院長インタビュー

地域の救急・急性期医療を支える――長崎みなとメディカルセンターが描くこれからの医療

地域の救急・急性期医療を支える――長崎みなとメディカルセンターが描くこれからの医療
門田 淳一 先生

地方独立行政法人長崎市立病院機構 理事長 兼 長崎みなとメディカルセンター 院長、大分大学医学...

門田 淳一 先生

目次
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人口減少と高齢化が進む長崎市では、医療提供体制の再編が進められています。長崎みなとメディカルセンターもその一翼を担う医療機関として、急性期・高度急性期に特化した体制へと移行し、地域医療の中心的な役割を果たしています。

救急医療をはじめ、ロボット支援下手術や先進的ながん治療、さらに地域との連携まで、幅広い分野で専門性を発揮している同院。その取り組みや思いについて、理事長兼院長を務める門田 淳一(かどた じゅんいち)先生にお話を伺いました。

病院外観
長崎みなとメディカルセンター外観

長崎みなとメディカルセンターは、長崎市の中心部に位置し、水辺の森公園や出島、長崎新地中華街といった観光名所のすぐ近くにあります。港を望む開放的な立地はアクセスの良さにも恵まれており、市民にとってはもちろん、救急医療の要としても重要な役割を担ってきました。

当院の歴史は太平洋戦争が勃発した1941年にさかのぼり、“小倉陸軍病院分院”からスタートしました。終戦後に“長崎慈恵病院”と名前を変え、原爆被爆者をはじめ一般市民の診療を開始し、1948年には長崎市が設置主体となり“長崎市立市民病院”となりました。

現在は、救急医療、高度急性期医療(心・脳血管疾患・がんなど)、小児・周産期医療、政策医療(結核・感染症医療、災害医療)を4本柱とし、公的医療の中核として機能しています。近年では、新型コロナウイルス感染症の流行時に1,000人以上の患者さんを受け入れ、地域医療を支えました。

2020年には救命救急センターを開設し、救急車の年間搬送件数は4,000件を超えるなど、市民の“最後の砦”としての存在感をより強めています。また長崎市では、持続可能な地域医療の実現を目指し医療提供体制の再編が進められていますが、当院でも513床あった病床を420床に縮小し、2025年2月から新たな体制で運用を始めました。救急病棟を拡充し、重症例や他院で受け入れが困難な患者さんへの対応をよりいっそう強化する方向に転換しています。

当院では、手術支援ロボット“ダ・ヴィンチ”を活用した低侵襲(ていしんしゅう)(体への負担が少ない)手術を提供しています。現在は、消化器外科、呼吸器外科、泌尿器科で使用しており、今後は婦人科領域への拡大も検討しています。

ロボット支援下手術は、ロボットアームによる精密な操作により、術中の出血や合併症を抑えつつ、より正確で安全性の高い治療が可能になります。患者さんの身体的な負担が少ないことから、術後の回復が早いというメリットも大きく、入院期間の短縮にもつながっています。

サイバーナイフ
サイバーナイフ

がん治療においては、長崎県内で唯一、九州全体でも数か所のみという放射線治療装置“サイバーナイフ”を導入しています。サイバーナイフは、腫瘍(しゅよう)の形状に合わせてピンポイントで放射線を照射できるため、正常な組織への影響を最小限に抑えることができます。さらに当院のサイバーナイフは、寝台もロボット制御になっていることから高い精度で微調整が可能です。また、呼吸追尾機能(呼吸により動く腫瘍をリアルタイムで追跡し、適切な照射位置を維持する)が搭載されているため、頭頸部(とうけいぶ)がんや脳腫瘍はもちろん、肺がんや肝臓がんといった呼吸で動くがんの治療も可能となっています。そのほかにも、前立腺がん腎細胞がん膵臓(すいぞう)がんなどが治療対象となります。

この治療法は外来で行えるケースも多く、体力的に手術が難しいご高齢の患者さんや、他の合併症を持つ患者さんにとっても大きな選択肢となります。手術を避けたいという患者さんの希望に寄り添った、柔軟な治療の実現にもつながっています。

救急医療を軸とする当院では、脳卒中心筋梗塞(しんきんこうそく)不整脈といった循環器・神経系疾患の対応にも力を入れています。脳神経内科・外科、心臓血管内科・外科では緊急用のホットラインを設け、地域の救急現場からの受け入れを迅速に行う体制を構築しており、24時間対応が可能な強みを生かして重症患者の受け皿としての機能を担っています。

たとえば、不整脈の症状に対しては、カテーテルアブレーション治療を積極的に実施しています。専門の医師を配置したことで症例数も年々増えており、高度な医療を地域内で完結することが可能です。

また、入院早期からリハビリテーションを行うスタッフや、ソーシャルワーカーが関わることで、在院日数の最適化を図るとともに、ADL(日常生活動作)の維持にも努めています。土日を含めたリハビリ提供体制の整備も進めており、将来的には365日の稼働を目指しているところです。

長崎みなとメディカルセンターは、人口減少が進むなかでも、持続可能で地域に根ざした病院づくりを進めています。高度急性期や救急医療に加え、がん治療やロボット手術といった専門性の高い医療も展開しながら、地域包括ケアの視点から他医療機関との連携にも力を入れています。

また、医療を担う人材の育成も重要な柱と位置づけ、看護師をはじめとする職員の教育や研修、働きやすい環境の整備にも取り組んでいます。

2階ラウンジにあるステンドグラス
2階ラウンジにあるステンドグラス

病院として大切にしているのは、患者さん一人ひとりの気持ちに寄り添い、必要な医療を、必要なときに、必要な形で提供し続けることです。地域の皆さんから“ここに来てよかった”と思っていただけるよう、これからも進化を続けてまいります。

*写真提供……長崎みなとメディカルセンター

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