院長インタビュー

地域に寄り添った医療の提供─金沢医科大学病院

地域に寄り添った医療の提供─金沢医科大学病院
川原 範夫 先生

金沢医科大学病院 病院長

川原 範夫 先生

目次
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石川県河北郡に位置する金沢医科大学病院では、地域に寄り添った医療の提供と、若手医師の育成に尽力されています。同院は、2017年に病院中央棟が竣工されて以来、より地域に貢献できるように多くの取り組みを行ってきました。それらの取り組みや、遺伝医療などについて金沢医科大学病院 病院長の川原 範夫(かわはら のりお)先生にお話を伺いました。

先方提供
病院中央棟外観(金沢医科大学病院よりご提供)

当院は1974年9月に開院いたしました。その後は診療科や病床数の拡充を続けてきました。また、建物の老朽化に伴い、2003年10月に病院新館(現在は「病院1号棟」に改称)、2017年7月に病院中央棟を開設いたしました。診療科や病床数だけでなく、施設面の拡充も行い、地域への医療提供や若手医師の育成に尽力してまいりました。

当院は開院当初から、「患者さん中心の医療」「安全で高度な先進的医療の提供」「病診・病病連携に基づく地域医療連携の推進」「良医の育成」を基本理念としています。この基本理念のもと、当院では多くの取り組みを行っています。その中からいくつかの取り組みについてご紹介いたします。

当院は、金沢市を中心とする石川中央医療圏に属しながら、能登半島の玄関口となる石川県河北郡に位置しています。そのため、石川中央のみならず、能登中部・能登北部の地域医療を支える特定機能病院として、質の高い医療の提供する役割を担っております。

平常時の医療はもとより、令和6年能登半島地震の際には、被災した能登地区の病院からの患者搬送を数多く受け入れ、災害時の医療の提供にも尽力いたしました。また、能登地区の被災した各病院や避難所に、当院の災害時感染対策支援チームや災害派遣精神医療チームなどの各種医療チームを派遣し、被災された方々の支援を行ってまいりました。

今後も患者さんに寄り添った医療を実践し、患者さんや地域の医療機関の皆さまから信頼される病院づくりを目指してまいります。

当院は2017年から、「ツール・ド・のと400」や「金沢マラソン」など、県内で行われるイベントにメディカルサポートチームを派遣しております。

メディカルサポートチームは、救命救急科医師と、内科系または外科系の医師、看護師、事務職員で編成されています。メディカルサポートチームが出動する際には、救急医療キットや人工呼吸器、検査装置などを搭載しているドクターカーに搭乗し、緊急時の初期対応を行います。

これからも、県内で開催されるイベントにメディカルサポートチームを派遣し、地域の皆様やイベント参加者の皆様に安心していただけるよう、後方支援に尽力してまいります。

当院には、38の診療科があります。それぞれが得意な分野において、地域の皆様への医療の提供に尽力しています。内視鏡センターや、乳腺センターのように、様々な診療科の外科医と内科医が協力をして診療にあたる部門もあります。

その中でも、特徴的な診療科、部門についてご紹介いたします。

泌尿器科では、膀胱炎尿路結石症、前立腺肥大症などの排尿障害の治療を行っています。また、尿路に発生するがん膀胱がん前立腺がんなど)や腎移植まで、泌尿器に発生する病気に対して幅広く診療にあたっています。

また、当院は2015年5月に手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)」(以下、ダビンチ)を導入し、泌尿器科にてロボット支援下前立腺全摘除術の治療を開始しました。ダビンチを使用した手術では、患者さんへの負担や合併症のリスクが少なくなることが期待できます。

2024年現在は消化器外科、呼吸器外科、婦人科にて、保険適用となったすべてのロボット支援下手術を行っており、今後も当院では保険適用の範囲拡大に対応していく予定です。保険適用となる手術については、当院スタッフにお尋ねください。

