院長インタビュー

幅広い医療サービスの提供・積極的な救急対応を行う宝塚市立病院

幅広い医療サービスの提供・積極的な救急対応を行う宝塚市立病院
岡田 敏弘 先生

宝塚市立病院 外科 院長

岡田 敏弘 先生

目次
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1984年に開院した宝塚市立病院は、31の診療科が幅広い医療サービスを提供し、救急医療にも積極的に対応している地域の中核的な病院です。

そんな同院の特徴や強みとしている診療分野、地域包括ケアシステムに対する取り組みなどについて、病院長の岡田 敏弘(おかだ としひろ)先生にお話を伺いました。

1984年5月21日に設立された宝塚市立病院は、436床の病床と31の診療科を擁する総合病院で、兵庫県指定がん診療連携拠点病院、兵庫県指定地域医療支援病院、兵庫県指定救急告示病院(二次救急)、兵庫県指定災害拠点病院などをはじめとした数々の指定を受けています。

そんな当院は地域医療の要となる病院の1つとして“患者さんに寄り添い、地域から信頼される病院になります”という理念のもと、幅広い医療サービスを提供しています。なかでも救急医療に関しては、宝塚市の中心的な役割を担っております。

当院がある宝塚市を含む阪神北圏域(伊丹市・猪名川町・川西市・三田市・宝塚市)には、生命に関わる重篤な患者さんを受け入れる三次救急対応の救命救急センターがありません。そうした地域事情を踏まえ、当院は二次救急医療機関ではありますが、地域の皆さんの命を守るために“断らない救急”実現を目指し、宝塚市だけに限らず阪神北圏域全体の救急患者さんをできるだけ受け入れるよう心がけております。

(当院の救急医療についてはこちらの記事もご覧ください。)

宝塚市立病院外観
宝塚市立病院外観

兵庫県指定がん診療連携拠点病院である当院では、手術、化学療法(薬物治療)、放射線治療の三大療法による集学的治療が基本です。

手術については、早期がんに対してはEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術<ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ>)などを行いますが、それでは対応できないがんには腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)や開腹手術などを行います。どの術式を選択するかは症例によりますが、当院は手術による患者さんの身体的負担を軽減できるよう、できるだけ腹腔鏡下手術で対応するよう心がけております。
なお、当院は腹腔鏡下手術を1990年から導入しており、これは西日本において非常に早い時期での導入でした。また私自身、1990年の腹腔鏡導入時期にちょうど当院で勤めており、さらに1993年に当院が主催した第6回内視鏡下外科手術研究会(現在の日本内視鏡外科学会)ではライブ手術の術者となり質疑応答を受けながらの腹腔鏡下手術を行いました。腹腔鏡下手術導入当初からのこうした貴重な経験を生かし、今も院長のほかに外科主任部長を兼任して腹腔鏡下手術を手がけております。

化学療法については、通常の抗がん剤治療だけでなく、そのままでは外科手術が難しい大きながんを抗がん剤で縮小し、手術可能な状態に持っていくための“術前化学療法”も行っております。落ち着いた雰囲気のなかで治療を受けられる化学療法センターを備えており、外来で治療を受けていただくことができます。

放射線治療については、シンクロニーオプション(動体追尾照射システム)を備えた高精度放射線治療装置“トモセラピー”を導入しております。トモセラピーはピンポイントでの強い放射線照射や強弱をつけた放射線照射ができるだけでなく、呼吸などによる病変部の動きに高精度に合わせた照射もできる装置で、導入している医療機関は国内でもまだ少ない状況です。また、がんによる痛みや出血を和らげるための緩和照射も行っています。

当院は日本脳卒中学会より一次脳卒中センターとして認定されており、脳梗塞(のうこうそく)をはじめとした脳卒中の治療に24時間365日体制で対応しております。救急搬送された脳卒中患者さんに対しては一刻も早い治療開始が求められますので、当院では病変部の画像撮影や術前検査などを速やかに行い、脳外科医が手術室に来たらすぐに手術を始められるよう体制を整えております。

もちろん、当院が対応しているのは救急の脳卒中患者さんだけではありません。“脳梗塞になった家族がいるので自分も心配、詳しい検査をしてほしい”という方や、吐き気や嘔吐、頭痛、口元が垂れ下がる、ろれつが回らない、片側の手足が動かない、言葉が出ない、目が見えにくくなったなど、脳卒中の前兆・初期症状と思われる症状が出た方はぜひ当院にご相談ください。

循環器内科では全身の血管の病気に対する診療を行っており、特にカテーテルを使った検査や治療に積極的に取り組んでおります。

循環器系疾患の中でも注力しているのは、急性および慢性の心不全や、狭心症の治療です。宝塚市を中心としたこの地域でも高齢化が進行し、それにともない心不全や狭心症の患者さんも増えています。事実、当院の循環器内科分野における2023年の入院上位疾病1位は心不全、2位が狭心症となっておりますので、引き続きこれらの疾患に対する診療に力を入れていく所存です。

整形外科では首から足先までの運動器の診断と治療を行っており、かかりつけの先生方からご紹介いただいた患者さんや骨折などで救急搬送された患者さんの診療にあたっております。

そんな当科が特に強みとしているのは、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアなどの脊椎疾患に対する手術および、股関節(こかんせつ)や膝関節(しつかんせつ)に対する人工関節置換術です。

特に人工関節置換術については2024年4月に人工関節センターを開設し、ナビゲーションシステム使用によるより安全かつ正確な手術が行えるようになりました。手術の術式も、できるだけ筋肉を切らない低侵襲(体への負担が少ない)な術式を選択するよう心がけています。

地域包括ケアシステムとは、地域にお住まいの高齢者が要介護などの状態になっても、住み慣れた場所で自分らしく暮らし続けられるよう、地域が一体となって支援するシステムのことです。

宝塚市では地域包括ケアシステムについて医療・介護・福祉に関わる多職種が意見交換する“宝塚市地域包括ケアシステム研究会 ~3つの若葉を育てる会~”が運営されており、当院も共催団体として積極的に参加しております。

地域包括ケアシステム自体は全国で推進されているものの、どうしても自分たちが従事する分野にばかり目を向けてしまいがちです。その点宝塚市は、この研究会があることで“それぞれの分野に従事する人たちが顔を合わせ、多職種間で積極的な議論や検討を行う”という機会を得られ、それによってお互いの分野の立場や都合なども考慮したうえでの改善を図ることができるという強みがあります。

当院もこの研究会の趣旨に賛同しており、今後もこの地域にお住いの皆さんの医療ニーズに合ったよりよい医療を提供していきたいと考えています。

当院は公立病院として、地域の皆さんの健康と命を守るために平時の診療をしっかりと行うのはもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症で起こったようなパンデミック(感染爆発)や、大規模災害発生などといった有事の際にも、早期から対応するための備えや体制づくりをしていくことが使命だと考えております。

地域の皆さんに“宝塚市立病院があるから安心”と思っていただける病院づくりを今後も目指してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

また、当院は1984年5月の設立から40年以上の月日が経過し、建物の老朽化・劣化が目立ってきていることもあって、建て替えの計画を進めております。

建て替え後の新病院開院は2031年となる見通しで、まだ少々先の話となりますが、“より地域や時代のニーズに合った病院”として完成する予定ですので、どうぞご期待ください。

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