福岡久留米市にある独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院は、地域の医療機関や行政と共に、地域の方が医療面で安心して生活できるような地域づくりを進めています。特に同院では、乳がんや婦人科疾患など、女性特有の病気の診療と患者さんへのサポートに力を入れています。
同院の歴史と診療体制、そして同院が特に注力している女性のための総合診療について、病院長を務めている田中眞紀先生にお話を伺いました。
当院は、久留米市内にあった社会保険久留米第一病院が前身の病院です。2014年4月に、その社会保険病院と、全国にあった厚生年金病院と船員保険病院の3グループが統合され独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)になったのを機に、病院名を現在のJCHO久留米総合病院に変更して、新たにスタートしました。
当院の特徴は、医療、保健、福祉の3つの機能を有していることです。医療の分野では、総合病院として通常の診療を展開していますが、とくに女性総合診療科「なでしこ」で女性患者を対象とした診療もしています。保健の分野では、健康管理センターを有し、地域の皆さんの生活習慣病や各種がんの早期発見を目指した健康診断を実施しています。福祉の分野では、介護老人保健施設を有し、介護の必要な高齢者が家庭や社会に復帰できるよう、リハビリ・看護・介護を提供しています。
医療・保健・福祉の3つの機能を有する当院は、これからの超高齢化社会に必要とされる地域医療と地域包括ケアを提供可能な病院として、地域の皆さんが安心して生活できる地域づくりを進めています。
前身の社会保険久留米第一病院は、1946年に開設して以来、地域における総合病院として機能してきました。JCHOへ移行した現在も、主要な診療科をひととおり有しており、地域の皆さんに向けて医療を幅広く提供し続けています。
2002年に、女性総合診療科「なでしこ」を開設しました。女性総合診療科「なでしこ」では、女性特有の症状や疾患をあつかい、解決できない場合には専門医につなぐ診療に注力しています。検査や治療のため入院される女性の患者さんのために女性病棟を開設し、患者さんがよりリラックスした状態で過ごしていただける療養環境をつくりました。
女性総合診療科「なでしこ」では、乳腺外科、内科、産婦人科、泌尿器科の医師が所属していて、女性の一生涯で起こりうるさまざまな病気を診療しています。患者さんのなかには、女性特有の病気や悩みを男性には相談しにくいと感じる方もいることから、当診療科では、診察も、検査も、女性の職員が担当します。
乳腺外科では、健康管理センターでの乳がん検診、乳腺外来での診察と精密検査、乳がんに対する治療として手術・抗がん剤治療・放射線治療などを実施します。医師だけでなく看護師、薬剤師、技師などのスタッフによる乳腺チームを結成して、診療以外にも、治療中の生活に対する医療的な支援、不安や疑問の相談など、患者さんとそのご家族を中心に考える医療の提供に努めています。
産婦人科では、不正出血や痛みなどの症状や、子宮頸がん検診で要精密検査の方に検査をしたり、子宮筋腫や卵巣のう腫といった主に良性の婦人科疾患に対する手術を行ったりしています。産婦人科で行う手術は、腹腔鏡をおへそから体内に入れる腹腔鏡単孔式腹腔鏡手術やマイクロ波子宮内膜アブレーション手術など、体に傷跡を極力残さない手術方法を積極的に導入しています。妊娠が分かった方や精密検査で悪性腫瘍と診断が出た方に対しては、近隣の医療機関をご紹介しています。
健康管理センターでは、事業所健診や自治体の各種健診、人間ドックを実施しています。さらに週に半日ですが乳がん検診の日を別枠で設けています。当センターは、病院併設型の健康管理センターですので、健康診断で異常が見つかった場合には、当院での診察や精密検査を予約することができます。
1996年に開設した介護老人保健施設は、介護が必要な高齢の患者さんを対象にした施設です。病院と在宅療養の中間施設として、患者さんに対してリハビリテーション・看護・介護を行うことで、社会生活やご家庭での生活への復帰をお手伝いしています。
医療従事者は目の前の患者さんに対して愛情を持って接するのは当たり前のことですが、患者さんの悩みや不安を少しでも軽くしたい、という想いから、乳がん患者さんを対象にした「乳がん こころとからだおしゃれ教室」を開催することにしました。
「乳がん こころとからだおしゃれ教室」では、日本看護協会が認定する乳がん看護の資格を有する認定看護師が中心となり、抗がん剤の治療中の患者さんが女性らしくいきいきと生活しながら、予定された治療を完遂できるように、次のようなサポートを行っています。
乳がん治療では、乳房の切除以外にも、抗がん剤治療の副作用による脱毛や肌の変化など女性としてはつらい副作用を経験します。病気や治療で生じた不安によって治療が継続できなくなることもあります。おしゃれをして仲間と会って話すことで心が軽くなることも多いのです。私たち医療従事者も、皆さんの悩みや不安を知ることで、ストレス軽減や不安解消のための方法をご提案できることもあります。乳がんに対する不安、治療に対する疑問、病気や治療で生じた心身の苦しみは、遠慮なくスタッフにお伝えください。
地域の皆さんに「この病院のスタッフに相談してよかった」「ここで働く職員にも自分の家族を安心して任せられる」と思ってもらえるような病院づくりを進めてきました。
コミュニケーションはお互いを知るための基本です。話すことではじめて分かることも、たくさんあります。不安なことや心配なことは、遠慮なく当院のスタッフにお伝えください。一緒に考え、解決策を探していきましょう。
当院にとって職員の皆さんはかけがえのない宝物です。医療に対して熱い気持ちを持つ皆さんが、目の前の患者さんのためにできることを考えて、惜しむことなく努力を重ねてきたおかげで、今の当院があります。院長として、皆さんが持つ能力を最大限引き出せるような環境づくりを進めてまいります。
独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院 病院長、久留米大学 医学部 客員教授、久留米大学 認定看護師教育センター 非常勤講師、福岡県医師会 理事
独立行政法人 地域医療機能推進機構 久留米総合病院 病院長、久留米大学 医学部 客員教授、久留米大学 認定看護師教育センター 非常勤講師、福岡県医師会 理事
日本外科学会 外科専門医・指導医日本乳癌学会 乳腺専門医・指導医日本消化器外科学会 消化器外科認定医日本臨床腫瘍学会 暫定指導医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
1980年に久留米大学医学部を卒業、同学第一外科学講座入局して医師のキャリアを歩みはじめる。社会保険久留米第一病院(現在の独立行政法人 療機能推進機構 久留米総合病院)には、健診部長として1990年に就任。
同院の女性総合診療科「なでしこ」立ち上げに際し、前病院長のもとでチームリーダーとして活躍、同院を代表する診療科のひとつへと成長させた実績を持つ。また、「乳がん こころとからだおしゃれ教室」を企画・運営、乳がんで闘病中の患者さんの心身ケアにも注力する。
医師としての技量と、職員をまとめあげる手腕と実行力が認められ、2012年には病院長に就任した。患者さんから「この病院のスタッフに相談してよかった」「ここで働く職員にも自分の家族を安心して任せられる」とさらに信頼を寄せられる病院づくりのため、職員とのコミュニケーションと各人に適したマネジメントを重視する。
田中 眞紀 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。