院の初診で男性は、めまいや意識障害を訴えられ、検査中にはけいれん発作をおこしました。それらの症状からてんかんを疑い、抗てんかん薬を投与したところ、男性はみるみる回復され、退院されています。

先生はレビー小体型認知症でみられる症状の一部が、てんかんの症状とよく似ていることを示され、「鑑別の必要な疾患として常に高齢者てんかんを頭に置いておく必要がある」と最後に述べられました。

続いて、医療法人社団京浜会 京浜病院の院長であり、本シンポジウムの座長を務める熊谷賴佳先生から、3人の患者さんの症例が紹介されました。

熊谷先生

症例1:

1人目はさまざまな医療機関を受診したものの「よく分からない」と診断され、当院(京浜病院)へ紹介された52歳の女性です。女性は不整脈の症状から始まり、体重の減少・うつ病のような寂しさ・相手の声が聞こえない・手が震える・焦点を一点に見据えて目を見開く、などの状態が続きましたが、検査では異常が現れませんでした。

その後、当院で行ったCTスキャンで脳の右側頭葉内の異常、MRI検査で海綿状血管腫という脳腫瘍が見つかり、側頭葉てんかんによる自動症と診断されています。その後の抗てんかん薬の服用で、全ての症状がおさまりました。

自動症・・・発作の種類は脳の場所によって異なるが、代表的な症状に、ふらふら歩きまわる、手をたたく、舌打ち、口をクチャクチャさせる等がある

症例2:

2人目は若年性認知症と診断され、抗認知症薬を1年半服用したものの、症状が改善しなかった男性です。脳波検査でたまたまスパイクが見つかり、抗てんかん薬の服用で症状が改善しました。現在では病気を発症する前と同じように、社長として勤務されています。

スパイク・・・脳内の細胞であるニューロンが急激に上昇し下降する電位変化の呼称

症例3:

3人目はレビー小体型認知症と診断された78歳の女性です。徘徊(はいかい)せん妄などの症状があり入院していましたが、入院中も動き回る、失神発作などが続いていました。もともと優しく穏やかな性格の方でしたが、「帰る」と言ってご主人を蹴飛ばし、「死にたい」と自殺さえほのめかされました。これらの状態から精神疾患を疑い、専門医を紹介しましたが、認知症による症状と診断され、当院へ戻ってこられました。

熊谷先生はここで患者さんの様子を撮影した動画を流し、会場全体に問いかけました。

「皆さんどうでしょうか。実際に現場でこの患者さんを見たら、認知症による BPSD、夜間せん妄、または夜間行動障害と鑑別がつきますか?これが複雑部分発作というてんかんです。もしかしたら、こんな患者さんが介護現場や療養型の病院にはもっといるのかもしれません。私たちはてんかんを、認知症と勘違いして見落としているのではないでしょうか」

BPSD・・・「認知症の行動と心理症状」を表す“Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia”の頭文字。認知症患者にしばしば生じる、幻覚、妄想、うつ、徘徊などが主な症状

次に講師として、TMGあさか医療センター脳卒中てんかんセンター センター長の久保田有一先生が登壇されました。

久保田先生

久保田先生は「認知症疾患診療ガイドライン2017」に記載されている「患者を認知症と診断する前に除外して考えるべき病気」の中に「特殊なてんかん」があると言及されました。それはMRIやCTでも判断が難しい「器質的病変が明確ではないてんかん」だとご説明されたうえで、67歳の男性患者さんを症例として挙げています。

症例1:

首都高速道路で2回も追突事故をおこした67歳の男性。前方に停車していた車に衝突するものの、本人には事故の記憶がありませんでした。近くの病院でMRIや脳波検査を行いましたが、異常は見つからず、そのまま診断はうやむやになってしまいました。

男性は高齢者てんかんに関する私の記事を読み、来院され初診にいたりました。最初はてんかんではないように思いましたが、念のため検査を続けた結果、男性がてんかんを患っていることが判明しました。

久保田先生が行ったのは、1週間の間100時間にわたり脳波を測定する「ビデオ脳波検査」です。男性はその間のモニタリングで一度だけ発作を起こし、その結果、てんかんであることが分かりました。

「再発率の高いてんかんは、服薬を続けることで発作を止めることができる」と久保田先生は続け、「高齢になると多くの方がさまざまな病気を合併しているので、薬の相互作用には気をつけなければならない」と強調されました。

最後に、医療法人天仁会 天久台病院の精神科医である渡辺裕貴先生が登壇し、高齢者てんかんの症状の特徴や、認知症との合併率の高さ、家庭での鑑別方法についてお話されました。

渡辺先生

渡辺先生:

高齢者てんかんは、意識障害やもうろう状態になることが多く、けいれん発作が少ないのが特徴です。また、ごくまれに意識障害が数時間から数日間にわたって続くことがあるため、似た症状が現れる認知症と鑑別して診断する必要があります。ですが現実には、そのふたつを合併している患者さんもいらっしゃるため、医師は診断する際に「てんかんと認知症の合併」を念頭に置くことが大切です。

また、認知症以外でてんかんの鑑別対象となる疾患には、レム睡眠行動障害(以下RBD)があります。RBDは夜間寝ている間に症状が現れるため、医師の判断が難しい病気です。

そこで私が考案したのは、家庭用の防犯カメラなどで睡眠時の様子を撮影する方法です。この方法なら、たとえ1か月に1回しか発作がない方でも、その様子を記録として収めることができますし、どんなときに発作が起きたのか、部屋のどこに危険物があるかなども把握することができるため、医師が実生活に基づいたアドバイスをすることが可能です。

各演者の講演後には、座長である熊谷先生が再度登壇されました。

熊谷先生は「専門の先生に動画を交えてお話しいただく機会は大変まれであり、貴重なシンポジウムになった」と総括され、感謝の意を述べられました。

熊谷先生

超高齢化社会を迎えた日本において、てんかん認知症ほど知られた病気ではありません。こうして最新知見が共有されることは、誤診を防ぎ、患者さんの未来を守る啓発にもつながります。シンポジウムの最後には、会場との質疑応答も行われ、参加者はよりいっそうの理解を深めました。

かくして、第26回日本慢性期医療学会シンポジウム「治療可能な認知症? 最新のトピックから」は幕を閉じました。

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