院長インタビュー

がん診療や周産期、小児救急など、地域の医療ニーズに寄り添う済生会兵庫県病院

がん診療や周産期、小児救急など、地域の医療ニーズに寄り添う済生会兵庫県病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

兵庫県神戸市北区にある済生会兵庫県病院は、恩賜財団済生会の病院として、1919年の開設以来100年以上の歴史を持ち、急性期医療を中心に地域の中核病院として医療を提供しています。三田市民病院との再編統合も控えており、医療体制の充実に向けて着々とその準備を進めている同病院の地域における役割や取り組み、そして今後の展望ついて、院長である左右田 裕生(そうだ ひろお)先生に伺いました。

当院は1919年、神戸市葺合区(現中央区)に兵庫県済生会診療所として開設されました。その2年後に恩賜財団済生会兵庫県病院と名称を変更し、1991年、現在の神戸市北区に移転しています。増床や診療科目の拡充など公的医療機関として体制強化に尽力し、現在は268床を備える病院となっています。

移転後、地域医療を担う急性期病院としての責務を果たすべく、神戸市北区(北神地域)やその周辺地域の方々に必要な医療の確保および質の向上に取り組んでいます。24時間365日医療を提供するほか、幅広い診療科をそろえ、各種疾患に応じた部門や専門の外来を設け、患者さんが受診しやすく総合的な治療を受けられる環境を整えています。

特に、地域周産期母子医療センターとして母体搬送や新生児搬送を受入れ、北神地域だけではなく、より広域的な地域の若い世代が、安心して妊娠・出産・育児に臨める体制の確保に努めています。

先方提供
病院外観(済生会兵庫県病院ご提供)

当院ではがんの治療に注力しており、中でも肺がんの治療については、2010年に呼吸器外科を開設し、北神地域の呼吸器外科手術を支える病院として地域医療を支えてきました。2023年には呼吸器内科医2名を迎え、呼吸器センターを開設。初診から診断、治療、術後療法までの一連の治療を、一貫して実施しています。

また、2014年に開設したがんセンターではがんの診断や化学療法、緩和ケアなどを、診療科の垣根を超えて提供しています。同センターではがんに関するカウンセリングも行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

今後もがんの治療体制を拡充し、高齢化が進む地域の医療ニーズに対応して参ります。

当院は兵庫県の地域周産期母子医療センターとして、産科とNICU(新生児集中治療室)が一体となった設備と環境を整え、24時間体制で兵庫県内各地からハイリスク妊婦、低出生体重児、ハイリスク新生児の受け入れを行っています。NICUはバリアフリーで、産後のお母さんが車いすでも赤ちゃんに会いに行きやすい環境を整えました。セントラルモニターでは24時間のモニター管理を行い、何かあった場合には迅速に対応できるよう体制を整えています。

また、当院はWHO(世界保健機関)からBFH(Baby Friendly Hospital)“赤ちゃんにやさしい病院”であるという認定も受けています。これは、WHOと国連児童基金(UNICEF)が提唱する“母乳育児を成功させるための10カ条”を長期にわたり遵守し、実践している産科施設が受けられるものです。

母子医療に関わるスタッフ全員が母乳育児についての理解を深め、協力できるよう勉強会なども定期的に行っており、引き続き地域周産期母子医療センターとして尽力していく所存です。

先方提供
地域周産期母子医療センター(済生会兵庫県病院ご提供)

当院は従来から小児の二次救急対応病院としての役割を果たしてきましたが、一次救急についてはHAT神戸(中央区)まで出る必要があり、車がないと少々不便な状況でした。そのため、北区で小児医療が完結できるようにすべきと考え、2024年4月から、神戸市で3か所目となる小児専門の初期救急の拠点として、「北部小児初期急病センター」の運営を開始しました。その後、済生会としても地域に貢献すべく、北部小児初期急病センターの診察時間に加えて、小児科救急の診察時間を拡大し運営しています。これらは小児科の医師たちからの発案による体制改善です。

また、同じく2024年4月に、児童発達支援事業所を併設し運営を開始しました。当院のNICUからの退院後必要に応じてお子さんが療育を受けることができる環境をつくるためです。

今後も、妊娠・出産子育てのあらゆる場面において充実した医療の提供ができるよう、医師やスタッフたちと共に検討、改善を続けていきたいと考えています。

救急に関しては小児だけでなく、いわゆる2次救急(手術や入院が必要となる救急医療)を充実させることも重要な役割であると考えています。昨年度より救命救急士の採用を開始し、現在は5名まで増員、24時間のシフト制で対応に当たっています。消防の救急救命士とは少し異なり、病院の救急救命士が対処できる範囲はやや限られますが、救急隊からの連絡を直接受けられるような体制を整えたこともあり、現場の医師や看護師からは治療や看護に集中できるようになったという声が上がっています。

今後も断らない救急を目指し、体制の充実を図っていきます。

高齢化の進行に合わせ、当院の整形外科は外傷骨折などのほか、膝関節や股関節の疾患、脊椎の疾患、リウマチなど幅広い病気の診断、治療を行っています。

とくに手の機能障害を治療する“手の外科”は、当院の周囲では対応できる医療機関が限られているため、神経麻痺、手指の骨折、先天性の異常などで多くの患者さんが来院されます。手は人に見られるパーツでもあり、治療では可能な限り低侵襲(体に負担が少ない)で、かつ美容的な面も含めて満足いただける治療を心がけています。手の機能障害でお悩みの方は、ぜひ一度当院の整形外科の受診をご検討ください。

また、当院の整形外科には全国的にもまだ数が少ない小児整形外科学会による認定医が在籍しています。小児の場合はまだ骨が発達段階であるため、骨の整形的治療には高い専門知識が必要です。小児の骨折で、治療後も痛みを訴えるなどがあればぜひ当院へご相談ください。

現在当院では、北神・三田地域の方々が安心して暮らし、将来にわたり質の高い医療を受けていただくため、三田市民病院との病院統合をめざしています。三田市民病院は当院から車で20~30分ほど北に向かった三田市にあり、新病院は両病院の中間地点付近での建設を検討しています。病床数は400~450床程度、診療科目は現在当院と三田市民病院が診療しているものに加え、心臓血管外科など現在提供できてない診療科の新設も予定しています。

また、救急医療に適した設備や動線の確保、病室の個室化など設備の充実を図ることはもちろん、医療教育の場としてもレベルアップを図り、次世代の医療の担い手を育てていきたいと考えています。

三田市民病院との病院統合に先立ち、2026年からは当院が三田市民病院の指定管理者として運営を開始します。すでに人的交流も行っており、スムーズな新病院の運営開始に向け、三田市民病院、そしてスタッフの協力を得ながら着々と準備を進めている状況です。

なお、当院が新病院に移転したあとも、現在ここに併設されている特別養護老人ホームは残る予定です。隣に当院があることで安心して入所していただいている方が多くいらっしゃることから、移転後もこの地にはなんらかの医療病院機能を残しておくことを検討しています。

当院は、移転前も移転後も各々の地域の方々に適切で安心な医療を提供できるよう職員一同努めてまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

医師の方へ

様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。

学会との連携ウェビナー参加募集中
実績のある医師をチェック

Icon unfold more