1951年に結核療養所として設立された、一般財団法人杏仁会 江南病院(以下、江南病院)は、熊本市中央区に病院を構えています。同院は1962年に江南病院と改称し、その後、地域に密着した病院を目指し、増築や病棟転換をしました。現在は、地域の皆さんの健康を守る病院となるために、診療内容の充実や独自の取り組みを進めています。
どのようなときも地域の皆さんの健康をサポートするため同院が行っている取り組みについて、院長である内賀嶋英明先生にお話を伺いました。
当院は、地域の皆さんの多岐にわたるニーズに応える病院を目指しています。そのための取り組みのひとつとして、それ以前の回復期リハビリテーション病棟の機能に加え、病棟の一部を地域包括ケア病棟に転換いたしました。これによって、急性期治療を終えた患者さんのうち、引き続き在宅復帰に向けた治療やリハビリを要する方や、在宅療養を続ける方の一時入院などに対応できるようになりました。また、患者さんが退院後の生活に不安がなくなるまでサポートすることも可能です。
当院は、病棟転換やリハビリの充実に限らず、地域の皆さんのニーズに柔軟に応えるために、診療と独自の取り組みで、いかなるときも地域の皆さんを支えてまいります。
当院は結核療養所からはじまったこともあり、結核治療は開設から現在に至るまで当院の使命と考え、注力し続けてきました。当院には血液浄化センターがあり、血液透析が可能なため透析療法を行っている方で結核になってしまった患者さんに対しても、治療を行うことができる施設という特徴があります。
また当院では、呼吸器リハビリテーションや食べ物の飲み込みなどのリハビリや口腔ケア指導に力を入れています。これらリハビリによって、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や、近年高齢の方に増加傾向にある誤嚥性肺炎の患者さんの在宅復帰に向けて努力を重ねています。予防の面でも肺炎球菌ワクチンの接種を自由診療として8900円で実施しています。熊本市の場合は、2019年度に65歳以上100歳までの5歳刻みの各年齢になる方と、101歳以上の方に対して補助があり、自己負担額は4600円です。
整形外科では、腰椎の変性疾患に対する手術や加齢に伴う骨粗鬆症や、転倒などによって生じる骨折、股関節・膝関節の変形性関節症などの病気に対する治療に注力しています。特に変形性膝関節症に対する人工膝関節単顆関節置換術(UKA)を2018年4月から2019年3月までの期間に48件実施しています。
当科では、患者さんがご自身の足で歩くことができるよう、症状に応じた幅広い手術を提供しています。また、手術後には早期からリハビリを行い、できる限り早く自宅復帰できるようリハビリテーション科と連携して患者さんをサポートしています。
当科では、地域の皆さんが病気によって歩行困難になってしまうことを防ぎ、年齢を重ねても住み慣れた地域で生きがいを持って生活を続けられるように努めています。
リハビリテーション科では、患者さんの病気に応じたさまざまなリハビリを行っています。そのなかでも特に当院では、呼吸器リハビリテーションに力を入れて取り組んでいます。呼吸器リハビリテーションでは、呼吸器の病気の方に対して、運動療法を中心に食事内容や生活習慣の指導など多方面から患者さんの呼吸機能の回復を図ります。
当院では、1996年から熊本県内の医療従事者の方々向けに熊本呼吸器リハビリテーションセミナーを開催しています。このセミナーでは、外部から講師を招き、座学と実習を行っています。この取り組みによって、熊本県内の呼吸器リハビリのレベルを上げたいと考えています。
当院では、当院のスタッフがそれぞれの職務に必要な専門知識や技術をより深く学び、患者さんの治療に活かせるように、専門士養成コースを設けています。現在は、「摂食嚥下専門士養成コース」「栄養サポート(NST)専門士養成コース」「呼吸療法専門士養成コース」「整形外科疾患専門士養成コース」の4つのコースを実施しています。
これらの養成コースでは、症例実習を行うほか医師からの講義を受けるなどして、1年間かけて専門知識を学びます。修了後も、定期的にカンファレンスや勉強会を実施し、継続した学びの場を設けています。
当院では専門士養成を通して、スタッフ全体のレベルアップを図り、患者さんに寄り添う医療の実践に尽力いたします。また、地域のほかの施設の医療従事者の方々にも養成コースを受講していただき、地域全体で医療介護連携を図るとともに地域のレベル向上に努めています。
飲み込む力が低下すると、食べ物や唾液が誤って気管に入りやすくなるため誤嚥性肺炎にかかる可能性があります。誤嚥性肺炎を発症する要因のひとつに、口腔環境の悪化が挙げられます。
当院では、誤嚥性肺炎予防のために、歯科衛生士による口腔ケアを実施しています。入院中の患者さんに対して口腔清掃を行い、口腔環境を清潔に保つようにしています。以前から行っている手術前の患者さんへの口腔ケアは周術期の合併症防止につながります。
これからは、当院に留まらず、地域包括ケアの一環として周辺地域において広く口腔ケアに取り組みたいと考えています。
入院患者さんや在宅療養を続ける患者さんは、日々の変化が乏しくなってしまう傾向にあります。そのため、当院では病院ボランティアの皆さんに協力してもらい、患者さんとの対話や園芸、展示などを行っています。
このような活動によって、コミュニケーションを生み出す環境づくりに取り組んでいます。また、趣味を楽しむことを生きる喜びにつなげられるよう、演奏ボランティアによるコンサートや移動図書ボランティアによる本の貸出も実施しています。
当院では、地域の皆さんの心にも寄り添う病院ボランティアの活動に力を注いでいきます。
医療に携わる皆さんには、技術や知識に対する向上心を常に持ち続けてほしいと願っています。当院では、先ほどお話したように専門士養成コースを設け、勉強会や実習を行い、それぞれが医療人としてレベルアップに取り組める環境が整っています。
また、2016年には熊本県からブライト企業の認定を取得しました。これは、熊本県から「働く人がいきいきと輝き、安心して働き続けられる企業」と認められたということです。
これからも当院では、全ての職種のスタッフが向上心を持ち、成長し続けることができる環境づくりに取り組んでいきます。これらの取り組みによって、地域の皆さんにどのようなときも信頼していただける病院をスタッフ全員で目指していきます。
当院は、地域に密着した病院として急性期から回復期、在宅復帰までサポートしていきます。また、当院と同一法人の病院や介護施設とともに、地域包括ケアシステムの構築に向けて努力していきます。具体的には、熊本市認知症疾患治療センターを設置している病院のひとつである、くまもと青明病院や介護サービス全般を担う介護老人保健施設フォレスト熊本との連携体制を強化していく所存です。
当院は、災害時の一時避難所としての役割に加えて、災害時のライフラインにおいても重要な役割を果たします。2016年4月の熊本地震時には、井戸水を活用した医療用水の確保により、断水することなく多量の水を要する透析治療を継続し、さらには飲料水や生活用水も供給可能でした。
当院はこれらの取り組みによって、いかなるときも地域の皆さんの健康を支えられるよう、よりいっそう地域の皆さんのサポートに励んでまいります。
一般財団法人 杏仁会 江南病院 名誉院長
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