医療法人社団 京浜会 京浜病院は“高齢者の性質にあった、やさしい医療”を実現するための病院として、長きにわたり東京都大田区の高齢者医療を支えてきました。2018年には、新富士病院グループの一員となり、病院の建て替えも決まるなど大きな転機を迎えています。
同院の特徴や強み、今後目指していく方向性などについて、院長を務める熊谷 賴佳先生にお話を伺いました。
当院は、1936年に開設された小児科医院が前身となっており、1973年に個人病院として“京浜病院”を開設しました。さらに、1985年には新京浜病院を開設し、統廃合などを重ねて現在は“京浜病院”の名で地域医療を支えています。
2018年に当院は、新富士病院グループの一員となりました。それに伴い新病院がオープンする予定となっており、現在も建て替えが進められています。2027年を目途に、2棟体制・計173床の病院として生まれ変わる予定です。
高齢化社会が急速に進行する今、慢性期治療病院である当院の地域医療における役割はさらに大きくなっていくことが予想されます。中小規模の病院ならではの小回りのきく対応を今後も生かしつつ、新病院としての強みも存分に生かして、よりよい医療提供につなげていきたいと考えております。
当院は“高齢者の性質にあった、やさしい医療の実現”をモットーとしており、認知症治療や褥瘡(床ずれ)治療、リハビリテーション、内科全般、人工透析や各種健康診断、もの忘れ外来や頭痛外来など、幅広い診療を行っています。中でも特に当院の大きな強みといえるのが、認知症治療です。
私は脳神経外科を専門としており、これまでさまざまな病院で脳神経外科分野を中心に医療に携わってきました。その後、当院での勤務を機に、慢性期医療にも携わるようになり、自然と認知症患者さんを診る機会も増えました。
認知症の患者さんの診療を始めた当初は、学術的な知識に基づき治療を行っていました。しかし、それでは思うような効果が得られず疑問を抱く日々が続いたのです。そこから、自分自身で認知症について基礎から学び直そう、現場で認知症治療を極めようと考えました。そうして多くの患者さんを診療するなかで生み出されたのが、このBPSDの“3段階ケア”です。
BPSDとは、認知症患者さんの忍耐力の低下や暴言暴力、妄想や幻覚などといった、認知症に伴う行動・心理症状を指します。当院では、BPSDの状況により、混乱期・依存期・昼夢期の3段階に分類したうえで、それぞれの段階に適した対処やケアを行っています。BPSDを抑えることは、認知症の患者さんが心穏やかに過ごすためにも非常に重要です。
認知症治療を続けてきたなかで、私は認知症とてんかんの関係にも着目するようになりました。
てんかんの中には、けいれんを起こさない“非けいれん性てんかん”と言われるものがあり、これは意識障害や言葉が出ない、朦朧とした状態など、認知症と混同しやすい症状がみられます。高齢者の中にはこの“非けいれん性てんかん”を抱えていながらも、未発見・潜伏状態になっていることが多々あるのです。
“認知症治療をしても効果が出ない”という患者さんの中には、実は認知症ではなく非けいれん性てんかんの症状が出ている方や、認知症だけでなくてんかんも合併している方などが少なくありません。
また、アルツハイマー型・レビー小体型・前頭側頭型・脳血管性型といった4種類の認知症の中でも、特にレビー小体型認知症の患者さんに非けいれん性てんかんを合併している方の割合が多いということも、日々の診療を通じて強く実感するようになりました。
このように当院の認知症治療では、従来の認知症診断・治療の概念だけにとらわれず、臨床現場で得た知見も加味したうえで、“患者さん一人ひとりに合わせた認知症治療”を提供できるよう心がけています。
当院が所属している新富士病院グループは、訪問介護ステーションや介護保険施設、老人ホームやグループホームなど、高齢者向けの事業所を数多く有しています。高齢者医療を中心としてきた当院にとっては、グループ内で連携し、より円滑に充実した高齢者医療・介護が提供できる環境が整ったことは非常に意味のあることです。
どんなに頑張っても当院だけではカバー・サポートできなかった部分を、今後はグループ内の力を借りて補いながらさらに良質な医療提供を目指していければと考えています。
当院は慢性期治療病院として、地域の皆さんの健康寿命を延ばし、末永く地域で安心して暮らしていただくために、お役に立ちたいと考えています。認知症治療に限らず、内科やもの忘れ外来をはじめ幅広い対応をしておりますので、お気軽にご相談ください。
また当院では、症状の安定した患者さんを急性期病院から受け入れる体制も整えていますが、今後は受け入れのタイミングをより早くできるよう、病院全体のレベルアップを図りたいと考えています。急性期病院の役割は重傷者や緊急の患者さんの受け入れなどにありますが、その役割を十分に発揮できるよう、当院は安定した患者さんをできるだけ早く受け入れることで、地域医療を円滑に維持していければと思います。
今後も改善できる部分はさらに改善を図り、地域の患者さんとご家族に笑顔になっていただける病院となれるよう努力を続けてまいりますので、よろしくお願いいたします。
*医師や診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年12月時点のものです。
医療法人社団京浜会 京浜病院 院長
医療法人社団京浜会 京浜病院 院長
日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医日本医師会 認定産業医
大学医局所属の勤務医として修業したのち、家業である病院の3代目として地元に戻る。脳神経外科医として一通りの学業を習得していたつもりだったが、町の病院では、全く別のものが求められた。それが認知症であった。そこから認知症との格闘が始まる。大学で研究されていたのは解剖学や病理学、薬理学ばかりで、実践的治療ましてや介護方法について解説したものはほとんどなかった。それなら自分でやってみよう、と思い立った。それには地域医療に対する理解も深めなければならないと医師会理事になり、会長まで勤め上げた。地元地域では、熊谷式認知症3段階ケアを実践する医師や看護師・介護士・ケアワーカーも多い。日本慢性期医療協会常任理事として、看護師のための認知症ケア加算講習会の講師を務めている。地元の大学病院や国立病院から講師依頼を受け、3回シリーズで講演活動も行っている。
熊谷 賴佳 先生の所属医療機関
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