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治療選択肢が増えた円形脱毛症――まずは皮膚科に相談を

治療選択肢が増えた円形脱毛症――まずは皮膚科に相談を
夏秋 洋平 先生

久留米大学医学部 皮膚科学講座 講師

夏秋 洋平 先生

目次
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円形脱毛症は「ストレスで髪の毛が抜ける病気」と捉えられがちですが、実際には自分の体を守るための免疫機能が“暴走”することで起こる自己免疫疾患です。円形脱毛症とはどのような病気で、どう治療するかなどについて、久留米大学医学部皮膚科学講座 講師の夏秋 洋平(なつあき ようへい)先生に伺いました。

これまで治療した中で、強く印象に残っている患者さんがいます。突然、頭髪がほぼ全て抜けてしまい、学校に行けなくなった状態で受診した学生さんでした。

治療により半年ほどで無事に髪の毛が生え、当初見られなかった笑顔も見せるようになりました。

あるとき、診療が終わって患者さんが退室した後、診察室に残ったお母さんから話しかけられました。

その患者さんは学校に行けるようになっただけでなく、学校には自分のように困っている人がいるかもしれない、そんな人がいたら声をかけて支えになってあげたいといったように他者にも目を向けることができるようにもなったそうです。患者さんは、もし治療を受けなければふさぎ込んだまま学校に行けず、引きこもり状態になっていたかもしれません。それを救うことができたのだという喜びを感じると同時に、改めて脱毛症診療の重要性を実感しました。

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写真:PIXTA

人間は社会生活を送る生き物です。1人で生きているわけではないので、多かれ少なかれ、周りの目が気になるものです。その一環としてヘアスタイルに気を遣ったり、化粧をしたり、洋服を毎日選んだりするのですが、円形脱毛症になると自分の努力だけではどうにもできず、場合によっては脱毛が隠せない状況になることで、人と会いたくなくなる、仕事や学校に行けなくなる、誹謗中傷のようなことを言われる、あるいは「ストレスに弱い」という烙印を押される――といったことが重なり、仕事をやめたり、人間関係の維持が困難になったりと、生活のありとあらゆる場面に影響を及ぼす可能性があります。

円形脱毛症で直接命を失うことはありません。しかし、日常生活やその人らしい生き方ができなくなるのであれば、それは命を失うのと同等の苦痛にさいなまれているといえるのではないかと考えています。

患者さんに「円形脱毛症はどういう病気だと思いますか」と尋ねると、多くの方が「ストレスで髪が抜ける病気」と答えます。そこから掘り下げて、患者さんには以下のように説明しています。

円形脱毛症はストレスが原因で起こるのではなく、「自己免疫疾患」というれっきとした病気の1つです。

免役とは、体を守るための機能で、通常は外から入ってきた細菌やウイルスなどの異物(非自己)を排除します。これが間違って「自己」を攻撃するようになるのが自己免疫疾患です。免疫の攻撃対象が関節であれば関節リウマチに、肝臓であれば自己免疫性肝炎になります。

円形脱毛症では、体毛の根である「毛包」が免疫の攻撃を受けます。その結果、生えてくる毛は弱弱しく、すぐに切れたり抜けたりするようになります。頭髪に限らず、まつげや眉毛、体毛などが抜けるケースもあります。ストレス、ウイルス感染や疲労が免疫による攻撃のきっかけとなることはあると考えられますが、その仕組みはまだ分かっておらず、明らかな誘因がないケースも多くみられます。「なぜ自己免疫疾患になったのか」と気にする患者さんもいますが、まだ完全に解明されてはいません。

はしか麻疹(ましん))や水ぼうそう水痘)などに一度かかって抗体ができることや、(うるし)を何度も触っているとかぶれるようになることなどを、俗に「免疫ができる」といいます。これは免疫システムに、過去に攻撃した異物を覚えておき、次に異物が侵入した際に速やかに攻撃する準備をしておくという仕組み(免疫記憶)があるからです。この仕組みによって、次に同じ異物を見つけたときに迅速に対応できる“攻撃部隊”がつくられ、その攻撃部隊を体内から取り除くことはできません。毛包を異物と認識する免疫記憶によって攻撃が起こるたびに脱毛を繰り返すことがあるため、患者さんには「今後、長く付き合っていく必要がある病気です」といった説明もします。

円形脱毛症の頻度について国内での正確なデータはありませんが、脱毛症の専門外来を受診する患者さんは、10歳に満たない小さいお子さんから80歳代の高齢者まで幅広く分布しており、性別にかかわらず受診されます。

患者さんは洗髪時に突然、多量の頭髪が抜け始めることで病気に気付いたり、美容室や散髪に行った際に指摘されて気付いたりすることが多いようです。病気が進行するにつれて抜け毛の量が非常に多くなり、どんどん抜けることで怖くなって受診される方が多い印象です。

