院長インタビュー

80年の信頼と実績で群馬県の医療を支える 群馬大学医学部附属病院

80年の信頼と実績で群馬県の医療を支える 群馬大学医学部附属病院
齋藤 繁 先生

群馬大学医学部附属病院 病院長

齋藤 繁 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

前橋市にある群馬大学医学部附属病院は、群馬県唯一の大学附属病院です。同院は731床の病床を有する3次救急の要として、同じく3次救急を担う前橋赤十字病院などとともに、前橋市はもとより群馬県全体の救急医療に中心的な役割を果たしてきました。
同院の役割や今後ついて、病院長である齋藤(さいとう) (しげる)先生にお話を伺いました。

当院は前橋駅から直線距離で3キロほどに位置し、敷地内からは上毛三山や浅間山などが臨めるロケーションの中、地域の拠点病院として全29診療科をもち、3次救急や先進的な医療を提供しています。
当院の救命救急センターの2022年の救急車受入台数は4,149台に上り、前橋市の救急車出動件数18,951台の2割以上を占めています。医師や看護師が乗って車内で医療を提供できる“前橋ドクターカー群大”も運行しており、特に重症の患者さんの救命率の向上や後遺症の軽減に貢献しています。

当院は昭和18年に設立された前橋医学専門学校附属医院を前身としており、約80年の歴史を誇る群馬県の医療を支える大学病院です。
歴史的に教育機関と研究機関に病院が附属する形で教育研究と次世代を担う医療人の教育に力を注いできましたが、現在は新しい医療を現場で行うなど臨床にも力を入れています。
例えば、国立大学の病院では当院が初となる重粒子線によるがん治療には県外からもがん患者さんがいらっしゃっています。2023 年4月に臨床試験部と合併し、新たな1つの組織となり再出発した先端医療開発センターは、新しい技術や難易度の高い手術、新しい薬の使用、新しい機械を使った治療を支援し地域医療の発展に寄与していきます。
また、東日本大震災の経験と教訓を踏まえ、災害に強い病院の構築をめざし平成24年に県より災害拠点病院に指定されました。

3次救急(生命に関わる重症患者に対応する救急医療)まで対応する救命救急センターは、2022 年7月現在で救急科専従医師 13 名と看護師 30 名で運営され、毎年4,000 件以上の救急車を受け入れています。2018年から前橋市消防局と共同で運行している、医師や看護師が同乗して治療を車内で行う“前橋ドクターカー群大”の出動件数は、2018年度の139件から2022年度は187件にまで増加し、迅速な救急対応に貢献しています。

当院の重粒子線がん治療は2010年に開始されました。重粒子線がん治療で使う重粒子線は、一般の放射線がん治療で使うX線や陽子線よりもがん細胞を死滅させる効果が高いという特徴を持っており、一度の治療での効果が高いため、より短い期間で治療を終えるメリットがあります。当院では国内初の小型普及型治療装置を用いた重粒子線治療を行っており、累計の治療人数は6,939人(2023年12月末)に上っています。現在、重粒子線がん治療は年間800人の枠がありますが、枠はすぐに埋まる状況です。

当院のここ数年の肝切除件数は100~120件程度、膵切除件数は70~80件程度で、日本肝胆膵外科学会の認定する高難度肝胆膵外科手術件数では130件程度となっています。この症例数は関東でも有数の数になっています。

当院では低侵襲(体に負担が少ない)な治療を積極的に行っています。代表的な低侵襲手術のなかでもとくに内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)のような内視鏡の繊細な操作を求められる手術では、消化器・肝臓内科の浦岡俊夫先生や竹内洋司先生といった豊富な症例数をもつ先生が担当し、多くの患者さんを紹介いただいています。

ロボット“ダ・ビンチ”による低侵襲手術も当院では2014年から導入し、前立腺がん子宮頸がん大腸がんなどの手術を行っており、2022年から保険適用となった頭頸部がんの手術でも活躍しています。2023年には2台目を導入し、今後さらに多くの手術を行っていきます。

また、当院の腫瘍センターが充実してきました。現在、手術、放射線治療、化学療法の3本柱による集学的治療を院内でより効果的に行えるのは、当院の大きな強みだと考えています。

また当院はがんゲノム医療連携病院であり、国立がん研究センター中央病院と連携してがんゲノム医療を行っており、“がん遺伝子パネル検査”を受けられます。この検査は数百のがん関連の遺伝子を調べます。がん遺伝子パネル検査を行って遺伝子変異が見つかった場合は、その遺伝子変異に対応した薬があれば、臨床試験などでその薬を使用することを検討できます。また、新たな治療法の開発などにつながる可能性があります。     

当院は2014年に判明した腹腔鏡手術等の医療事故以降、第三者による医療事故調査委員会からの提言を受け、様々な改革に取り組んで参りました。 その結果現在、医療安全に関する職員の意識は全国屈指の病院になっていると自負しています。

当院が重視しているのはインシデントの報告です。小さなヒヤリハットのようなミスも見逃せば重大な事故につながるため、当院では些細なインシデントでも報告をしています。これにより医師・歯科医師からのインシデントの報告数は事故発生前の約4倍に増えました。これからも医療安全への高い意識を持ち続けるために、ヒヤリハットでも報告する仕組みを堅持していきます。

また、医療事故調査委員会からは患者参加型医療の推進も提言をいただきました。これを受け当院では“カルテ共有システム”を作り、実際に運用をしています。このシステムでは、患者さんは医師が書いたカルテはもちろんのこと、看護記録やCTやMRIなどの検査の画像、血液や尿検査の結果などを見ることができます。日本では患者さんがカルテを閲覧できる病院は少ない状況ですが、欧米では一般的になってきつつあり、医療安全への効果も高いとされています。当院でこのシステムを2019年から導入したところ、患者さんへのアンケートでは「病院や医療従事者との信頼関係を高める」と感じた人は9割というデータが出ており、手応えを感じています。手前味噌になりますが、私ほか3人の共著による「患者・医療者の診療記録共有―世界の流れと群馬大学医学部附属病院における取り組み」という本も2022年に出しており、電子カルテの患者さんへの公開に向けた当院の取り組みやカルテの書き方などを説明しています。

これらの医療安全への取り組みが評価され、群馬大学が2023年10月に設置した“多職種人材育成のための医療安全教育センター”は、文部科学省から医療安全教育手法に関する全国唯一の教育関係共同利用拠点に指定されました。今後は当院の医療安全のノウハウを全国に伝えていきたいと考えています。

当院は地域の中核的な病院であり、最後の砦として住民の皆様に安心安全の医療を提供し、全診療科でトップクラスの診療を行うことを使命としています。また、大学病院として医療人材を育て全国へ輩出することも大事な使命の1つです。特に、当院が得意としている重粒子線がん治療については、本学出身者が全国で指導的立場になっていますので今後も継続したいと思います。

私の将来の夢は高齢化社会に於いてもっと病気の予防活動を推進し、病気になる人が居なくなり病院がなくなる時が来ることです。具体的には100年後に病院が無くなることが私の理想と言えます。また、個人的には体を動かして歩くことが生活習慣病対策の基本と考えています。詳しくは私が執筆した“院長が教える一生登れる体をつくる食事術”に書きましたので、参考にして頂ければ幸いです。

受診について相談する
  • 群馬大学医学部附属病院 病院長

    齋藤 繁 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。
    実績のある医師をチェック

    Icon unfold more