美容目的で使われる医療機器はさまざまにあり、どれを選択したらよいのか悩むことがあります。その中の1つにハイフというものがありますが、これは美容領域においてたるみ改善を目的として行われる治療法です。メスを使わないたるみ治療の代表的な方法であり、多くの機器が登場しています。本記事では、ハイフのメカニズムや効果、持続期間、リスクなどについて、詳しく解説していきます。
HIFU(ハイフ:high intensity focused ultrasound)は、高密度焦点式超音波のことで、美容領域ではたるみ改善を目的として行われる治療法です。元々は前立腺がんをはじめ、さまざまな臓器の病変を治療する目的で行われていたものを、美容分野に応用したものです。
超音波のエネルギーを小さな領域に集めて高いエネルギー領域を作りだし、集まった箇所に組織破壊と熱凝固点を生じさせることによって組織を収縮させ、たるみの改善を目指します。ハイフは現在、ノンサージカルな(外科手術でない)たるみ治療の代表的な方法であり、さまざまな種類の機器が登場しています。
ハイフを照射すると、ゆるんだSMAS(表在性筋膜・皮下組織と表情筋の間にある薄い膜で、衰えるとしわやたるみなどの原因となる)や皮膚がピンと張るように、照射した部分が引きあがるような効果が期待できます。
ただし、たるみ治療の効果は、治療前後の写真を比べて客観的な評価を行おうとしても、顔の傾きのずれやむくみなど、その時の状況もあるため正確に行うことが難しいものです。しかし、ハイフは組織を損傷させることにおいて根拠のある機器であり、ハイフを照射することによる皮膚のコラーゲンの厚み増加、SMASの収縮、眉の引き上げ効果などは、CTなどを用いた客観的な評価が多数報告されています。
なお、超音波が集まる焦点(収束密度)の甘さなどが原因で、発生する熱エネルギーが異なるため、機器による性能差が大きく、それに比例するように効果にも差が出ると考えられます。
ハイフは即効性があるわけではなく、一般的には効果は照射から90日程度経過した頃が最大になり、1年程度継続すると考えられています。その間は、微細に損傷された真皮から皮下、SMASが再構築されています。このように緩やかに変化が生じるため、効果を自覚しにくいというデメリットがありますが、炎症による腫れなどを効果と錯覚するような治療ではないということができます。
また、ハイフの照射によって生じた瘢痕は長時間残存すると考えられ、加齢による顔の変化の予防となる可能性も考えられています。
ハイフは額やまぶた、下顎周辺などの皮下脂肪が少ない場所では、超音波が骨に反響・反射して、疼くような痛みが起きることがあります。
また、ハイフは皮膚だけ、脂肪組織だけといった限定したものだけを破壊するような照射ができません。そのため、たとえば額では、滑車上神経、眼窩上神経に照射してしまうと、数か月にわたって感覚が低下することがあります。また、口角周辺では、眼窩下神経や顔面神経下顎縁枝、表情筋の損傷と腫れによって顔面神経麻痺のような症状が出ることもあります。さらに、側頭部の髪がある部分まで照射してしまうと、皮下出血が生じることもあります。ただし、これらは全て一過性の合併症とされています。
ハイフ治療においてもっとも懸念すべきことは“やけど”であり、回避するためには超音波用ジェルを十分使用し、端子をしっかりと接触させて照射することが基本とされています。また、疼くような痛みに関しては、出力を細かく調整することで和らげることもできます。そのため、技術と知識があり、しっかりと相談しながら治療を行ってくれる医師を選ぶ必要があります。
前述のとおり、ハイフは機器によって収束密度が異なるため、効果や副作用のリスクに大きな差があります。日本でよく使われている代表的なハイフ機器には、“ウルセラシステム”、“ダブロ”、“ウルトラセルQ+/Zi”などがあります。(※自由診療)
ハイフ機器のパイオニア的な存在で、米国食品医薬品局(アメリカの行政機関)で初めてリフトアップ効果が認められ、承認されている医療機器です(2023年時点)。ほかの機器と比べてもパワーが強く、効果の持続期間も半年〜1年程度で長いといわれますが、治療費が高額になるという特徴もあります。また、パワーが強い分痛みも伴うため、鎮痛剤や麻酔クリームが用いられることもあります。さらに、パワーが強すぎると、顔面神経を傷つけるなどのリスクも考えられます。
韓国製の機器で、ウルセラシステムに比べて痛みが少ないとされています。筋肉の深い層まで作用するため、十分なリフトアップ効果が期待できるとされています。また、照射によって皮膚に熱の刺激が加わりコラーゲンが多く作られ、肌のキメやハリが整うといった美肌効果が期待できるといわれています。一方、治療中の照射数が少ないと十分な効果が得られない可能性があるため、治療時はショット数を確認しておきましょう。顔全体への施術の場合、300〜400ショットが目安と考えられます。効果の持続期間は、数か月~半年程度といわれています。
こちらも韓国製の機器で、ウルセラシステムにはないボディ用のカートリッジがある点や、照射スピードが速く治療が短時間で済む、照射エネルギーを細かく調整しやすく痛みが少ない、治療費が比較的手頃であるなどのメリットがあります。また、治療後の効果の持続期間は半年〜1年程度といわれています。
最新機種であるウルトラセルZiは、Q+と比べてさらに照射エネルギーの細かい調整ができる、照射時間が短いなどの特徴があります。
たるみやしわの改善を目的にハイフを検討する人もいます。
ハイフは医学分野でも使用されており、効果の根拠がある治療法ですが、一方でリスクもあります。そのため効果やリスクについては、機器の種類や医師の知識と技術の程度に依存する部分があります。不明点や心配なことは医師によく相談し、納得したうえで治療に臨むとよいでしょう。
みやた形成外科・皮ふクリニック 形成外科・皮膚科 院長
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