ですが、自己免疫による毛包への攻撃は、実際には脱毛が始まる少し前にすでに、始まっています。患者さんの中にはあるとき突然、頭皮がかゆくなったり痛くなったりして、しばらく後に髪が抜け始めたとお話しになる方がいます。そうした自覚症状があった方は、かゆみ・痛みを初期症状ととらえることができますが、全ての患者さんにみられるわけではありません。

他の病気と同様に、円形脱毛症も理論上は「早期発見・早期治療」が望ましいのですが、実際には軽症であれば治療をしなくても数か月で再び毛が生え始める方もいます。

私が脱毛症の専門外来で診るのは多くが重症(脱毛面積が頭部全体の4分の1を超える)の患者さんです。重症の場合、脱毛が始まってから半年以内であれば、ステロイドを短期間で大量に投与する「ステロイドパルス」という治療を検討しますが、日本皮膚科学会の円形脱毛症診療ガイドライン2024にも記載されているように、発症から半年を過ぎると効果が落ちるというデータがあるため、やはり早く見つけて早期に治療を始めるのは大事だと思います。

一方で、発症から治療開始までに時間がたっていたとしても効果を得られる可能性のある治療法もありますのであきらめずに、まずは皮膚科を受診していただくとよいと思います。

これまでの円形脱毛症の治療は、ステロイドなどを使った薬物療法のほかに、エキシマライト/レーザーまたはナローバンドUVB(波長が311nm付近の極めて狭い範囲の紫外線)による紫外線療法などがありました。

既存の治療の効果には限界があり、また患者さんによって効果が一定しないことから、長年、壁に突き当たった状態にありました。そのようななかで、2022年に新しい作用機序(効果を発揮する仕組み)の「JAK阻害薬」が使えるようになり、治療の選択肢が広がりました。ただ、新しい薬なので長期内服したときにどのような影響があるかなど、注意して観察していく必要があります。

治療方法を決める際、脱毛症の専門外来ではほとんどの場合、治療方法ごとに必要な通院頻度や経済的な問題、メリット・デメリット、治療に伴うリスクや副作用などの情報を示したうえで、患者さんと相談しながら時間をかけて話し合う「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」を行います。

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写真:PIXTA

円形脱毛症に限らず、病気になると患者さんはわらにもすがる思いでさまざまな情報を得ようとします。ですが、ネットには分かりやすいけれど根拠不明な“体験談”や民間療法、知人の話などがあふれており、どれが「正しい情報」かを判断することは容易ではありません。また、「正しい情報」は、難しかったり退屈だったり堅苦しいと感じたりすることが多いと思いますし、患者さんごとの個人差もあり「こうすれば必ず治ります」とは断言できません。日本皮膚科学会の一般市民向け「皮膚科Q&A 脱毛症」などで正しい情報を得たら、次のステップは皮膚科を受診することが重要です。

円形脱毛症は医療機関で治療を受ければよい状態に戻せる可能性があります。脱毛には円形脱毛症以外もあり、それぞれに正しい診断と適した治療を行わなければ効果は得られません。どのタイプかを調べるまでは保険診療が可能です。専門外来があればそこを受診するのが理想ですが、近くになければまずは皮膚科を受診してください。

患者さんは多かれ少なかれ、「抜ける恐怖感」にとらわれていることを気付かされる出来事がありました。

ある女性の患者さんに治療の案内をしたところ、髪の毛を生やしたいという気持ちがある一方で、治療で発毛したとしても、服薬の中止などで再び脱毛するかもしれないことへの強い不安や恐怖を感じており、治療に取り組む気持ちになれないとのことでした。脱毛がトラウマになり、治療への一歩を積極的に踏み出せなくなっていたのです。

円形脱毛症の治療では、ただ脱毛が止まればよいのではなく、いかに維持していくかも、大きく大切なテーマだと痛感しました。

新しい薬の登場で、円形脱毛症の治療選択肢が増えました。新薬の登場をきっかけに円形脱毛症に関心を持ち始めた医師も増えてきたように感じています。

円形脱毛症の治療で自分1人が頑張っているという感覚になって途中であきらめてしまう患者さんがいたら、「一緒に頑張りましょう」と声をかけ、患者さんと共に悩み、発毛の喜びを分かち合いながら治療に取り組んでいきたいと思います。発症から時間がたっていても、新しい薬を含めたさまざまな治療選択肢により発毛が得られる可能性がありますので、あきらめずに専門外来もしくは皮膚科にご相談ください。

 

提供:日本イーライリリー株式会社
PP-BA-JP-11169 2025年10月作成

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