院長インタビュー

“治し、支える”医療の提供を目指す大原医療センター

“治し、支える”医療の提供を目指す大原医療センター
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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福島県福島市にある大原医療センターは、亜急性期医療と回復期医療を担っている病院です。
患者さんが安心して家に帰れるよう、“治し、支える”ための医療を展開しているという、同センターの地域での役割や今後ついて、院長である石橋 敏幸(いしばし としゆき)先生に伺いました。

当センターは、1990年に大原記念財団の本院である大原綜合病院(以下、本院)の機能を補うため、当初は急性期病院として立ち上げられました。2018年には全面的に回復期病院へと転換し、急性期病院である本院と一体となって福島市周辺の地域包括ケアシステムを担うべく、新たなスタートを切りました。現在は回復期リハビリテーション病棟(126床)と地域包括ケア病棟(60床)を備えた総合回復期病院の役割を果たしています。
また、2025年には当センターと心身医療機関である清水病院が統合されることとなっており、高齢化社会における認知症ケアの必要性が高まる中、体と心を一体化して診ることができる病院としても地域に貢献していくことを目指しています。

先方提供
大原医療センター外観(大原医療センターご提供)

当センターの“回復期リハビリテーション病棟”では、急性期治療後の患者さんに対し、退院後も安心して安全な生活を送れることを目的とした集中的なリハビリテーションを提供しています。

また、“地域包括ケア病棟”では、地域医療機関の外来通院中の患者さんや施設入所中の方が一時的に症状悪化した場合の入院療養を提供したり(亜急性期医療)、介護を行っているご家族の方が入院してしまったために介護されている方が一時的に入院が必要になった場合の受け入れ(メディカルショートステイ)などを行っています。そして、医師、看護師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカー、栄養管理等が協力し、在宅復帰に向けた相談にも対応しています。

当院では、亜急性期にあたる軽〜中等症の患者さんも受け入れることで、私が2020年に院長就任してからの入院患者数は、約30%増加しました。

今後も当院は、在宅復帰・在宅支援を目指し、多職種・他機関連携による医療を通じて患者さんの医療ニーズに応える“総合回復病院”でありたいと考えています。

急性期病院での治療を終え、当センターに転院してくる患者さんの平均年齢は80歳を超えており、その約半数は認知症がある方になっています。そのような患者さんが治療を終え社会復帰するためには、病気の治療だけでなく、ご本人、そしてご家族の生活全体を支えるという視点が重要であると考えています。

具体的には、リハビリテーションを通じて身体機能の回復を図りつつ、ご家族にも参加いただく認知症ケアを提供するということです。当センターでは月に一度、認知症を専門的に見ている医師をお呼びして勉強会を実施しており、そこで得た知見や指針を元に、認知症に対するアプローチを行っています。

2018年に当センターが回復期病院として新たにスタートした際、強く意識していたのは本院との連携でした。しかし私は、法人の枠を超え、当センターを福島県北地域を支える回復期病院として機能させなければいけないという思いがありました。つまり、回復期病院は、地域の救急医療が円滑にまわるように支える役割を有しています。また、コロナ禍を経て地域包括ケアシステムの重要性が再認識され、ますます当センターの果たすべき回復期の役割が非常に大きいものであると考えるようになりました。

現在では、急性期治療を終えた患者さんは、本院だけに止まらず、福島赤十字病院、福島第一病院、福島県立医大附属病院などからもいらっしゃっています。当院のこのような動きによって今後も福島市周辺全体の医療の効率や質を高め、地域住民の方により安心していただくことができたら大変嬉しいです。

地域を支えるためには、医療職の人材育成が不可欠です。しかし、東日本大震災後、福島市では研修医が激減してしまいました。なんと、震災翌年の2012年の福島市市中臨床研修病院の研修医は1名しかいなかったのです。その状況を改善するために、本院、福島赤十字病院、わたり病院が福島市医師会および福島市と連携し立ち上がったのが、私が代表を務める“福島市臨床研修“NOW”プロジェクトでした。医療の復興は“今NOW”若手人材育成から始める、そして“NOW”は日赤(Nisseki)・大原(Ohara)・わたり(Watari)の頭文字に一致していたのです。

このプロジェクトでは群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春先生をはじめ全国の識者にお話を伺い、全員参加型勉強会、専門医による講習といった実践的な内容の研修を行っています。特に救急医療教育にも力を入れており、私自身インストラクターとしてBLS(一次救命処置)、ICLS(二次救命処置)、ACLS(二次心肺蘇生法)の研修を行っています。そのような奮闘の結果、研修医はV字回復を示し、2024年には済生会福島総合病院も加わり現在は震災前の約2倍に増えています。

このプロジェクトを通して集まった研修医の中には、NHKで以前やっていた番組「総合診療医ドクターG」に出演し、堂々たる福島弁で我々の研修レベルの高さを示してくれたこともありました。そのときは福島市中で話題になり、とても嬉しかったのを覚えています。

30年後の福島の医療を支える人材を育てること、これも地域の医療に携わっている医療人としての役割です。引き続き、人材育成にも注力していきたいと考えています。

先方提供
Nowプロジェクト10周年の記念イベントにて(大原医療センターご提供)

今年1月の能登半島地震のあと、私はJMAT(日本医師会災害医療チーム)として能登へ行きました。JMATの活動は、単に治療をして終わりではなく、被災地の地域が普段の生活に戻るまで支えることが目的です。当センターの役割も同様で、私が医療を考える際に強く思うのは、“治し、支える”ということです。回復期医療は、この超高齢化社会において、地域から要求されるニーズがすごく高いと感じています。安心して在宅復帰ができるまで見届ける、また、在宅医療を支援する当センターが果たす役割は、今後さらに重要性を増していくと信じています。

これからも当院は地域のために何ができるかを考え、福島県北の医療に貢献するためのチャレンジを続けていきます。

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