湘南厚木病院は、2005年の開院以来、救急医療から予防医療まで幅広く地域を支える役割を担ってきました。心臓血管外科や総合内科など各診療科に加え、透析センターや回復期リハビリテーション病棟を備えており、急性期から回復期まで幅広く対応していることが特長です。また、徳洲会の理念のもと、どのような背景の患者さんも受け入れる姿勢を大切にしています。
さまざまな取り組みで地域から広く頼られる病院を目指す同院の特長や、今後の展望について院長の守矢 英和先生に伺いました。
当院は、2005年に徳洲会グループの一員として開院しました。開設当初は150床規模でしたが、約3年後には現在の253床体制となり、時代のニーズに合わせて回復期病棟や障害者病棟を整備してきました。
厚木市内には市立病院や東名厚木病院などがあり、複数の病院が協力しながら役割分担を行って地域医療を支えています。当院はその中で心臓血管外科や救急医療に力を入れて取り組んでおり、さらに社会的弱者を含め、どのような患者さんでも広く受け入れられるよう努めています。
厚木地域では心臓血管外科を有する病院が限られていることもあり、大動脈瘤や弁膜症などの緊急手術において、当院の役割は大きくなっています。また、透析患者さんの血管外科手術(シャント)にも対応しており、高度かつ専門的な治療を提供できる体制を整えています。
救急搬送は年間2,500件前後*受け入れており、そのうち1,500~1,600件ほどが厚木市内からの搬送です。厚木市内での救急発動に対しては十数%の受け入れ率ですが、独居や身寄りのない方、経済的困難を抱えている方など、受け入れが難しい患者さんにも積極的に対応しています。これは、“生命だけは平等だ”という徳洲会の理念を体現する姿勢でもあります。
*救急車来院受診者数……2018年 2,944件、2019年 2,845件
当院の内科では臓器別の診療科を設ける一方で、総合内科を開設し全身的な視点で患者さんの診療を行っています。
「体調が悪いけれど、どの診療科に行けばよいか分からない」など、不調を抱えながらも受診先に迷う患者さんは少なくありません。そうした患者さんの受け皿となるのが総合内科であり、診療の入り口としての機能を果たしています。
また、総合内科はまだ専門分野を決めていない初期研修医にとっても、幅広い視点を学べるよい環境ではないかと思います。総合内科では幅広い症例を経験できるため、専門を決める前に総合的な診療能力を養うことが可能です。
当院は59床の回復期リハビリテーション病棟を有しており、透析患者さんのリハビリテーションにも対応できる体制となっています。回復期病棟と透析センターを併せ持つ病院は、地域でもそれほど多くはありません。高齢化が進み、透析患者さんも増えている現代において、この組み合わせは患者さんの生活の質を高めるうえで大きな役割を果たすと考えています。

当院では、開院当初からPET-CTを導入しています。厚木市内では現在(2025年8月時点)、当院のみが導入しており、がんの早期発見や人間ドックでの活用により、“病気になる前に見つける医療”に貢献しています。
2025年5月には手術支援ロボット“ダヴィンチ Xi”を導入しました。これにより、さらに低侵襲(ていしんしゅう・体への負担が少ない)な治療が可能となり、早期の回復にも期待ができます。現在は消化器外科での運用が中心ですが、今後は泌尿器科や婦人科などへの展開も計画中です。
アルツハイマー型認知症の診断に必須となる“アミロイドPET検査”も導入しています。この検査は現在、神奈川県内でも限られた施設でしか対応していません。当院は治験段階から携わってきた経緯があり、高齢化社会において今後ますます重要な役割を果たしていけるのではないかと考えています。
当院では、経済的困難や家族の支援が得られない患者さんの受け入れも積極的に行っています。これは救急対応においても変わらず、医療的・社会的な理由から断られてしまうことのある患者さんも見捨てない姿勢を貫いています。
また、肝胆膵外科・無輸血治療外科では宗教的理由で輸血を望まない患者さんにも対応可能な手術体制を整備しており、この地域のみならず全国から患者さんに来ていただいています。
そのほかにも腎臓高血圧内科を開設しており、“人は血管とともに老いる”という考えのもと、生活習慣病の予防や血管疾患対策に力を入れて取り組んでいます。
2025年9月には開院20周年と厚木市制70周年を記念し、地域住民との交流イベントを企画しています。物産展など地域が盛り上がるような出し物や、血圧測定、健康講演などを通じ、病院を知ってもらうきっかけになればと考えています。
また、今後はさらに広報活動にも力を入れて取り組んでいこうと考えています。どんなによい医療を提供していても、地域の医師や住民の方がそれを知らなければ当院への受診にはつながりません。今後はSNS(Instagram・LINEなど)での情報発信に力を入れ、さらにDXによる予約・情報提供の仕組みづくりにも取り組んでまいります。また、将来的にはアプリを通じて診療情報を患者自身が確認できる仕組みも構想しています。
私は医療を提供するうえで、“どんな世代、どんな背景の方にも関心を持ち、話しやすい雰囲気を作ることが大切”だと考えています。元々、人と接する仕事に就きたいという思いから医師を志したという背景もありますが、大学時代の入院経験から、患者さんと目線を合わせた診療を心がけるようになりました。これからも“すべては患者さんのために”をモットーに日々医療に向き合っています。
当院が掲げるのは、救急医療と予防医療の両立です。急性期の救急対応から病気の重症化予防までを一貫して提供し、地域に必要とされる病院であり続けること。そのために、広報活動にも力を入れ、病院の存在や取り組みを広く知ってもらうことを目指しています。
病気になってからではなく、その前から関わる医療を目指すことで、この地域の皆さんに気軽に頼っていただける病院であるよう、これからも努力してまいります。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。