院長インタビュー

地域の医療需要に100年応え続ける、青森地域の基幹的な病院―青森市民病院

地域の医療需要に100年応え続ける、青森地域の基幹的な病院―青森市民病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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青森県青森市にある青森市民病院は、1928年にその母体を遡り、1958年に市民病院となった歴史ある総合病院です。青森地域の基幹病院として一般診療、救急医療等、質の高い医療に取り組む同院の地域での役割や今後について、院長である豊木 嘉一(とよき よしかず)先生に伺いました。

当院は青森県内でも歴史のある病院です。母体は東青病院という医療組合病院で、1928年の開設後、3年後には新築移転し総合病院になりました。その後、戦災で建物を焼失するなどして何度か移転をしつつ、1958年には青森市に移管され、市民病院として現在の名称“青森市民病院”となりました。
それ以降は地域の医療需要に応えるため大規模な増築や診療科の増設を重ね、現在は20診療科、459床を備える地域の基幹病院となっています。青森駅の南東、国道103号線近くに位置する当院は、青森市営バス“市民病院前”から降りてすぐ、同バス“みちのく銀行本店前”から徒歩4分です。

当院は青森地域二次医療圏に属し、青森市と東青地区の約30万人分の医療需要を抱えています。地域の基幹病院としてこの医療需要をカバーすべく、一般診療から救急医療等、質の高い医療を幅広く担当しています。昔から胆石治療の質が高く、5代前の院長である阿部 廣介(あべ ひろすけ)先生が特に高い評価を受けていました。当時は「胆石治療のメッカ」とも呼ばれていたと聞いています。

当院には救急部がないのですが、地域の急性期医療需要に応えるべく各科持ち回りで尽力しており、去年の救急車搬送件数は約3,300件、ウォークイン(患者さんご本人が自分で救急診療を求めて来院されること)件数は約8,000件でした。

特に整形外科での受け入れは多く、整形外科での救急外傷の受け入れ件数は県内でも非常に多くなっています。当院では6名の整形外科医が在籍しており、同科での年間手術数は1,000件を超えます。

高齢化に伴い年々重要度が増しているFLS*も積極的に提供しています。また、常に新しい治療をキャッチアップするべく奔走しており、手術にナビゲーションシステム**も取り入れています。

* 骨折リエゾンサービス。骨折で来院された骨粗しょう症の患者さんを、二次骨折予防を目的に、他職種の連携によって骨折・転倒予防を行う取組

** 手術の前に撮影したCTのデータを使って3次元の手術計画を立て、その計画をもとにコンピュータからのナビゲートを受けて正確な計画に沿った手術を行うもの

脳神経外科では、特別な設備やスタッフを揃えていない病院では対応の難しい、血栓溶解などのハードな脳卒中症例への救急対応に力を尽くしています。日本脳卒中学会が認定する一次脳卒中センター(PSC)認定施設である当院は、一刻を争う脳卒中の症例に24時間365日対応しています。

高齢化で脳卒中の医療需要も高まる中、当院は今後も地域に提供する脳外科医療の質とスピード向上に励んでいく所存です。

当院は開設初期から胆石の治療の評価が高く、現在でも肝胆膵外科の治療に力を入れています。昨年は日本肝胆膵外科学会が認定する専門医修練施設にもなりました。青森県内の当院以外の専門医修練施設は、弘前大学附属病院、青森県立中央病院、八戸市民病院のみであり、肝胆膵外科治療は基幹病院である当院の役目と思っております。私自身が肝胆膵外科を専門としており、前院長である遠藤 正章(えんどう まさあき)先生も専門としています。

遠藤先生は腹腔鏡を用いた胆嚢摘出手術にその黎明期から取り組んでおり、当院での症例数は3,000件を超えます。この他、膵臓がん胆管がん等の症例数も多かった先生で、当科はその伝統を受け継ぎ、肝胆膵の領域で大学病院にできて当院でできない手術は肝移植ぐらいでしょう。

これからも当院は、ずっと昔からいただいている「胆石は青森市民病院へ」という評判に恥じぬよう、肝胆膵外科治療のレベルを維持向上していきたいと思っています。

当院では地域の皆さまとの交流を大事にしており、夏と冬に、地域に開かれたイベントを行っています。前半は市民公開講座、後半は有志の医師によるライブです。コロナ禍の時期には院内の患者さんに対象を絞ってミニライブを行っていましたが、今後は地域に解放した形で再開したいと思っています。

医師によるライブは循環器内科部長の藤田 紀生(ふじた のりお)先生が旗振り役をやっており、心臓カテーテル手術よりもギターが好きなんじゃないかと言われています(笑)。ライブにはご当地アイドルや地元出身の音楽家の方にもご参加いただいていて、とても賑やかです。

こちらから街のお祭りに出ていくことも行っています。今年は初めて研修医が青森ねぶた祭に参加しました。

地域の医療にこれからも貢献し続けるため、次世代の育成にも力を入れています。私が院長を拝命してから、症例発表会で研修医にも話させる機会を作り、研修カリキュラムもいろいろと工夫して改善を行いました。当院には臨床研修のプログラム責任者が6名おり、研修の質向上に向き合っています。

先方提供
青森ねぶた祭りにスタッフが参加(青森市民病院ご提供)

当院は青森地域の基幹的な病院として、一般診療から救急医療、大学病院レベルの医療まで幅広く対応している病院です。今後青森県立中央病院と統合する予定ですが、我々の基幹病院としての責任はいっそう重くなるでしょう。統合にあたり、「両病院が協力して改めて地域の医療ニーズを見極め、長きにわたってそれに応えた医療を提供できるようにしよう」と、決意を新たにしています。

また当院では、皆さまに安心して診療を受けていただくため、スタッフによる接遇の向上にも病院を挙げて取り組んでおります。今後とも、当院の理念「安全で良質な医療の提供と、みなさまに信頼される病院を目指す」を実現するため、スタッフ一同、一層の努力を続けてまいります。

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