当院では2023年に、これまで別の科に分かれていた消化器内科、肝胆膵内科、消化器内視鏡科を統合し、新たに消化器内科(肝胆膵・消化管)として再出発しました。

これにより、患者さんやご家族、あるいは当院のスタッフでもより分かりやすい診療科の編成となり、以前にも増して質の良い医療を提供できるよう努めてまいります。

当院では、2013年5月から「胸痛ホットライン」を設置しております。胸痛ホットラインは、緊急の治療を要する急性心筋梗塞、不安定狭心症大動脈解離などのサインである「胸痛」を訴える患者さんに対して迅速な対応を行う専用の電話窓口です。

救急隊から直接電話が来ることが多く、胸痛だけでなく呼吸苦の患者さんも胸痛ホットラインを介して、当院に搬送されて来られます。胸痛ホットラインでは、胸痛を訴える患者さんだけでなく、胸痛ホットラインに連絡が来た患者さんの全てを受け入れています。胸痛ホットラインに連絡があった全ての患者さんを受け入れることで、迅速な治療の提供や救急隊がどこの病院に搬送すればよいかなどの悩みも解消することができると考えています。

急性心筋梗塞や大動脈解離などは、一刻も早い処置が求められます。迅速な治療を行うためには、救急隊と病院との連携が必要不可欠です。そのため、ハートセンターに携わる循環器内科、心血管カテーテル治療科と救急隊で勉強会を開催し連携を深めています。

搬送されてくる患者さんの中には、他の原因による胸痛であるケースもみられます。その場合は、該当する診療科への手配も行います。これは38もの診療科を持つ当院の強みであると考えています。

当院ではゲノム医療センターを開設し、遺伝学的検査、遺伝カウンセリングなどを行っています。遺伝性の病気は、生まれつきの症状がみられます。ご家族やご自身に遺伝性の病気がみられ、お困りのことがある際には同センターを頼っていただきたいと思います。そのため、同センターには、遺伝の診療を行う医師と、保健師、遺伝カウンセラーを配置しています。

同センターの新井田(にいだ)教授を中心に、北陸地域をはじめ日本全国への遺伝医療の提供に取り組んでいます。

遺伝カウンセリングでは、お話をゆっくり伺い、相談にいらした患者さんやご家族と信頼関係を築くために、完全予約制にしています。遺伝カウンセリングは遺伝の診療を行っている医師や保健師などを中心に会話を重ねていきます。また、必要に応じてほかの診療科で遺伝の病気を診療している医師ともお話しいただけます。

遺伝の病気では、様々な症状がみられます。そのため、他科と協力をすることが重要になると考えています。

遺伝カウンセリングを通して、遺伝子の病気や遺伝に関する悩みに対して、解決できるように尽力しています。

同センターでは、発達に遅れがみられる赤ちゃんや筋緊張(きんきんちょう)(筋肉の持続的な収縮状態)が弱いダウン症の赤ちゃんを対象に、赤ちゃん体操・療育相談を行っています。

赤ちゃん体操教室では、生後から一人で歩けるようになるまでの赤ちゃんを対象としており、同教室は小児科医が行う診察や発達のチェック、赤ちゃん体操指導員が行う体操指導などを実施しています。小児科医の診察や発達チェックは2か月毎に行っています。

また、保健師に育児相談や療育相談、ダウン症の情報提供もあります。

赤ちゃん体操・療育相談は予約制になります。疑問や予約は当院のゲノム医療センターへお問い合わせください。

同センターは、2018年からがんゲノム医療連携病院として稼働しています。

当院は、金沢医科大学の病院でもあるため、若手医師の育成に力を入れています。当院に臨床研修に来た医師の福利厚生の一つとして、金沢医科大学レジデントハウスがあります。

金沢医科大学レジデントハウスは、本学の創立40周年記念事業の一環で竣工された研修医のための寮になります。レジデントハウスの2階には、音響設備を整備した談話室を設けており、症例検討会や、研修会などに使用することができます。また、4階にはカンファレンスルームがあり、電子カルテ端末が整備されています。

レジデントハウスによって快適な住環境を提供し、臨床研修医が当院で多くのことを学ぶ環境を整えたいと考えています。

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